最後の審判
「いやー勇者殺しも大したことなかったな」
「あ、あの」
「ん?どうした?」
治癒の勇者が聖裁の勇者に耳打ちをする。
「何?奴が殺したのは4人のはずなのに1人召喚されなかった奴がいる?」
「どういう事だ?」
タケルが殺したのは4人だけだ。彼自身が封印前に言っていた事で嘘をついていなければ本当に1人だけ強制召喚を逃れた者がいるということになる。聖剣を持つものは契約をしていなくても他の契約者の同意が有れば確実に呼ばれるらしい。
「それって何かまずいんですか?」
勇者というものは一種の縛りであり、魔王討伐の為に定期的な情報提供の場を設けていた。それが勇者会議だ。勇者である以上、これは義務であり、この縛りを解くということは裏切りを意味するらしい。
「あ、あの......えと、その」
「どうしたんですか?」
「悪いな彼女は人見知りなところあるからな。さっきみたいに俺を通して話をしてるんだけど」
自分から初対面の人に話しかけることはほとんどないらしい。
「それは本当か?」
こくりと頷く。
「君は呪われているらしい。しかもかなり厄介な呪い。神からの呪いの可能性が高いらしい」
「え?それは、どういうことですか?」
俺に掛けられているのは倫理観や行動選択などを変更する呪いらしい。
治癒の勇者の権能にはどんな呪いでも解くものもあるらしい。しかし、相手は神。できないことはないのだが、彼女の魔力や実力が足りないらしい。
「魔力なら渡しますし、その他も俺が供給するのでお願いします」
治癒の勇者、コルンはそれを承諾し早速解呪を開始した。
神の呪いということでかなり強いらしく普段は一瞬で完了する作業が5分たった今でも完了しない。
「あの、意識があると、その、抵抗力?とかあるみたいで。寝てもらえますか?」
今すぐにと言われても難しいが、《神界書庫》に力の供給を自動化させ眠る準備をした。
「あとはお願いします」
「はい」
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
頭に柔らかい感触がある。あれ?石畳の上で寝てたはずだよな。
目を開くとコルンが目の前で寝ている。自分は仰向けで寝ているはずなのに何故か彼女の顔が近くにある。
「うわっ!」
「ひゃっ!」
全てを理解した時俺は驚いて声が出てしまった。それにより、コルンも驚き目を覚ました。
「あ、あの。すみません!私、えと、その」
と、その時、別の部屋で爆音が鳴り響き、誰かの叫び声が聞こえてきた。
急いで音のした方へ向かうと、封印したはずのタケルが横たわる勇者達の上に座っていた。
「封印したはずじゃ」
「こういう事もあろうかと準備しといて助かったぜ。あーそうそう、あんたがもうちょい早く来てたらこいつら助かったかもしれないのにな」
「くそっ。コルンさん!彼らを任せます!」
「は、はい!」
実が勇者ではないためタケルが絶対優位に立つわけではないのだが、それでも彼は10人の勇者の力を手にしている。油断はできない。
「【座標】っと、んでもって【箱】かーらーのー【状態異常】」
背後に転移してくると同時にキューブで拘束。さらにその中を各種デバフの霧で埋め尽くした。
「うっ眠気が......まずい《樹木の舞》」
ものすごい速度で耐性スキルのレベルが上がっていく。こんなに早く上がるものなのだろうか。眠りに落ちる前に発動できた樹木の舞で全ての霧を吸収した。だが、置き場がない。
取り敢えず収納しとくか。
「《神界書庫》!頼んだ」
自動戦闘形態を起動し体の主導権を全て引き渡す。即座に解析開始し、勇者の力を無力化する策を練る。流石神界書庫というだけあって秘められた情報量は膨大だ。利用できる数は限られているがそれでも十分だ。
箱の勇者の権能の解除に成功した。
「【切断】!【封印】!【魔導】!【状態異常】!【箱】!【召喚】!【先読み】!【座標】!【叡智】!【砲撃】!」
「マジか。10個一気にとかきついな」
お得意のエネルギー障壁や天使、さまざまなスキルで壁を作り出す。
「解析未完了、応急処置開始」
ありったけの力で抗戦するも壁に亀裂が入り始めた。
〜 神界書庫が解除しました。
《最後の審判》が発動可能です 〜
「発動」
聖裁の勇者の比ではないほどの大きさの天秤が出現し、敵であるタケルの罪を裁く。




