全てを奪う者
ボスのホブゴブリンに恐怖し勇者達は俺を囮りにして逃げ出そうとしていた。
そんな時、聞き覚えのある声が聞こえ全てを奪えと言う。
「先ずはお前からだ、鑑定」
氏名 鴨志田寛太
年齢 17歳
種族 人族
レベル 18
HP 850/745
MP 250/250
職業 土の勇者
スキル 鑑定B ストレージB 経験値倍率10倍
魔法適正 土属性A 火C
称号 勇者
そうしてHP、MP、スキル、魔法適性、職業、称号を奪った!
氏名 鴨志田寛太
年齢 17歳
種族 人族
レベル 1
HP 20/20
MP 20/20
職業 無職
スキル
魔法適正
称号
全て奪われた鴨志田のステータスは散々なものになっていた。
そして俺はホブゴブリンを殴りつけ倒すことに成功する。
そして俺は俺を見捨てた他の勇者達からもステータスを奪っていった。
「ステータス」
氏名 神里秀斗
年齢 26歳
種族 人族
レベル 76
HP 4000/4000
MP 3850/3850
職業 真の勇者
スキル 鑑定SSS ストレージ∞ 経験値倍率40倍 魔術A 剣術B 身体強化B 格闘術C 奪う者 与える者
魔法適正 全属性A
称号 真の勇者
なんと見事なステータス。
そして今迄勇者だった者達は無職、無スキル、最弱のステータスとなった。
罪悪感と共に愉悦すら覚える。
だがこそ、この力は俺の邪魔をする奴にしか使わないと硬く誓う。
未だステータスが変わった事を知らない勇者、いや元勇者達は、そのまま逃げるように転移していった。
俺も帰ろう、そう思った時にピロンと音がしてドサッと宝箱が現れた。
俗に言うドロップ品だ。
宝箱を開けるとそこには一通の手紙と、煌めく装備品一式が入っていた。
「なんだこの装備・・・初級ダンジョンから出てくる品じゃないよな」
全てストレージに収納すると急いで転移の魔法陣に乗った。
「おー生きていたか。早く馬車に乗れ」
転移した先には馬車が待っており、元勇者達は既にのっていた。
「マジかよ生きて戻って来んなよ。マジ見捨てた事言うなよな」
「死ねば良かったのにー」
置いていった事を無かった事にしろと言う元勇者、これには苦笑いをするのが精一杯だった。
日が傾き掛けた頃、野宿をする事が決まると元勇者達はピーピー騒がしくなる。
「マジかよ、野宿とかないわー」
「私こんなとこで寝れない」
兵士達は困惑していたがこのまま進む訳にもいかず元勇者達を宥めていた。
俺は少し離れた場所でドロップした一通の手紙を読む。
この度の勇者召喚で貴方を巻き込んでしまった事を申し訳なく思っています。
間違いに気づき、とっさにスキルを与えるのが精一杯でした。
奪う者、与える者は貴方の判断で使って下さい。
私はその判断について全てを認め許します。
そして、この手紙を開いた時にスキルを一つ追加致します。
スキル隠蔽、これは複数のスキル、職を得た時に使って下さい。
鑑定されても隠蔽したステータスは見られません。
貴方は好きなように生きて下さい。
ずっと見守っています。
創造主エリアル
「そ、そ、創造主?エリアル・・・聞いたことのある名だけどどこで聞いたか思い出せない」
その時だった。
「あのー。すみません」
黒髪ロングの女の子が立っていた。
「どうしたの?神峰さんだっけ?」
「はい。本当にごめんなさい。置いていってしまった事を謝りたくて」
「気にしなくていいよ」
「でも、あの人達に逆らえなくて」
「そうなんだ。大変だね」
「いえ。今迄の事本当にごめんなさい」
「わかった。許すよ」
「ありがとうございます」
泣きながら謝る彼女の事を見ながら罪悪感に苛まれる。
彼女だけは勇者以外のステータスを元に戻した。
その分、俺のステータスは下った。
翌日、王城へと戻った。
謁見の間に倒されると、国王は元勇者とも知らずに褒め称える。
俺は空気になったようだ。
この機に乗じて国王のステータスを見てみた。
氏名 アロウランズ・フォン・エルマイヤ
年齢 53歳
種族 人族
レベル 36
HP 420/420
MP 150/150
職業 エルマイヤ王国国王
スキル 鑑定C 王の威厳
称号
奪う者で全てを奪った。
「おい!そこのゴミ」
「俺の事ですか?」
「お前しかいないだろう」
先程奪った王の威厳を使ってみる。
「なんですか?」
「いや、その・・・」
兵士達もオロオロしている。
効いてる効いてる。
「マジかウケる。ゴミに負けんな王様」
どうやら王の威厳はこの世界の人にしか効かないみたいだ。
元勇者達は何も変わらなかった。
その日の夜、王の威厳のせいか豪華な部屋へと通された。
そして次の日、元勇者達が軒並み弱くなった事が明るみに出た。
そしてステータスを見て全員が勇者ではなくなった事、神峰綾菜以外は子供並みのステータスへと変化していた事がわかり騒然としていた。
そして、即日俺たちは王城から追い出される事となった。
「ほらよ、陛下からの恩賞だ。感謝するんだな」
そう言って兵士は金貨を投げる。
1人頭金貨5枚、5ゴールドだ。
「神峰さん、俺と行動しませんか?」
「ごめんなさい。あんな人達でも見捨てられません」
一世一代の誘いも断られてしまった。
「仕方ないですね。わかりました。俺は他の国で暮らす事にします」
「わかりました。お気をつけて」
「じゃまた」
「はい。また」
そう言って俺は元勇者達と別れ他の国を目指す事になった。
通貨はどうやらゴールド、世界共通単位だが国によって絵柄の違う金貨が取引されている。
他の国で金貨を使う時には両替が必要。
金貨一枚で1ゴールド、1ゴールド=1000円
その他に0.5ゴールド、0.1ゴールド金貨、1万ゴールド大金貨が存在する。
どうやらその上もあるらしいが一平民が手にできる代物ではないようだ。
♦︎♦︎♦︎
手入れのされていない原生林を突き抜けるように馬車に揺ら数日が経った。
国王からもらったなけなしの5ゴールドは今2.5ゴールドと半分も使ってしまった。
などと嘆いていると馬が鳴いて馬車は停まった。
「と、盗賊だ。うぅぅ」
御者の胸に矢が突き刺さった。
パニックになる乗客、俺は必死に鑑定をして全て奪う。
弓や剣、魔法のスキルを奪うと盗賊達の攻撃は収まる。
こうなれば身体強化で一気に盗賊の意識を刈り取る。
「此奴らどうすればいい?」
冒険者風の男に聞くと。
「殺して首だけ持って門番に渡せばいいし生捕りしにすれば犯罪奴隷として買い取ってくれるぜ。勿論、賞金首ならその分の金も貰えるぜ」
「面倒臭いからここにふん縛って門番に確認してもらってもいいかな?」
「勿論大丈夫だ」
「わかった」
盗賊全員を大木に縛った。
残念ながら御者は息絶えてしまっていて冒険者がストレージへと収納してくれた。
そして冒険者が御者の代わりに馬車を走らせた。
そして翌日、アルフォルニア王国の辺境の街へと到着した。
街の名はマーヴィラス、マーヴィラス辺境伯領だそうだ。
門番に御者の遺体と共に盗賊の居場所を伝え街へ入った。
街はとても綺麗で宿も清潔でベッドもフカフカだ。
横になるとすぐに寝てしまった。