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神に選ばれた俺は  作者: 瀬田 冬夏
俺と神々
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冒険者ギルド(予定)の建物内

 神々から力を授かり、俺は、新しい教会を作った。その仕上がりをしみじみと見て呟く。

「……建築の神欲しいなぁ……」

 と。




 三階までだったら大丈夫だろうけど、それ以上ってなると、やっぱきちんとした知識が必要だよなぁ。

「お前……さらに神を望むか」

「いや、三階以上ってなると結構不安かなっと。今もきちんと基礎とかは作ってあるけどな」

 呆れ果ててるトキアカさまに補足する。

 だって基礎っていってもテレビとかで得た知識だぜ? 不安になるだろ?

 嫌な感じはしないから問題はないと思うんだけど。

「一階は冒険者ギルトと一般客用。二階は冒険者用、三階は信徒用の部屋と神様方のラウンジや風呂、屋上にはみなさまの社がありまして、その先は異空間になってて、みんなの教会があります。ので、みなさまはそこで眠るって事で」

 神社でよく見る建物、本殿だっけ? それを中央のゲートに入り口を向けるようにして置いてある。

 この世界鬼門とかないからありがたい。どこに扉を向けても怒られないからな。

 あ、社だしと洒落でお賽銭箱も置いてみた。

「えー。三階には無いの~?」

「三階が良かったですか?」

 ミュークさまの言葉に聞き返す。

「だって二人だけであの広さって贅沢じゃ無い」

「いや、あの中普通に色々区切ってますよ。さっきも色々言いましたが、神さま方の部屋もありますし。全部私室じゃないです。って、いうか見に行きましょうか?」

「行く!!」

 じゃあ、と中に入ろうとして気づけばトキアカさまとラデンさまがいないのに気づいた。 あの二人なら大丈夫だろう。俺は他のみなさまを連れて、三階へとやってきた。

 ビルの中の照明はほとんどキャンドルっていうか火だ。その火の光を鏡で反射させて強めてる感じだが、根本的にキャンドルの数は多い。しかしここは火の神がいるので、火事の心配はない。窓から入ってくる光で日中はあまり照明必要ないしな。それでも現代日本人からすると暗いなって思う場所はあるけど。

 あと、天井は時折、空気の入れ替えで星空になる。基本はランダムだが空気環境が悪くなると自動的に星空になる。そういうのも楽しんで貰えたらなって思って、これは一階から三階、全てそうなってる。

「見所はトイレと風呂です。風呂に関してはしばらくは、神々と信徒は同じになりますが、許してくださいね」

「混浴か!?」

「違いますよ!」

 オルチさまの言葉に俺は驚いたよ。

 おっさん何言ってんだよ! と怒鳴りたい。

 でも、良かった。

 覗き防止にと、男湯と女湯は離したんだ。

 ドキドキハプニングは確かに美味しいが、相手は神だ。何か有った時、というか力が戻った時、俺の命に関わる。絶対に!!

 オルチさまのセリフを考えるに俺のした事は正解だったのだろう。

 こういう事に関しては安全重視、効率無視だ。

 飛んできたのはなんとなくで男湯にしたのだが、それも正解だったのだろう。

 引き戸があって、靴箱がある。(女湯は引き戸が二枚だ)

 脱衣所があって、洗い場があって、広い露天風呂がある。

 室内だが、露天だ。

 そこには四季折々の花々と秋には紅葉する樹木、そして、満天の星空がある。

 残念ながら、温泉じゃなくてただのお湯なんだけどな。

 アキュアさま、今度温泉水取ってくれって言ったら取ってくれるかな……。

 ちなみにイメージは高級旅館で、色んな力を複合して作ってある。

 脱衣所だって洗い場だって、金取れるぜ。ってくらいには、細かいところまで拘ったつもり……って、アキュアさまとオーロリアさまが俺の手を二人で片手ずつ取り、握りしめた。

