ユーリの想い (前編)
あのセイアレス大神官とエルドレッド王子との闘いの後、サクラは普段は騎士団訓練場でクラマとして働き、私が出征するときだけ王城に行くようことになっている。
なので私はできるだけすぐに訓練場に戻れるように、全力をもって睡眠時間を削ってでも魔獣を倒して任務を早く完了するようにしている。
騎士団訓練場に帰ればすぐに彼女に会えるからだ。私の愛しい彼女に・・・。出征を終え帰ってきて、久しぶりにやっと一緒にいられる時間だというのに、私の隣に座っている彼女は他の騎士の裸に夢中になって、私の事など関心がないようだった。
そんなにほかの男の裸が見たいのだろうか?それなら私の裸をいくらでも見せてあげよう。正直、サクラの目に他の男が映るというだけでも許せない。
「では今晩一緒にこっそり泳ぎませんか?」
なので私はサクラを夜の秘密の水泳に誘った。彼女の水着姿を見てみたいといった欲望もあったが、それ以上に彼女の視線を独占したい気持ちの方が大きかった。
私は彼女の水着を買ってあげる約束をしてから別れた。サクラに似合うだろう水着を、いくつも頭の中で想像しては年甲斐もなく浮かれた気持ちになる。水着がどうのよりも、私が選んだ水着を着るという行為に私のささやかな独占欲が満たされる。
アルフリード王子には悪いが、サクラの水着姿を見ることができるのは私だけだ。自然と笑いがこぼれる。
私が急いで街に水着を買いに行って戻ってきたら、サクラの居場所が分からなくなっていた。彼女の行動範囲は全て把握している。そのすべてを探してみたが見つからない。だんだん不安が増してきた。
不安が頂点になった頃、彼女がヘル騎士と一緒に食堂に現れた。私は嫉妬で胸が熱くなるのを感じたが、できるだけ平静を装って話す。
「クラマ、遅いから心配しましたよ。どこにいたのです?ヘル騎士も一緒だったのですか?」
なんでも二人で、アイシスの頼みで医療班棟にいたらしい。道理で伝心魔法がきかなかったはずだ。しかもこのヘル騎士と二人きりだなんて・・・・!!
私は牽制の意味も込めて、サクラに今度は私に頼むようにいった。するとヘル騎士がこんなことを言った。
「ユーリス隊長。あまりに束縛しすぎると、クラマが逃げてしまいますよ。まるで愛する女性にでもする態度ですね」
なんてことをいうんだこいつは。まるでサクラが女性だと知っているような口ぶりだ。ヘル騎士には気を付けておいた方がよさそうだ。もしかして彼女を女性だと知ったうえで狙っているのかもしれない。
私は食堂でヘル騎士に見せつけてやるために、サクラにはカテラリーを渡さずに、私が直接食事をあたえることにした。心配させた罰だといって理由をつけて。
「聞きしに勝る溺愛ぶりですね。これも血なのかな?」
ほう、ヘル騎士も我がダイクレール家の溺愛遺伝子の噂を知っているのか。血・・・かそうだな。だけど私にとってはこのサクラに対するこの溢れるほどの愛が、遺伝子のせいだなんて思われるのは心外だった。この気持ちはもっと純粋で、あらがいようのない絶対的なものなのだ。
その時、サクラが奇妙な行動をとった。私は不審に思い彼女が見た方向のベストをはぎ取った。彼女のシャツの肩の部分に血のシミがべったりと付いていた。シャツをはだけると、そこには無残な怪我の跡が残っていた。
「ああああ、あのですねユーリス様これには深――い訳がありまして、ボレダス医療班班長様の毛の問題がですね・・・」
彼女が訳の分からない言い訳を始めたので、怒りに任せてその怪我を舌で舐めとった。舌に魔力を込めて傷を同時に治す。本当は手をかざすだけで事足りるのだが、彼女に対して怒っていた私は、彼女が一番恥ずかしいと思うであろう方法で傷を治した。
サクラは私が言った言い訳を信じたようだが、ヘル騎士は当然真実を知っている。呆れたような顔で私を見るとこういった。
「はっ、はっ、はっ、こりゃまいった。クラマは幸せ者だな。なんといっても王国最強の騎士隊長が君の前だと、かたなしだ」
王国最強の騎士だろうがどうでもいい。私はサクラを守ることさえできれば、それ以上は望まない。
恥ずかしそうに眼を伏せる彼女を見て、胸が高鳴り始める。なんて可愛らしいんだろう。ああ、この腕の中に抱きしめたまま、彼女をさらってしまいたい。
愛しい人よ・・・。




