愛→博愛→溺愛→狂愛→崩愛
愛しすぎたなんて
彼女が交通事故にあった。
彼氏と酒を飲んで車を走らせていたら川に落ちたそうだ。彼氏のほうは死んで、彼女は命だけは助かったがからだ中に包帯が巻いてありところどころに血が滲んでいて喉には太い管が通されていた。
彼女が事故にあったという知らせを受けたのは三日前で、それからずっとここで動かなくなってしまった彼女を見て呆けている。
ほかの男は彼女がこんな状態になっていることを知ってるのだろうか?きっと知っていたとしてもここには来ないだろう。
現にまだ私と彼女の親族しか来てなかった。彼らにとって彼女はその程度の人だったのだろう。そして彼女も彼らを愛してなどいなかった。もちろん彼女は僕のことも愛してなどいない。私だってそうだ、今は彼女を愛してなどいない。
私が愛しているのは彼女の嘘だ
彼女はいつも私に「愛している」「あなた以外考えられない」「私にはあなたが必要」そういった。
全部嘘だ。
分かってる。
でも私は愛した。
彼女の嘘を。
この愛は間違っているのかもしれない。それでも、私は彼女の嘘を愛している。だって私にはそれしかないから。空っぽの私には彼女の「嘘」がぎっしりと詰まっている。彼女の「愛している」という言葉を盲心し私も彼女を愛した。彼女の「あなた以外考えられない」という言葉を盲心し彼女にとって都合のいい人間になった。彼女の「私にはあなたが必要」という言葉を盲心し彼女に必要とされる人間になった。
歪だ。
私の愛はとうに壊れてしまっている。
そんなことはわかっている。でもそれでもいい、私はそれだけで十分だ。
愛なんてものはとっくに壊れていて、でも私にあるのはそれだけ。彼女がくれる嘘だけが私の孤独を埋めてくれる。
だから今は彼女が死んでしまうのが哀しくてしかたがない。
じゃあわたしはどうすればよかったの?