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神に選ばれた俺は  作者: 瀬田 冬夏
俺と神々
7/36

俺と偏った神さまの知識

前回のあらすじ

ネット通販が使えるようになってひゃっほーいな俺。

トキアカさまをパシらせて、創世神にだけは詐欺師の報告を入れて貰う事にして、俺はギルドホールへと戻ってきて。



 これから仕事場になるであろうカウンターに座ろうとして、椅子を取り替える事にした。

 いや、出来はけして悪くないどころか良いんだけどさ。ギルド職員、職場の椅子かって言ったら、絶対違う! って思うものなんだコレが。

 どっかリゾートホテルのような椅子は合わないだろ……。

 ネット通販でそこそこ座り心地も良さそうな仕事用の椅子を買った。


 さて。詐欺師のおかげというべきか、特殊金属、オリハルコンもゲットし、魔力解析、及び書き込みが出来るようになったので、これで、冒険者カードが作れそうではある……が……。

 冒険者ギルドにはそもそも何が必要だろうか。

 それを考えてみることにした。

 まずは、身分証にもなる、冒険者カード。

 これはクリアね。うん。

 次は……クエストだよな? 仕事だ。

 ……仕事か。素材集めって事になるだろうけど、有名なアイテムショップは横繋がりがしっかりしてるからな……。狙うなら下位か……。

 でもゆくゆくは、上位の人も欲しいし……。うーん。ギルドに登録するだけのメリットがなくては意味ないな。あと、素材をギルドにも売ってくれるようにしてくらないと……って事になる。

 ……そういや、ダンジョンって結局どんな所なんだ? 知識としては貰ってるけど、実際に見たことないしな。

 新人の武具は? いくらあっても足りない物は? どんなものがより必要になる?

 しばらく天井を眺めてぼんやりと考えていた。

「…………あ! やべ!!」

 俺は慌てて立ち上がる。

 新しく入った方々の教会まだ取ってきてねぇ!!

 俺は慌てて女神達の教会がある場所へと転移した。



 詐欺師はどうやらいろんな所で詐欺を働いたらしく、第1区画、第2区画、第3区画、第7区画、第8区画、第9区画に分社が出来た。

 とりあえず公園にする事し、トイレ、水飲み場、休憩用のベンチを基準とし、それぞれに特色を出してみた。

 第1区画は二柱居て、そのうちの光の女神のメイさまの所はデートスポットとして使えるようにしてみた。ラスベガスのように水と光による噴水イベントが行われるのだ。

 もっとも、ここはダンジョン入り口とも近くて殺気立った奴らが出入りするかもしれないから、そんな甘いムードにはならんかもしれないけどな! 狩人が勝つか、それともカップルが勝つか、見ものだ。

 あ、カップルの安全はもちろん万全ですよ。ここは我がキリュー教会の敷地内ので、いちゃもん付けてケンカ沙汰なんて出来ません。

 あと第8区画。海の女神ジューンさまの教会跡地だけは公園にはしなかった。

 洋風庭園が設置されているレストランにしたのだ。

 商談やデート、ガーデンパーティーとかそういう場所にした。

 料理はシーフードがメインになるだろう。今は状態保存魔法をかけて、放置だけどな。

 状態保存魔法は便利だ。家具も傷まないし、埃も積もらない。何より、空き巣などは絶対には入れない。今、ここに入れるのは俺とトキアカさまくらいだろう。


 そんな感じで、和風・洋風の庭園を造り、一息つくと、上位神達がいる、中央区画を冷やかしつつ、ダンジョンに行ってみるかなっていう気になった。

 教会回収で外に出てるだけで、せっかくの異世界なのに観光なんて全然していない事に気づいたからだ。

 俺は今を時めく方々がおわす中央区画へと向かった。


 この国の首都は時計を想像してもらうと分かりやすい。

 中心が城になり、それらをぐるりと囲み一つ目の城壁がある。この中は特級地区といって、本当にお偉いさんかしか住んでいない。最初の頃からいる神々の一部はここにいるだろうな。で、それからもう一つ外側に城壁を築いて出来た街並みは内区画となっていて、こっちもまた上位神達が住んでたり、一部貴族が住んでるだろう。で、さらにもう一つ城壁をはさんで、次は中央区と呼ばれている。多くの店が立ち並ぶ場所だ。