「「桐生!!」」

「はい」

「「ありがとう!!」」

「いえいえ」

 いいんすよ、別に。こんな事で神様方の自信になるのなら安いもんだ。そして次の見所はさっきも言ったがトイレだ。察しの言い方ならもうお気づきだろう。

 この世界のトイレは一言で言うと昔のトイレだ。くみ取り式で掃除をさぼらなくても臭う。なので、香水が置かれてたりする。……そのせいでさらに臭いが混じって凄い事になってたりする。

 そんなトイレは俺が嫌だ。絶対に嫌だ!! ってなわけで、水洗式だ。水で流し、下水道ではなく地下深くに作った肥だめに転送される。というよりも基本排水はそっちに転送される仕組みだ。他にも色々細かい事をしてたりするが、その辺は省く。とにもかくにも、我が教会のトイレは一流ホテル並の豪華さを誇る。生花や観葉植物はあるだけでリッチ感を出してくれるしな。床はタイルで窓ガラスや鏡もある。でも、一つだけ、実は神様の加護じゃなくて、俺だけが貰ったチート能力が使われているのがある。それは照明だ。

 ぱっと見、分かんないように加工してあるが、天井からの明かりだけは、キャンドルとかじゃなくて、光魔法なんだよなぁ。

 薄暗いトイレは嫌だなって思ってさ。風呂もそうなんだけど、風呂場は雰囲気作りにって、でっかい石籠が作れたからあれのおかげで結構光源は確保出来た。

 あと、部屋に関してはビジネスホテルのイメージ。今度建物を作り替える時にはもっと違うのを覚えてやるって思っている。

 俺の中でのホテルのイメージって、修学旅行で止まった一人部屋だった。テレビでは見たことのあるリゾートホテルってのも浮かんだんだけど、形にするにはちょっと弱かった。

 旅館には行ったことがあったから、風呂場はどうにかなったんだけどなぁ……。

 え? さっきトイレで一流ホテル並だとかなんとか言ってたって?

 そこを突っ込んでくるなよ……。そっちは入った事、あるんだよ……。ディナーの関係で……。

 ……クリスマス……。カップル限定…………。ぐっ。

 嫌だって言ったのに、良子姉ちゃん……。しかも人を誕生日に仕立てやがって……ッ!!

 お誕生日おめでとうございます。ってスタッフさんにお祝いされて周りの注目を集めた俺の、俺の、俺の気持ちが~…………。

 駿兄貴と行けば良かったのに! 弟とは嫌だとか抜かすし! 兄貴はここぞとばかりに帰ってこねぇし!

 うぅうう。嫌だぁ……。仲の良い兄弟だねって思われてるのなら良いけど、「若い燕」だなんて思われてたら俺は死ねる…………。

 え? つまりどういう事かって? 従姉妹の姉ちゃんに、クリスマス限定カップルメニューがあるからって無理矢理連れて行かれて、プラス料金で出される誕生日ケーキもしっかり良子姉ちゃんが味わいましたっていう話だ。

 それまでに男探せよコンチクショウ! だからバツイチなんだよ!! っていったら俺が殺されるので、話を戻そう。


 次の紹介はダイニングだ。

 ダイニングルームについてはキャンドルで雰囲気作りしても良いかなって思ってる。昼間は外からの光を取り入れ、夜は星空だ。早く月夜が使えるようにならないかなぁ。

 あ、調理場に関してはやっぱりエセ照明で光魔法を使ってるんだけどな。

 そんな案内をしていると、トキアカさまとラデンさまが戻ってきた。

「おい、連れて来たぞー」

 言葉通り、神を二柱つれて。

 二って、どうゆうこと?

