オヤジ狩り中に異世界へ
俺は神里秀斗26歳。
数週間ぶりの外出だ。
大学を卒業してから自宅警備員として充実した毎日を送っていた。
今日は限定アイテム付き初回限定盤のゲームソフトを買って家に帰る途中である。
「おい!」
「おい!そこのオヤジ!」
「俺のこと?」
「そうだよ!なぁ金貸してくんない?返さないけど」
「「ハハハ」」
男女5人組の高校生くらいか?
突然のカツアゲである・・・嫌、オヤジ狩りか?
「悪いけど、金は無いよ。働いてないからね」
「んだよニートかよ」
そんな時だ。
地面が煌々と光り輝いて俺達を飲み込んだ。
♦︎♦︎♦︎
「んだよ、ここはどこだ?」
「痛いんだけどーなにここ?」
「貴様ら王女殿下の御前である、静かにしたまえ」
「いいのですよ。勇者様方、此度はエルマイア王国第一王女である私の召喚に応じて頂きありがとうございます」
「召喚?」
「はい、勇者様達には、人種以外の種族、特に悪魔族と魔族を倒して頂きたいのです。え?召喚は5人の筈ですが6人います・・・1人多く呼んでしまったようです」
「なんだよそれ」
「兎に角、ステータスオープンと唱えて頂けますか。他の人には見えませんのでゆっくりと確認してください」
「「「ステータスオープン」」」
「ステータスオープン」
氏名 シュウト・カミサト
年齢 26歳
種族 人族
レベル 1
HP 20 /20
MP 20/20
職業 ー
スキル 鑑定S 奪う者 与える者 ストレージ∞
魔法適正 ー
称号 流れ人 巻き込まれた者
加護 エリアルの加護
やっぱり俺が巻き込まれていたか。
それにしても弱そうなステータスだ。
「俺勇者」
「俺も」
「私も」
「俺は勇者ではありません」
「そうですか。申し訳ありません。どんな職業でしたか?」
「職業にはなにも書いていませんでした。元の世界に送り返してもらえますか?」
「それは出来ません。悪魔王、魔王を倒すと帰れると言う迷信はございますので・・・」
歯切れが悪い。
「おいお前、邪魔だからどこか行けよニート!いてもどうせなんの役にも立たないんだから」
「そうだ」
「雑用として置いておけばー」
「それもそうか。荷物もちでもやれ」
言いたい放題言いやがって・・・。
そうだ鑑定してみよう。
1人目、リーダ角の長身の男
氏名 加賀谷勝利
年齢 17歳
種族 人族
レベル 1
HP 500/500
MP 400/400
職業 光の勇者
スキル 鑑定A ストレージB 経験値倍率10倍
魔法適正 光属性A 水C 風C
称号 勇者
2人目はマッチョの男
氏名 鴨志田寛太
年齢 17歳
種族 人族
レベル 1
HP 400/400
MP 250/250
職業 土の勇者
スキル 鑑定B ストレージB 経験値倍率10倍
魔法適正 土属性A 火C
称号 勇者
3人目は小太りのチビ。
氏名 生田目黄熊
年齢 17歳
種族 人族
レベル 1
HP 500/500
MP 250/250
職業 風の勇者
スキル 鑑定A ストレージB 経験値倍率10倍
魔法適正 風属性B 火C 土D
称号 勇者
ぷーはないだろう。
4人目は金髪モデル体系の女の子
氏名 謝花さくら
年齢 17歳
種族 人族
レベル 1
HP 500/500
MP 400/400
職業 火の勇者
スキル 鑑定D ストレージB 経験値倍率10倍
魔法適正 火属性A 風B 光F
称号 勇者
5人目は黒髪のロング、お淑やかそうな外見。
氏名 神峰綾菜
年齢 16歳
種族 人族
レベル 1
HP 250/250
MP 600/600
職業 水の勇者
スキル 鑑定A ストレージA 経験値倍率10倍
魔法適正 水属性A 光B 火C
称号 勇者
5人とも凄いステータスだこと・・・。
♦︎♦︎♦︎
その後、俺たちは国王の待つ謁見の間へと通された。
「よく参った、1人ゴミが混ざっているようだがな。この大陸は魔国、悪魔国、獣人国、亜人国に囲まれている。そのせいでこの国は貧困に喘いでいる。国の為、民の為にすぐさま、これを駆逐し我が国の領土としたい。先ずは休むが良い。明日より訓練が始まる、半年後、作戦を実行するので忘れないように」
豪華な指輪、装飾品、着ている物も城も全てに金が掛かっている。
民の為と言いつつ自分の利益の為なんだろう。
それを16、7歳の彼等には分かるだろうか?