 あと住んでいるのは狩人達が多い。ベテランって方々は大体はこっちに住んでて、そのせいもあって、凄くにぎわっている。消費者に合わせて通りが活性化してるというべきなんだろうねぇ。

 で、さらに城壁を挟んで俺たちが住んでいる外円区画。もっとも、今、さらに外に向けて城壁を作っているので、そのうち名前が変わるかもしれない。

 そこは、第1~11区画が時計と同じように並び、12の位置にあるのがダンジョンとなっている。

 現在建設中の新しい区画に住んでいるのは、最近この首都に来た人や、昔から住んでいたがそれぞれの区画から追い出されるような形で引っ越した人達、まだ中央区に家を持てるほど金を稼げているわけでもなく、教会からも部屋数の問題であぶれたような人達が住んでいるし、田舎から出てきた若者達も多く、……夢に破れて足を踏み外すそんな場所だ。

 俺のメインターゲットになる方々だろう。


「しっかし……」

 俺は改めて周りを見た。みんな武器持って歩いてるなぁ。当然なんだろうけど、物騒だなあ。

 武器や防具、魔道具や魔法薬の値段を調べながら歩いていると、通りの向こうからベロスさまがやってきた。

「買い物か?」

「いえ、冷やかしです。冒険者には何が必要なのか分からないので」

「なるほど」

「だからあとでダンジョンにも行こうって思ってるのですが」

「……その格好でか?」

「やっぱ、不味いですかね?」

「せめて防具ぐらいは身につけるべきだろうな。そなたの身はそなた一人のものではないのだから」

「………………」

 いや、教祖だからってのは分かるんすけどね。

「ベロスさま。そういうセリフは俺の国じゃ、妊婦にいう言葉なんスよ……」

「む? そうなのか? それは……悪い事をしたか?」

「若干ちょっと傷つきました」

「そうか。悪かったな」

「いえ、良いんですけど」

 確かに防具の一つくらいは着ておくべきだろう。というわけでちゃちゃっと作ろう。いや~こういう時、ヒコヒメナさまの能力はほんっと便利だわ。

 オリハルコンも使えるようになったし……。ん……、ちょっと派手だな。上からもう一枚重ねる感じで作るか。

 そういや……蜘蛛の糸ってどうなんだろ。

 アレキトンダーさまの力を使い、モンスターに当然のように属するむっちゃ強い蜘蛛の糸を使い、光り輝く銅色に近いオリハルコンを隠すようにマントを作成した。

 この間わずか一秒。

 それを肩からかける。

「……それは、オリハルコンか?」

「はい。繊維状にして糸代わりに使ってみました」

「…………オリハルコンの防具は珍しいものではないが……、呆れるばかりだな……」

 はぁ。とベロスさまは息を吐いて歩き出した。

 なんで俺、呆れられんの? て、思ったけど、この世界じゃそんなもんかもしれない。

 鉱物を糸になんて考えないよなぁ。

「我も一緒に行こう」

「神様がダンジョンに入ってもいいんですか?」

「問題はない。戦神の多くは信徒が少ない頃は共に入っていると聞くぞ」

「へー…………」

 俺、てっきり駄目なんだと思ってた。

 ベロスさまがご一緒してくださると仰るので、後でじゃなくて今、ダンジョンに向かうことにした。

 この世界の人々の生活とかこの国の食べ物とかそんな話をしながら歩く。

 だってな。「神様方よ、俺に与える知識、物すっごく偏ってるぞ!」って心の中で叫ばずには居られないぐらい、偏ってんのよ。これがまた。

 自分に司るものにあんまり関係ないなーって思ってるのはさっぱり分かんないの。

 例えば。暦がどうなっているのかなんてさっぱり分かりません。他にも、今居るのが国の首都で真ん中にある城には王様がいるっていうのは分かるけどぉ。

 国の名前はわかんねーし、首都の名前もわかんねーし、王様の名前もわかんねーの!

 そのクセ、各国の王城には、創世神のための神殿があって、そこに二ヶ月間滞在すると別の国に移動する。天界にて修行を終えた神は、創世神がいる国に降りて来て、空いている教会(再修行になった方や中央区に移った方とか、ね)に降りてくる。

 教会自体は新しく作り直され、神のランクが上がれば、教会内をリフォームも出来る。

 っていう、情報とかさ、要らないよな!?

