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神に選ばれた俺は  作者: 瀬田 冬夏
俺と神々
3/36

神々が司るもの。

主に説明回。

そして会話の回



「さて、皆様お待たせしました。それぞれに司りたいのはお有りだと思いますが、それはひとまず後回しにして頂き、俺が指定するもので宜しくお願いします。まずは信者を増やす事……いえ、皆様方を知ってもらうことが、最優先なので」


 ご利益なんてものはあとから増やせるし。この辺はもしかしたら日本人の考え方なのかも。いや、育ては「○○の神になる」とかから考えると、ご利益が増えるっていう考え方は当たり前なのか?


「では、一柱め。時空の神、トキアカさま」

「おう!」

「時空の神として、商売繁盛を司ってくれ。あと、予知夢」

「は? はぁ!? そんなん司ってどうするんだよ! 商人達は大体創世神教会に所属すんだぜ!?」

「それは創世神が金を作ってるからだ。でも、創世神のご利益は商人には殆ど関係ない。彼の神のご利益は世界の安定だ」


 それについては実のところ貨幣に描かれて貨幣の名前であることだけで、十分だと思う。世界の名前も当然創世神だ。

 というか、あの神は別に消えたりするわけじゃないし。


「商人達がこぞって利益がある。と言ってるのなら本当にあるのかもしれないが、それはあくまでチャンスが到来するくらいでそれを生かせるかどうかが商人次第ってんならみんな入ってんだ、結局かわんねーだろ」

「だからって俺様が商売繁盛を司ってどう利益が出るってんだよ。あと、お前、なんで俺様にはタメ語なんだよ」

「あ、わりぃ。どうにも最初に見たときのガキンチョのイメージが強くて」

「オイ!」

「まぁまぁ。それに、もしこれで俺がみんなをドーンと有名な神にする事が出来たら先見の明が有りだ。商売人なら……」

「あのな。先見の明とかアホか。俺様は時空の神。時と空間を司ってるんだぜ? 不確定な未来の映像なら見放題だってんだ。俺様が色々見た奴の中でお前が一番成功させてたんだよ。お前は俺様を大神にさせてたんだ」


 おお~! と、神々の間から声が上がる。

 しかし俺は興奮するどころか白い眼差しを向けたよ。


「トキアカさま。商売繁盛、宜しくお願いします」

「なんでだよ!」

「先見の明は商人にとって一番大事! んでもって、トキアカさまの移動能力はさらに大事! その上収納能力だって馬鹿には出来ない! むしろこれで国だって滅ぼせちゃう!」

「は、はぁ!? なんでだよ!」

「兵糧の移動だって簡単だし、攻城兵器の持ち運びも楽だし、水面下で作業しやすい分、奇襲だってしやすい。戦わなくても、物流だって止められる。周りの農村から収穫物を盗んで回ればいい。手ぶらな犯人は犯人とも疑われないだろう。複数でやればあっという間だ。トキアカさま、あなたの能力はわりと真面目に世界を変えるだけの力があるんですよ。ご理解ください」


 言葉を挟ませる事なく言い切った。


「あ。ああ」


 信者達にご利益渡す時は色々制限つけないとなー。他人の物は入れられないみたいな感じで。

 この辺はあとでもう少し詰めよう。

 っていうか、先見の明があるのか。これも後利益に繋げるか? ……もうちょっと後でもいいかな? ここはもう少し考えよう。


「では次に酒の神、オルチさま。司るのは、酒とあと、悪酔いしないと、酒癖の悪さが治る。で宜しくお願いします。」

「ちょっと待てい! 最初は分かるが、それ以外はなんじゃ!? 無理を言うでない!」

「じゃあ、宴楽とか、宴饗とかならどうです?」

「なんじゃそれは」

「宴を開いて楽しみ打ち解ける事と、宴を開いて人をもてなす事です」

「それなら、出きるが、酒の席はそんなもんだろ? なんでわざわざ司るんじゃ?」

「商談を成功させるためです」

「商談?」

「そう、トキアカさまに商売繁盛を司ってもらうんです。商人の信者が増えるでしょう。嘘かホントか知りませんが、酒を呑みながら商談をすることもあるそうです。ここぞという時に美味い料理と美味い酒でもてなせば、良い結果が得られるとも言われています。まさにウチにピッタリなんですよ!」


 なんせ、家事の神と、音楽の神がいるからね! 宴の席だって、美と花と織物と工芸の神の力を借りれば迎賓館っすよ!