そして出来れば獣人をモフモフしたい。
この時は少し浮かれていたのだろう。
地獄に落とされたのはすぐだった。
「そしておい!お前!大事な召喚に入り込むとは。しかもステータスは生まれたての子の様な物だと言う。少しは役に立って。勇者殿の荷運びくらいは出来よう。奴隷にならないだけマシと思え。明日から訓練を始める。5日後にはダンジョンに潜ってレベルを上げて貰う、そして一月後には目障りな獣人共の国を落とせ。命令だ」
「てか獣人てなに?アハハハ」
「つーかなに言ってんのかわかんないんだけどー」
「マジうけるわ」
「陛下の御前であるぞ、身の程を弁えろ」
兵士達はこちらに槍を向けた。
「マジ怖いわー」
お前達が怖いわ。
「もう良い。獣人共の国を落とすまで儂に顔を見せるな。気分が悪い」
兵士達はこちらに向けた槍を戻す。
「今日は休み下さい。お部屋をご用意させて頂いてます」
「貴様はこっちだ。お前、此奴を連行しろ」!
連れて行かれたのは牢屋だった。
なんだかな不貞寝しよう。
「・・・お・・・て・・・い」
「誰?」
「起きて」
「起きてる」
「貴方に加護を与えた創造主エリアルです」
「エリアル?そ、創造主」
「貴方のスキル奪う者、このスキルは貴方に害を与える者に使いなさい。創造主エリアルが許します。全てを奪いなさい。与える者、このスキルは貴方の味方には与えなさい」
「わかりました・・・全て奪いま・・・す」
「では失礼致します」
翌朝
「昨日の夢はなんだったんだ?」
ガチャ
「さっさと表に出ろ。今日から訓練だ」
「はい」
連れて行かれたのは練兵場。
騎士と魔法使いだろうか後からやってきた。
「今日かは君達の訓練を任された。ジョセフ・フォン・バイン騎士爵だ」
「儂はガルラス・フォン・メシルス魔導士爵だ」
そして今日から地獄が始まった。
木剣で全員にタコ殴りにされ、魔法の的にされ。
HPの少ない俺は少し間違えたら死ぬ、それでも死ぬ寸前で回復魔法を掛けてくる。
それを数日繰り返し繰り返し、相手は教えを受けながら日々鋭く早くなる。
此奴らは俺をスライムか何かと勘違いしているようだ。
ある日の休憩中、騎士と魔導士のステータスを何気なく見た。
氏名 ジョセフ・フォン・バイン
年齢 26歳
種族 人族
レベル 45
HP 3250/3250
MP 600/600
職業 水の勇者
スキル 鑑定F 剣聖C
魔法適正 身体強化
称号 騎士
氏名 ガルラス・フォン・メシルス
年齢 38歳
種族 人族
レベル 68
HP 1980/1980
MP 7690/7690
職業 魔導士爵
スキル 鑑定A 魔力回復C
魔法適正 火属性C 風C 土D 水F
称号 魔導士
めちゃくちゃ強っ!
訓練は数日で終了となり今日からダンジョン探索が始まった。
ここでレベルを上げるようで、馬車数台分の物資と共に数日間、馬車に揺られる。
正直、これが一番辛かった。
勇者達は尻が痛い尻が痛い尻尻尻尻とピーピー騒がしい。
ダンジョンとは古代に邪神が討たれた時に世界に飛び散った魔力がダンジョンコアとなったと言われている。
今回のダンジョンは初級、全10階層となり低レベルのゴブリン、コボルトがメインだ。
ボスはボブゴブリンだゴブリンが進化した魔物で一回り大きくその分強くもなっている。
暫くキャンプをしながら10日程挑む予定だそうだ。
そして俺は荷物持ちだ。
自分の武器等は持たせて貰えず勇者、指揮官の武器や回復アイテム、着替えや食料を運ぶ事になった。
一階から勇者達は人形のゴブリンをギャーギャー言って攻撃出来ないでいる。
逆に攻撃され怪我をしたりと先が思い遣られる。
そんな彼等も3日目には2階へと降りる事が出来た。
その日は4階迄降りた後、キャンプへと戻った。
そして4日目、この日はレベルの上がった勇者は快調に飛ばしボス部屋へと辿り着いた。
扉を開けるとボブゴブリンが襲いかかってくる。
これに、光の勇者加賀谷は吹き飛ばされ壁に身体を打ち付けられた。
「ヤバい」
「怖い」
恐怖で足がすくむ勇者達、そして勇者達は俺を掴んでボブゴブリンに投げつける暴挙にでた。
その間にセーフポイントから転移魔法陣に乗り地上へと帰る気だ。
「くそっ痛い」
ボブゴブリンが俺の身体を殴りつける。
「くそっくそっくそっ!死にたくない。お前達は絶対に許さない」
「・・・なさい」
聞き覚えのある声が聞こえる。
「全てを奪いなさい」
「全てを奪う?」
「さぁ鑑定して全て奪いなさい」
「先ずはお前からだ。鑑定」