 いや、確かに必要だけど、まずは、住んでるところの名前を教えろよ!! って内心思う俺は間違っていないはずだ。

 ……いや、名前が分かっても、この首都の構造がどうなっているか分からない方が色々面倒だったから、その点には感謝しますけどね。この知識を必要と思って与えてくれた方がどなたかは知りませんが、ありがとうございます。助かってます。

 心の中でそんなお礼を述べながら周りの風景を眺める。

 建物はわりとみんな二階建てなんだな。

「中央区はわりと栄えてますよね」

「この国の経済の中心とも言える。栄えているのは当然だろう」

「なるほど……」

「……桐生は人混みを歩くのは上手いな」

「え?」

「この街だけではないだろうが、首都に入ったばかりの子の多くはどう歩けば良いのか分からないといった風情があってな」

「ああ、それなら確かに鍛えられてますから大丈夫ですね。この三倍人がいても大丈夫ですよ」

 むしろこれぐらいで弱音を吐いてたらいかんぞー。

「……何かの祭りか?」

「いえ、普通に学校と仕事がある平日と呼ばれる朝の時間帯の出来事ですが、何か?」

 朝のラッシュの話が聞きたいのですか? 語りましょうか?

「……いや、なんでもない」

「じゃあ行きましょうか!」

「うむ」

 とっても晴れやかな笑顔を見せる俺に、ベロスさまは静かに頷いて付いてきてくださった。

 ダンジョンの出入り口は何というか屈強の男達……だけではなく、胸なのか筋肉なのか分からない女性もちらほら居たり、魔法使いだと思う人達も居たり、で、それなりに人がいた。

 そう、それなりに人が居たのだ。明らかに並んで待っている形で。

「……順番待ち?」

「そのようだな」

「……ふーん……」

 結構大荷物の人多いなぁ~。

「大荷物の人が多いのは?」

「多くは食料だろうな。上位クラスの教会になると、実力別でわけて食料をリレー形式で渡し、下層での滞在時間を長くしていると聞いた事がある」

「へェ……」

 なるほどねェ……。

「ちなみに、保存食ってのはどんなのです?」

「干し肉や干し魚がほとんどだと聞いている。すまぬが、細かくは分からぬ」

 まあそうだよな。神様達は食べられるけど、食べなくてもいいわけだし。

 ちなみに、神さま達はトイレとかしないよ、マジで。老廃物とかもないし、全部綺麗に魔力とか神通力とか色々呼び方はあるだろうけど、神様の力となって吸収されるからね。

 でも、食ったりとか飲んだりするのは好きらしい。だから信徒が出来たら、朝と夜はご飯作って貰うんだぜー。

 面倒だと思うだろ? でも神のために用意する。その気持ちや行動が神さまの力になるんだ。って言われたら、やるしかないんだよなぁ。

「とりあえず、並びますか」

「うむ」

 中に入ってみないことには仕方がないので、最後尾に並ぶ。進んだり、進まなかったりするのはパーティー人数の関係もあるらしく、団体様が入っていった時は、これ、全部同じグループだったらいいのに、って思うくらいには差があったりして……。

 っていうか、スマホ触りてぇ……。

 待ち時間が長すぎる! 時間つぶしになるようなものが何も無いのが非常に辛い!!

 でもスマホを取り出してこっそりっていうわけにもいかない。

 何故って、なんかよく分からんが、見られているんだよ。がっつりと。

「……見られています?」

 どう考えても気のせいじゃないと思うが、それでも一応確認してみた。

「見られているな」

 ベロスさまがしっかりと頷いてくれた。

 はて、なんでだ?

