表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夢の中の男

作者: りょう

初めて短編を書きました。

ぜひ読んでください、お願いします

その駅のホームに、電車がやって来る気配は全くない。


そこには、何を待つ風でもなく、ぽつりぽつりと人がいた。

ホームの終わりは見えないほど長く、暗く影を落としている。


私はというと、線路の上で立ち尽くし、ただひたすら電車が来るのを待っていた。

私自身、自分でも何故こんなことをしているのか全く理解出来ないが、夢なのだから仕方がない。

せいぜい目覚めたら夢占いでもするところだ。


しかし、この夢も見始めて三日目になる。こうも同じ夢を見るというのは何なのだろう。

ストレスを抱えるほど、私は今の暮らしに不満もない。

二人の娘はわがままだが可愛らしいし、女房は気が強いが美人だ。

そして私自身、最近異例の出世を遂げ、生活もかなり充実している。


しかしこんな夢を見るくらいなのだから、私も気付かないうちにストレスを感じていたのかもしれない。


しばらくするといつものように、一人の男がホームの奥から歩いてきた。みすぼらしいスーツを着た男だ。

男はいつものように、ホームの人々に一人ずつ声をかけていった。


「私にタマシイ、くれませんか?」


身震いするような声だった。

三日目にしてもまだ慣れない。声をかけられた主婦は、俯いたまま答えた。


「隣の人に聞いてください」


これもまた、いつも通りであった。


男は小さく頷くと、隣の女の子に顔を向けた。

「私にタマシイ、くれませんか?」

赤いランドセルをしょった女の子は、数秒迷った仕草を見せたが、やはりこう言った。

「隣の人に聞いてください」


私はその様子を横目でしばらく見ていたが、誰もが同じ言葉を口にするばかりで、今日もいつもと変わりなかった。


この夢は一体何なのだろう。


夢の中の男は、いつもホームにいる全員に声をかけていた。声をかけながらホームを進んでいき、やがて見えなくなる。

しかし何故か、いつも私の方には見向きもしない。ホームにいないからだろうか。


少しの恐怖と多大な好奇心に揺れながら、気づけば私は男の背中に声をかけていた。


「おい!お前、何をしている」


振り向いた男の顔を見て、私は思わず声を上げた。

「あっ!お前!」


何ということだろう。その男は、私だったのだ。


そうか、思い出したぞ。

私は三日前の朝、ここで死んだのだ。

昔の上司で、今は私の部下である男に、線路に突き落とされて死んだのだ。


ということは、私は死にきれていないのか?


まだこの世に未練たらたらで、あの世でこんな夢でも見ているのだろうか

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