「そ、そうか」

「そうです。そんな中、酒癖の悪い奴が居て全てパーっなんてのは困るんです。最終的には酒癖の悪さが治るまでご利益の発展宜しくお願いします」


 無理だ駄目だと言ってもそこはやってもらうぜ。


「お、おう」

「次に、美の神、アリスティーさま」


 さって一番、怖いぞー。いや、どちらかと言うと後の方が怖いんだが……。


「アリスティーさまには、美と美容と健康と気品を司ってほしいと思います」

「……美容と健康というのは分かるけど、気品とは? それはわざわざ司るものなの?」

「司って欲しいです。うちにはもう一人美の神がいるので」

「アタシが悪いっていうのー!?」

「……それで?」


 ちらりと見て先を促す。


「あの方にもちろん美を司ってもらいます。ただ方向性的にやり過ぎて信者の皆さんが下品にならないよう、歯止めの部分が欲しいです。それを司るのはアリスティーさまの方が相応しいので」

「分かったわ……」

「ひ、ヒドイわぁぁ」


 ビオルマンさまが泣いているが今は無視。


「次に音楽の神、ミュークさま。ミュークさまには芸能を司って貰いたいんです」

「ゲイノー?」

「音楽や踊り、演技、娯楽性の強い芸と言いますか」

「芸の能力で、芸能?」

「そうそう! そうです!」

「うん! それなら全然問題ないよー」

「それは良かった、次に」

「ミュークには無理難題ないのかよ!」

「そうじゃそうじゃ!」

「いや、お二方? 俺は別に、無理難題を押し付けたいわけじゃないのよ? いやほんとに」

「じゅーぶん、無理難題だっての!」

「そうじゃそうじゃ!」

「……トキアカさまとオルチさまだったら、オルチさまだけ苦労しそうですね……」

「儂だけか……」

「いや、俺様だって今まで考えた事無いご利益だぜ? 苦労するに」

「しませんよ。商人がこぞって勝手にご利益あるって言い出しますから」

「ホントかよ!?」

「まぁ、そのためには多少頑張らないといけませんけどね。じゃ、次に行きますよ」


 もう邪魔する様子は無いな、よしよし。


「花の神クリスフラワーさま、司るのはまんま花、あと、草花でお願いします。そして草花って事で樹木じゃない、植物全般もお願いします。あと、心の回復もお願いします」

「ココロのカイフク~?」

「そうです。花を見たりしたら和むでしょ? それを突き詰める感じです」

「ん~? よくワカンナイけど、ワカッター」


 分かんないのに分かったのね。いいけどな。


「で、樹木の神、ジュリーンさまもそのまま、樹木を司ってください」

「力不足でスミマセン。信者獲得に貢献できるような力があれば良かったのですが」

「気にしすぎです。樹木が限定されてない分いくらでも取り返せますし、そう悲観する事もあるません。あと、途中になりましたが、植林も司ってください」

「植林? いいけど、必要かい?」

「念のためにお願いしたいです」

「まあ、構わないけど」

「で、次に武神のベロスさま」

「うむ」


 うーん。犬の体からどうやって声が出てるのだろうとか一瞬考えるな。


「守護神と名前を変えて、力を守りに特化するって事は出来ますか?」

「……すぐに可能とは言えぬが、心得た」

「ありがとうございます。では次に、レオソルンさま」

「おう!」

「……破壊神になってくださいませんか?」

「嫌だ!!」


 デスヨネー。

 みんなも驚いてるな。まあそうだよな。


「お前、何考えてるんだ!?」

「いや、俺がいう破壊神ってのは、困難の打破とか、悪い影響を与える人間関係を崩すとかそういうやつの事なんだけどね」

「だからってその名前はないわ」


 アリスティーさまが冷ややかな目で見ている。