「連れて来たって、建築の神ですか?」

「おう。オレっちが建築の神、ザクラだ。お前さんがラデン兄貴の教祖か。よろしくな!」

 どうやらラデンさまの知り合いらしい。

「初めまして。俺はキリュー教を取りまとめます、音葉 桐生と申します」

 会釈をする。それから建築の神の肩に乗っている白い子猫を見た。

「それで、その神は?」

 子猫は泣いていた。凄い勢いでずっと泣いていた。

「こいつはオレっちと同じく昨日、下界にやってきた魔道具の神ビャクコだ。もっとも、今朝、金も第一信徒もいなくなっちまったけどな」

「…………モンスターにでも?」

「いやいや、お前さんが一瞬考えて止めた方じゃないかな?」

「……騙された、という事ですか?」

「そうらしいな。こいつは、ハズレの力を引いちまった神だ。司れたのは、『魔力の情報解析及び書き込み』と『簡易魔道具短縮作成、照明』だったらしい」

「アイツはそれでも言ったニャ。必ず私が役立ててみせますって、言ったニャ! ウソは付いているように見えニャかったのニャ、でも、教祖にして、金を渡したらあっさり、あっさり、あ、あっさり、にゃーの事捨てたニャァァァ!」

 ウエエエエンと漫画のように涙を流す神。

「……ウソは言ってなかったんでしょうね」

「ニャ!?」

「だって、『私が役立ててみせる』って、その奪った奴の役にたてばそれで良いって最初から思ってたんでしょ」

「……ニャ、ニャァァァ……」

 今度は静かに泣き始めた。

 見てる見てる。母性と慈愛の女神のメリーマムルさまが、チョーー見てる。

「それでな、さらに加護の力が減って、与えられる加護がもう、魔力解析しかないんだと」

「魔力式の書き込みが与えられニャイ神にニャンの価値が有るニャ」

「て、なわけで、オレっちが欲しかったらこの神とセットでならいいぜって事でどうだい?」

「俺的には全然問題有りませんが、決めるのはうちの神々なので」

 そう答えるとザクラさまは険しい顔をされた。何故?

「お前さんはこの子をどう扱っていく気だい?」

「どうって、神様なのでそれなりに」

 そう答えるがやはり険しいまま。

 何なの?

「……この子を神として育てられるのか?」

「たぶん問題ないと思いますが。まぁ絶対とは言い切れませんが」

「この子に何をさせる気だい?」

「何をって、魔力の情報解析ですけど?」

 それしか出来ないんだよね?

「「…………」」

 互いに沈黙が流れる。

「あの、力を貸したくないのであれば別に無理強いするようなものではないので……」

「桐生、違うわ。心配なのですよ。彼は」

「心配?」

 メリーマムルさまの言葉に首を傾げた。

 そしてついに見ていられなかったというか割って入るタイミングを得て、子猫神を撫でている。しかし、猫の手で魔道具の神ってのも変な感じだな。

「通常であれば彼女を神として育てる方法は非常に困難です。それなのに貴方があっさりと頷くから、彼女を神として扱わず、ただの条件として、受け入れただけなのではないか、と彼は心配なのですわ」

「あー、なるほど」

 そういう考え方だったら俺の言った「神様なのでそれなりに」っていう言葉もマイナスイメージしかわかねーな。

「しかし、その心配は杞憂であると、断言しましょう。建築神ザクラ!」

 そして何故かオーロリアさままで参戦してきた。

「桐生にかかれば、星空しか出せないワタシの力でも素晴らしい結果になりました!」

「アタシもだよ!! 飲料水しか出せないんだよアタシ! それでも桐生は嫌がることなく素晴らしい結果にしてくれたわ!!」

 オーロリアさまだけじゃなくてアキュアさままで入ってきたよ!

「えー、どもありがとうございます。そろそろ。こっぱすがしいので止めてください」

 なんか、無理に誉めて貰ってるようで聞いてる俺が痛い。

「では、ザクラさまを安心してもらうためにも、魔力解析で何をしてもらうかというと、個人の特定です。魔力情報が分かれば、個人を特定出来ますよね?」

 異世界物だと割とそれが普通だからそうであろう。きっと。たぶん。そう俺は信じている。

「媒体が、あれば、肉体魔力と魂魔力と両方からで個人を特定出来るニャ」

「その媒体というのは何です? それはどれくらいの精密さで出来ますか? 何億人の内の一人とか、どれくらいで同じタイプの人が出てくる割合とか」

「いニャイニャ。魂と肉体、それを繋ぐ精神の解析もすれば、100パーなのニャ」

「それは凄い!」

 マジで凄い!

