勝利不可
無事魔人達を全員確保し遂に魔界の門と対面する。そこからは叫びや呻き声などが聞こえて来てとても気味が悪い。生きたまま体をバラバラにされ、つなぎ合わされ出来たかのようなそのビジュアルがそれを一層際立たせている。
「ここをくぐればいいんだよね?」
「そこからいけるとしか書いてなかったから多分そうだと思うよ」
「行くよ......」
実が足を踏み入れようとした瞬間、門の内側から無数の皮膚のない腕が現れ彼を押し返した。他の者も門に近づいてみるも彼のように腕が出て来て入ることは叶わなかった。
「なんで通れないんだ?」
悪魔界について調べたデュアルでさえも分からなかった。というのも魔王城の図書館には悪魔についてのはっきりとした情報がなかった。書かれていたのは、魔界の門の存在、そこへの渡り方、悪魔がこれまで現世で何をしたかの伝承、といったものだった。
「どうすれば良いんだ......」
あちらの世界の情報が全くないということは誰も行っていない、もしくは誰も帰ってきていないのどちらかだ。入ったが最後、戻って来ることは叶わず永久に悪魔界に閉じ込められるかもしれない。
「こうなったらあいつが自力で戻って来ることを願うしか......あ、そうだ《神界書庫》」
〜解析対象:魔界の門(動作不良あり) 〜
内側からの暴走により一時的に使用不可
何者かによる違反行動によると推測される
「使えないみたいだよ。あっちで何かあったらしい」
「そんな......」
「おい!下がれ!」
「え?」
その瞬間実は飛来した何かより吹き飛ばされた。デュアルは彼の近くにいたものの、ユリウスの叫びと同時に霧に隠れたので助かった。しかし、実は遥か後方に吹き飛ばされたためこちらからは安否が確認できなかった。
「ッああ!うぅ、ぁあー!」
痛い。苦しい。身体中至る所を骨折したらしい。激痛が走り、叫ぶ。しかし、それがさらに痛みを助長する。何か黒いものが侵蝕してきている。怖い。
この世界に来てから自分は強くなったと思っていた。事実、この世界で成し遂げられなかったことをいくつも成し遂げた。だが、それは過信に過ぎなかった。生き返ってから初めて死を覚悟した。
「ハァ......ハァ......ふ、《普通》」
〜対象:田中実 普通に変更 〜
体は普通の状態、つまりは正常に戻ったのだが黒い何かだけは取れず、依然侵蝕を続けていた。
「くそ、どうすれば」
骨折や打撲による痛みは引いたが侵蝕による痛みはそれよりも酷いことがわかってしまった。剥がそうにも肉に強固に張り付いて剥がせない。
あれ?これどこかで見たような......
〜名称不明 〜
危険。即座に取り除いてください。
完全に侵蝕した時の状態を予測できません
まずいな。鑑定よりも上のスキルですら危険ということしかわからないなんて。ただ、実の記憶に存在しているこれによく似たもの.......傑に刺さった正体不明、レジスト不可の即死攻撃.......とは違い即死効果はないようだ。しかし、一体どうしたものか。
「あなた方の強さ、よーくわかりました。とても強いです。何といっても我が軍の精鋭部隊だけでなく、殺しの伝説すらも打ち負かしてしまった。魔人族でもトップクラスの実力でしょう.......でも、残念です。私の足元にも及ばない」
「お前、あん時の」
「おやおや、お久しぶりです......あれ?あの子供はどうされたんですか?」
「テメェ......」
傑の置かれている状況を知っていて煽ってくる。性格の悪い男だ。そして、この男こそが裏切りの勇者でもあり魔神の右腕でもある魔人族最強の男ゼードだ。
「皆さんにはあの少年の成長の糧になってもらいます......わかりやすく言うとですねぇ、つまりぃー死んでもらいます。出来るだけ無惨に」
その言葉を皮切りに実不在のメンバーを真っ黒な刃が襲う。全方位からの攻撃、避けられる可能性は限りなく低い。
「みんな!やるよ!《竜変化》!》」
「ユリウスさんは僕と隠れるよ」
5人は何故かそれぞれの色、赤、青、黄、緑茶色の煙を上げて天高く飛び上がり変身した。特撮ヒーローの変身シーンさながらの姿だ。
5匹の竜は黒の刃からの攻撃を防ぎ、それを攻撃していった。しかし、刃が消えることも攻撃速度が落ちることもなかった。
『もう無理』
「皆、もう少しだけ耐えて!」
デュアルはただ隠れていたわけではない。ゼードの背後に回り込み、隙を窺っていた。
いまだ!
ゼードの影が鎌を携え首を刈り取る。
「勝った。とでも思ったか?私が貴方に気付かないとでもお思いで?」
「ぐぁああ!」
デュアルの鎌はたしかに首を刈り取った。切り離した。しかし、黒い何かがそれを繋ぎ止めた。そして、逆に彼は彼自身の鎌によって身体を刻まれ消滅した。
「ん?」
「うぉぉお!《破撃剣》-[必殺:天地粉砕]!」
「だーかーらぁ!貴方がどれだけ頑張ろうとも私には叶わないって言ってるじゃないですか。なんでわからないんですか?」
直後ユリウスの体は粉々に砕け散った。
『あぁ!デュアルくん!ユリウスさん!』
「貴方達もさよならです」
天に穴が空いたかのような黒によって5匹の巨竜は飲み込まれた。
「そろそろ、彼を助けなければ。本当に死んでしまう。殺したら怒られてしまいますしね」




