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プロローグ2

 セシール領は、内陸の領地で海がない。また、ほかの領地に囲まれているため不安定な領地でだった。しかし、戦争になるなどは、エラが生まれてから一度もなかった。これはひとえに母のおかげだろう。だが、エラの母が亡くなってから、不作が続き領内は不安定になっていた。

 

 エラの母は、エラが11歳の時に亡くなった。エラの小さい頃はよく仲良しな一家だといわれていた。そして、領地も栄えていたころだ。本当に、絵にかいたような一家だった。だが、エラの母が次第に体調を崩していくにしたがって父は正気の沙汰ではなくなっていった。気が付いてはいたが、見てみぬふりをしていた。今になれば、ちゃんと話を聞いて解消することが大事だっただろう。けれど、幼いエラにはそれは出来なかった。



エラは、光が差し込むほうへと向かって瞼を開けようと試みる。


「__様?_嬢様?お嬢様?」


耳元では、私を呼ぶ懐かしい声が聞こえる。もう、二度と会えないのに……。きっとこれは幻聴だ。この声の主を私はよく知っている。



「___ルナ?」

もう二度と会えない人の名前を挙げた。ルナは私の最も信頼するメイドだ。処刑される3日前に別れたきりだ。いや、私は確かに広場の処刑台で処刑されたはずだ。ルナの声が聞こえるなんておかしい。



「__お嬢様!」

その声は、涙ぐんでかすれている。けれどルナの声だ。私はゆっくりと目を開ける。まぶしい光に包まれた。目を開けると、目の前には、ルナの懐かしい顔がそこにはあった。



私は、死ぬまで夢を見るのか。残酷だ。すべてに別れを告げたはずなのに……。



「お嬢様が目を覚ましました!」

ルナは部屋中に聞こえるような大声を上げた。


 この部屋の天井も部屋の内装も何も変わっていない。これは正真正銘、エラの部屋だ。

  (もしかして、あの悲劇にならないように戻ってきたということなの?)



「リリー、伝えてきて。旦那様に」

ルナは、ベッドサイドであらゆるものを片付けながらリリーに指示を出していた。


 旦那様ということは私の父のことだろう。あの人は、娘に興味関心なんて無かったはずだ。私は、周りを観察するために首を左右に動かした。なにも不思議なことはない。私の部屋で、今はルナだけ。


 だが、私は、すぐにおかしいことに気が付いた。旦那様と呼ばれて入ってきた人物は、私の父ではなく、エラを処刑した張本人のエイリーだったからだ。私は、無意識にルナの制服の袖を強く握っていた。その握る手もどこか小さかった。


「起きたのか?マーガレット?」

その声の主は、エイリーだ。


(どうなっているの?)


私は懸命に声を出そうとするが一向に声が出なかった。

(最後まで幸せを祈っていた相手にこんなに早く再開するなんて聞いていない)

それに、何度も、何度も、処刑される瞬間の彼の口角の上りがフラッシュバックする。それだけで私の心臓はもう持たなくなって、動悸を起こした。



「旦那様。まだマーガレット様は、話せる状態ではございません。もう少し落ち着いたら呼びに参ります」

そう言ってリリーは、エイリーを部屋の外へと締め出した。



「もう、大丈夫ですよ。マーガレット様」

ルナの優しい声が私を安心させ、次第に動悸は収まっていった。


けれど、先ほどから、エラという名前ではなくマーガレットという名前で呼ばれている。それに、心なしか自分の体が小さかった。


(これは、もしかして、私はエイリーの子供?)


しかし、声が出ない今、結局何もできずにルナに促されるまま、また深いまどろみに落ちていった。


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