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1~マッチングアプリ

 登録ナンバー=194627。ニックネーム=鬼武者。性別=男性。恋愛対象=女性。年収=250万円以上350万円未満。年齢=49歳。職業=IT系企業のテレワーク。趣味=釣り、料理、スポーツ観戦、小説執筆。


 プロフィール=初めまして!鬼武者と申します!素敵な出会いを期待して登録しました!先ずはメールをください!必ず返信します!


 私の名前は、壱里(いちり) (たつき)


 ふと魔が差して絶対に手を出すまいと思っていたマッチングアプリに登録してしまった。しかも半年間で会費30000円のプレミアム有料会員だ……


 仕事の休憩中、マッチングアプリに登録されている女性のプロフィールを次から次へと眺めていた時に、ふと思わされた事がある。

「メンヘラの方、ごめんなさい。太っている方、ごめんなさい。高年齢の方、ごめんなさい……」

 こんな文言が、意外と多く目についた。

 なるほど。わからないでもないな。でも、ハッキリ言うなぁ……


 所詮、マッチングアプリに登録している女性なんて完全に婚期を逸した中高年か既にバツイチ子持ちだったりのケースが多く、絶対に失敗は許されない!故にお相手の男性に求める条件はかなり現実的で厳しいものが目立つ。そんな感じだった。


「にしても……俺のポテンシャル的には低収入、低学歴、車の運転できない、思いっきりメンヘラな人生、薬の副作用でボテ太り、仕事は障害者枠のパートタイム労働者……」


 完全に終わっていると思うのだが、こんな私でも興味を抱いてくれる女性は一人でもいるのだろうか?当然自分のプロフィールにはメンヘラだの太り過ぎだのマッチングに不利であろう事柄は記載していない。


「苦手な人=嘘をつく人」

 これも女性陣の多くが掲げるダメ男パターン。


「ほぼ全項目ダメ男に当てはまっている……」

 だからといって最初からプロフィールにメンヘラです!精神障害者です!手帳持っています!などと書く人はそうはいないだろう。



 私は、自宅の千葉県千葉市からそう遠くない距離に住んでいる女性を恋愛対象に設定していたので、「あなたへのおススメ」としてスマホやパソコンの画面に写し出されるのは、首都圏在住の30~50歳くらいの年齢層の女性に限られていた。


 プロフィール用の顔写真はスマホで自撮りしている人が殆どだが、中にはプロのカメラマンに撮ってもらったであろうモデルの宣材写真みたいな「盛った」写真もチラホラあってそれなりに「必死感」が伝わってきた。


「盛っている」と言えば、私の年収だって実際は、200万円にも届かない程だ。月に7万円の障害年金を盛ってギリギリ250万円に届くくらい……


 気に入った女性が見つかったら先ずは「いいね!」を押す。場合によってはいきなりメッセージを送ることもある。相手から何らかのレスポンスがあれば、次のステージに進むことができる。よく出来たシステムだと少しだけ感心する。



 日曜日。仕事が休みでのんびりと過ごしていた所にいきなりスマホの通知音がけたたましく鳴り響いた。

「なんだろうな?」

 私は、スマホを手に取って通知の内容を確認した。

「あん?FIT!から?」

 メールの送信者は、マッチングアプリ「FIT!」の運営会社だった。

「う~んと、何々……emiさんが、あなたにいいね!しました。今すぐemiさんのプロフィールを見に行きましょう!」

「あれまぁ。こんな僕にいいね!くれましたか……どんな(ひと)だろう?」

 私は、高鳴る鼓動を感じながらemiさんのプロフィールページへと飛んだ。

「emiさん。年齢56歳……バツイチ……子供はいない。東京都葛飾区在住……」

 3枚載っている写真を拝見する。

「痩せているなぁ……なんか冷たい感じ。どうしよう……」

 このままいいね!を返すと次のステージに進出してしまう。私は、少し頭を冷やして考えた。

「しかも年齢が56歳って……セレブなのかなぁ?」

 いずれにせよ、この女性に対してyesかNoのどちらかの審判を下さなければ、私も次に進めない。

「emiさん、本当にごめんなさい!」

 私は、強い罪悪感を感じながら×のボタンを押下した。スマホの画面からemiさんの姿が消えた。マッチングアプリのシステム上、私のアカウントページにもう二度とemiさんは表示されなくなる。

「ある意味、残酷だなぁ……でも女性陣もこうやって男性陣を(ふるい)にかけているのかぁ」

 私は、マッチングアプリのシステムに少しだけ違和感を覚えながら趣味の小説執筆に取り掛かった。


「送信したいいね!の数43、返信0。受信したいいね!の数1、返信×」

 私がマッチングアプリ「FIT!」に登録してから約一か月が経ち、だいぶ使い勝手も良くなってきていた。未だにマッチングは一件も成立していない。


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