 見られているが絡んでくる様子は無い。まあ、隣に神様いるしね。ここに居るって事は戦える神様って事だろうから、よっぽどの馬鹿でも絡んでくることはないだろう。

「……そこの神は戦神か?」

 そしてついに、声をかけて近寄ってくる人……ではないな。神がいた。

 俺は軽く会釈をすると、何故かその神は驚いた様だった。

「はい。こちらの方は武神であり守護神である、我が主神の一柱、ベロスさまです」

「守護神……?」

 戸惑いながらその武神であろう神はベロスさまを見て、俺を見た。

 きっと守護神って言葉が聞き慣れないのだろう。

「人の子よ。我の忠告を聞くかどうかはお主次第だが、ダンジョンに入るのであれば、食料と水を持ってくる事だ。神は食わぬ故、見落とすがな」

 …………あー……、この神様良い神様だわぁ。

「ご忠告ありがとうございます。本日はダンジョンの攻略ではなく、ただの見学なので」

「見学……」

「はい。冒険者……じゃなかった、狩人には何が必要なのか、それを確かめるために、この場に並び、現場を知ろうと思ったわけでして」

「……下層にと潜らないのであれば、問題はないだろう……。しかしウヌは……我に嫌悪を抱かぬのか?」

「は? 何故ですか?」

 いや、意味わかんねーよ。親切なアドバイスしてくれた人に対してなんでいきなり嫌悪なんて浮かべるんだよ。

「桐生。本来、同じ神同士が相対すれば、嫌味の応酬だ」

「……あー……なるほど。主張同士がぶつかるからか」

「そうであるな」

「なるほど、この神あって、この子あり、というやつか!」

「それは違う。この者が、この者だから、だ。確かに、我は他の武神と敵対する気はもとより無いが」

 そういう意味ではうちの神様達は基本、誰かを目の敵にしてるって事はないのでありがたい。もしそうなったら……。個人の問題なので個人で解決してくださいって言ってそうだなぁ。俺。

 ……ん? 元々おおらかだから多神教でも構わないって神々が集まってるのか? ……こっちが正解かもな。

「我は第5区画のキリュー教の者だ」

「我は第6区画のナナザだ」

 6で七か、ややこしいな。

 隣の区画の方なのか。冒険者ギルドが出来上がったら声をかけてみよう。そんな事を思っていたが、ナナザさまは一瞬眉を寄せた。

「キリュー教? 確か、ベロスと」

「ベロスは我の名。我を守護神として加護を決めたのは桐生なのでな」

「……教祖に決めさせたのか? 無茶をするものだ」

「おかげで、唯一神となった」

「え!? そうなの!?」

「むろん、本物の唯一神には負けるぞ?」

 驚く俺にベロスさまが付け足す。

「あー……なるほど、ってことは、レオソルンさまも?」

「そうだ」

 下界に降りてくる時に、武神、もしくは戦神って、技術を維持して降りてくる。その代わり神としての力は世界にいる武神の数で割った時より少ない形になる。

 だから、蹴り一つで大岩を粉々にしたりとか、剣一振りでとっかの島の杉の様にぶっとい木を斬り倒すなんて事は出来なくなる。

 後付けというか路線変更というか、そんな形とは言え、唯一神となった事で、分割した力の何割かが戻ってきたのだろう。

「なるほどねぇ。随分と加護が強力になってるなって思ったけど、そういう事」

 俺は一人納得した。

 複合技とはいえ、勝手に未来を先読みしだしたからねぇ。強力になってると言わざるえないっしょ。

 ……あれ? という事は詐欺師に騙された女神達も……って、駄目だった。第一信徒じゃないから、そんな事出来ないんだった……。

「唯一神か、うらやましい事だ……」

 少し悲しげにナナザさまは笑った。

「では互いに頑張ろう、……っと、見学であったな、無理はするべきではないぞ」

 そう言い残してナナザさまは歩いて行った。列の先に待っていたらしい信徒の人達と合流し何かを話していた。

 視線が向いたので軽く会釈する。

 するとびっくりという表情が返ってきた。

「……この国は会釈はしないんですか?」

「神同士が仲が良いというのであれば、するであろうな」

「ふーむ……」

「気にする事はない。お前がしたいのであればすると良い」

「…………嘗められたりしませんかね?」

 そう言うと何故かベロスさまが声をたてて笑った。

「ははははは。そのような輩が居たら、その者が血祭りになるだけだ」

「……」

 ベロスさまの中で俺、どんだけ好戦的?

「皆、怒るであろうよ」

「……」

 ……あれ? 俺がそいつ血祭りにするんじゃなくて、神様がしちゃう系?

「……なるべくなら、その時は止めてくださいね?」

「さて、守る者が馬鹿にされたとあってはなぁ……?」

 おぉぅ……。難しそうな流れだ。……ここはみんなの良心、メリーマムルさまに頑張って貰おう! そうしよう! って、あの方がこんな所にくるわけねーじゃん……。

 少しずつ流れる行列に習いながら、俺はため息を一つついた。

 変な奴が絡んできませんように。

 とりあえず、それだけは、神様に祈ることにした。

 ……どの神にって言われると困るが、とりあえず「神」に、だ。


いつもありがとうございます。

前書き部分をちょっと前から、前回のあらすじって事にしてるんですが、

有った方がいいのか、ない方がいいのか……。

ちょっと悩み中です。

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