「血の一滴でも貰えればそれで分かるニャ」

 おおおぉ。マジか。

「それは神の加護を受けてもですか?」

「受けてもニャ。変質はしても、変質する前がニャんだったかも分かるニャ」

「それが、出来るんですよね?」

「それしか出来ニャいニャ」

「いえいえ! 凄いですよ! 俺的にはかなりありがたいです」

 俺は正直に伝える。

「俺は冒険者ギルドというのを作りたいんです。その会員カードを身分証に出来るようにしたいので、あなた様の能力は凄くありがたいです」

「……本当にそう思ってるニャ?」

「もちろんです!」

「じゃあ、にゃーを受け入れてくれるニャ?」

 それを俺に聞かれても困る。ので、うちの神様方を見た。

 誰も反対は無いようだ。

 ……そりゃそうだ。みんな、信徒が得られなくて苦労してきた方々ばっかりだもんな……。

「神々に異存はないようなので、もし、よろしければ」

「オレっちはもう反対する事はないぜ! この子共々ヨロシクナ!」

「にゃーは、ビャクコ、ニャ。まだ、怖いけど、もう一度信じたいニャ。よろしくお願いしますニャ」

 そうぺこりと頭を下げる子猫。それと同時に神々の力が入り込んできた。

 うーん……。

「教会、作り直してぇ!!」

 先程作った時は自信有ったけど、今は逆だ!! 粗が分かるから今すぐ造り直してぇ!

「えー!! もったいないよー!」

「えー。でもぉ、建築神の第一信徒としてはぁ」

 ミュークさまにわざとらしく返していたら、アリスティーさまから一言。

「遊んでないで早く登録してきなさい。ティナがいつまでも入れないでしょう」

「はい、今すぐに!」

 確かにいつまでもティナさんを無所属にして置くわけにもいかない。

「ではレオソルンさま、アレキトンダーさま、ヒコヒメナさまも一緒に来てくれませんか? 俺の知識って偏ってるので」

 神々の事に関しては全然問題ないんだけどな、人間同士の常識についてはさっぱりな部分が多い。

 チョイスした理由は、人型、亜人型、獣人型故である。ベロスさまにはここを守って貰わないとね。

「うむ。分かった」

「ワガハイ、ガンバル」

「あら、わたしでいいのかしら?」

 そう言いながらもヒコヒメナさまも付いてきてくれるらしい。

 さて、面倒な事はさっさと終わらせてくるか。

 なんせ、ザクラさまとビャクコさまの所の教会も回収して、上に再設置しないといけないしな。

「トキアカさま~。城まで送ってくださーい」

「あいよぉ」

 そんな短い言葉で俺達、一人と三柱は城の前に居た。

「……なるほど、これか……」

 レオソルンさまが苦笑と共にそう口にされた。

「何がです?」

「トキアカの能力は世界を変える力があると言っていただろ? トキアカがその気になれば、国を滅ぼすことも、簡単であるな。と、我は軍神ではないが、桐生が言っていた収納の力の素晴らしさは分かる。その上、移動もこれであれば、な」

「知らぬは本人のみなんすよねぇ……」

「まったくだ」

 レオソルンさまは大仰に頷く。

「そして、桐生はこの力を商人に使わせるのね?」

「……そう思ったんですけどね……」

 色々、問題ありそうで、むやみやたらに信者にするわけにいは行かない気がするんだよなぁ……。

 なんか当然なんだけど、チートになりすぎてやばいんだよね……。

 それに何より……、何か分からないけど、無意味に信者を増やすのはやばいっていう気がしてならないんだ。

 抱える力が大きくなりすぎると力に溺れるとかそんな事があるからなのだろうか? しかし、守護や慈愛っていうのを考えるとそうそう溺れるって事はないだろうし……。それとも信者が脅されて利用されるとかだろうか……。

 うーん。分からん。

 とりあえずは後回しにし、俺はキリュー教を登録する部署へと向かった。

お読みいただきありがとうございます。

もうしばらくは毎日投稿頑張ります。

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