暗殺者対暗殺者=真っ向勝負
『......様!奴が来ました!これから攻撃を仕掛けます!』
「わかった。奴は強い。捕らえろと言われているが殺す気でかかれ」
秘密裏に亜人大陸中央部に配置していた部隊からの連絡。それは田中実一行を発見したとのことで魔神が予測した通りの結果だった。
男の名はサイル、魔王軍暗殺部隊総隊長の座を60年に渡り守り抜いてきた、魔人の歴史史上最強の暗殺者だ。先の戦いで両足が膝まで亡くなってしまったがリエビルからのギフトによって体はより強固なものとなり、自分の生命反応まで隠蔽することができるようになった。今の彼ならば実のミニマップにも映り込むことなく忍び寄ることが可能だ。
「リエビル様、奴が現れたそうです」
「そうか、んじゃ〜あお前とお前!行ってこい」
「御っあああ!」
サイルと彼の部隊のNo.2は返事をするよりも早く不毛の大地へと吹き飛ばされてしまった。
「また戦いかよ。もうこんなの嫌だ」
「でもスグルくんを助けなきゃ」
「それもそうなんだけど......」
「誰も殺したくないのはわかる。でも、黙ってやられるわけにもいかないだろ!元々お前がどんな世界を生きていたのかは知らない。けど、ここはお前はもうお前の世界じゃないんだ。強くなれ」
ユリウスが小声で、そう囁く。確かに彼の言う通りだ。もうここは平和な日本ではない。俗に言う剣と魔法の世界だ。ここで生き抜くにはそれ相応の覚悟がいるのだ。
「ありがとうございます。ユリウスさん。俺は誰も殺しません......だけど、俺は俺が大切な人達のために戦います!」
そうこうしているうちに、遠く離れていた魔王軍と魔法の攻撃が近くまで接近してきた。
「《光の軍団》!!あいつらを迎え撃て!誰1人殺すな、全員捕まえろ!」
神々しい光に包まれ、顕現した軍団により魔法攻撃は打ち消され戦える敵もみるみる減っていった。
天使達が結構やられちゃったけどもう少しで終わりそうだな。
実以外のメンバーは捕まえた敵兵を一箇所に集めていた。そんな時、何かが飛来し荒野にクレーターを二つ作り出した。
「なんだ?何もないぞ」
何かが落ちてきたはずだが、そこには何も無い。埋まっているわけでもなさそうだ。
「みんな!落ちてきたのは生き物、多分敵だ。でも一つしか補足できない!念のため防御を!」
「っ!ミノル君!」
デュアル以外には何が起こったのか理解することが出来なかった。デュアルが伸ばしたナイフがすんでのところで敵の攻撃をずらし、実は擦り傷で済んだ。
「皆はミノル君の指示に従ってもう1人の方と戦って!こいつは僕にしか無理だ」
「ほう?貴様、何故私を認識できる」
「生命反応を消したみたいだけど、僕には通じないよ。僕には生き物の死が見えるんだから」
周りが冷え、デュアルの目が赫く光り、彼が手にしている2本のナイフはその身を伸ばし、2本の鎌へと変化した。
「君、いつのまにそんなことできるようになったの?」
「確かにこの前貴様を殺した時には出来なかった。だがそれを聞いてどうする?力が増幅する前の俺に勝てなかったお前が、どうやって今の俺に勝つと言うのだ」
「わからない。でも、やるしかないよね。て言うかさ〜この前のは僕じゃないし!」
「ん?お前.....」
互い以外の誰の目にも映ることなく、2人は一つの命を刈り取るために戦う。
「僕に魔法は効かないよ。僕は攻撃を殺すことだってできるんだよ」
「ならば、正攻法で闘うのみ!」
《死神》
5級の死を司る神の権能の1部を使用可能
・攻撃の殺害 攻撃自体を殺すことができる
これは物理、魔法に関わらず
発動する
・死への最適ルート 対象を最も簡単に死へ
と導くルートを表示
・死神鎌 自身の武器を死神の鎌の劣化版に
一定時間変化させる
・事象操作 対象を殺すルート上の事柄を少
しだけ操ることができる
・殺空間 半径3メートルを完全に掌握する
「グラン!正面16歩先!ロックブラスト!」
「はーい」
「アヴィ!右前方28歩先に水溜まりを!」
「わかりました!」
と、このようにどこぞのモンスターを捕まえて戦わせるゲームのように実はミニマップを見ながら適切な攻撃或いは罠を仕掛けていった。
「くそッ!何で見えてるんだよ!隊長からやっと認めてもらえたってのに!」
今まで不可視だった敵は実の策略により姿を現した。見えているのならば姿を隠す必要がないと判断したのだろうか。しかし、これは実達が勝つことを手助けすることにしかならなかった。
姿が見えていないうちは実が確認、口頭伝達、と手順を踏む必要があったが全員の視界に晒された以上その手順が短縮される結果となった。
「《神速》」
そして、魔王軍暗殺部隊副総隊長クイルは捕獲された。




