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アルフリードの苦悩

私がマナーのフリオニール先生の特別授業に疲れ果てて、ベットに潜り込んだ時、突然誰かが枕元に立った気配で目が覚めた。そうっと目を開けると、目の前にはアルの姿があった。


「アル・・・大丈夫なの?」


私は眠たい目をこすりながらアルに問いかけた。国王陛下崩御の知らせを受けてからアルと話をする機会が今までなかったからだ。なんとかベットに沈みかけた体を起こして、アルの方を向く。葬儀の準備やら王位戴冠の準備やらで大忙しのアルは、深夜だというのにいまだに王子の制服を身にまとったままだった。


「サクラ、父上が死んだ」


「・・・うん・・」


アルの表情は月の光が逆光になっていてあまり見えない。


「これでオレはこの王国の王になる・・・」


顔は見えないけど、今どんな表情をしているのかは声の調子で想像できた。


「・・・うん・・そうだね」


私はゆっくりと息を吐くように返事をする。


「サクラ・・・オレは・・・」「アル・・・聞いて・・」


私はアルの言葉を遮って、おじいちゃんの話をすることにした。この話をするのはこの世界ではアルが初めてだ。でも今のアルに一番必要な言葉だと思った。


「私のおじいちゃんがね、いつも言ってたの。人生は配られた札で勝負しなければいけないって。アルに配られたのは王様の札で、私に配られたのは聖女の札」


ベットの上に置かれたアルの手の上に、手を重ねて話を続ける。


「その札を使っていつどんな勝負に出るかは、アルが決めればいいの。色んな組み合わせができるだろうけど、それを決めるのはアルなんだよ。札を持つことは持たないよりも大変かもしれない。でも持つことでできる事があるはず・・」


私は大きく息を吸うと、アルの顔を見ていった。


「おじいちゃんはこうも言ってた。自分が一人で何でもできると思うなって。一人でできる事は自分の事だけで、誰かを助けようと思うんだったら、また他の誰かの手を借りないとダメだって。そうやってみんな助け合っていくのが、本来の人の形だって」


そう言って私はアルの手を両手で握りしめながらいった。


「だから私の手も借りに来てほしい。私の札も使ってもらって構わない。アルは一人じゃないから、たくさんの手が借りられる筈だよ」


「サクラはオレに手を貸してくれるのか・・・」


普段は王子然としていて、威厳のある態度のアルの声が震えている。


「こんな手で良かったらどんどん使って!マッサージでも何でもするよ!あっでも、噛まれるのはもうごめんだからね!」


私はアルを元気づける為にわざと明るくふるまった。逆光で見えないアルの口元が笑ったように感じた。


「ありがとう、サクラ。お陰で元気が出た。マッサージは今度もう少し落ち着いたら頼む」


「任せて!おじいちゃんにゴッドハンドって言われたくらい、マッサージは自信があるの」


私は力こぶしを握ってアルに見せた。アルは私のあるかないかの微妙な力こぶしを見て、小さく声をたてて笑った。なので私もつられてくすりと笑ってしまった。


「お休み。サクラ・・・眠るのを邪魔してすまなかったな。いい夢を」


「アルも早く寝たほうがいいよ。じゃあ、お休みなさい」


私はあまりに眠たかったので、アルが部屋を出ていく前にもう既にベットに横になりすぐに眠りについた。なのでアルがまだ私の部屋にいたことに気が付いていなかった。


アルはしばらく私の寝顔を見ていたらしいが、そのあと私の頬にお休みのキスを落として自室に帰っていった。



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