「司るのはそれで構わぬが、ソレはどうにかならんのか!?」

「んー、でも浮かぶのがもう破魔とか、人間関係ってのを中心に置くと、縁結びとか……」

「破魔神でよろしく願いたい」

「ではそれで」


 流石の俺も本気で嫌がるのを名乗れとは言いませんよ。


「さっきも言いましたが、困難の打破とか、悪影響を破壊するとか、良い意味での武力行使と思ってください」

「うむ。ベロスと対になるような感じなのであろう?」

「ええ、そうですね」

「任されようぞ。守護よりもはるかにワレに向いているしな」


 すげぇホッとしてるよ。


「で、次に愛の神、ローズベリーさま」

「ハーレムだけは駄目だからね!」

「いいませんって」


 しつこいな。


「縁結び・良縁・愛・純愛・結婚・離婚の裁定を司ってくださいね」

「ちょ、ちょと待って! 最後のは納得がいかない!」

「多夫多妻の中、一夫一妻ってのはハードルが高いんです。離婚も認めないってのは、他の皆さんにも与える影響が凄いんですよ。っというか。結婚してみなきゃ分からないっていうのはいっぱいあるんですよ」


 聞くところによるとだけどな。俺結婚してないし。


「暴力振るうようになったとか、相手側の両親が合わなかったとか」

「そんなの愛の力で」

「暴力を振るわれても耐えろと?」


 言い募ろうとしたのを、言葉をかぶせて遮る。


「そ、それは相手側に理由が」

「無くても振るわれる事はあるんですよ。酒に酔ってとか、仕事のイライラとかをぶつけてきたりとか」

「愛する相手に!?」

「愛する相手だからこそ、なのかもしれませんよ。弱音を吐くという事の間違った使い方ですね。言葉の暴力ってのもありますし」

「うぅ…………。あるの?」


 しばし色々考えていたようだったが、ふと、何かに思い当たったのかそう尋ねてきた。


「……昔、引っ越していった友達の両親がそうだったようです」

「…………分かった」

「離婚に関しては表向きは伏せます。結婚しても飽きたらすぐ離婚すればいいって考え方で入られても迷惑なので」


 それにもしかしたら他の教徒の離婚についての調停なんかもあるかもしれないし。


「うん。お願いしたい。ありがとう」

「礼は不要ですよ。では次に虫の神、アレキトンダーさま」

「オウ」


 緊張した様子だな。というか、これは神っていうか妖精……。

 アレキトンダーさまを思わずまじまじと見ているとビクビクと、なんだ? と問い返されてしまった。


「アレキトンダーさまは……亜人になるんですか?」

「ソトミは、そうナル」


 そとみ? 外身って意味か? よく分からんが、面白いな。なんかの虫を擬人化させたような……。あ、確かに虫っていうよりも虫をコンセプトにした鎧を着ている感じっぽい。そして羽は蝶だし。そういう意味で、ソトミ?


「ふーん……。で、流石に虫全般の守護は無理ですよ?」

「ワガハイでもソレハ分かる。ミナハイにもメイワクはかけられぬ」


 ミナハイ? みんなって意味か?


「じゃあ、益虫の守護。害虫の駆除」

「ジョキョ!」

「……害虫の除去。あとは……子宝とか子孫繁栄ってのもあるんですけど、そっちはどうします?」


 虫、いっぱい増えるよね。ネズミより増えるよね。そういう意味では子孫繁栄ってのはありなんだけど、こんなに神々がいるのに、それを司るのが虫かって思うと……。


「ソレハいらぬ。メリーマムルにユズル」

「まあ! ありがとうございます!」


 うわぁ。嬉しそう。まあ、そうだろうな。俺もその方がありがたいので助かります。


「じゃあ、あとは繁栄、富と富をため込むっていうのもお願いします」

「ン? それは虫とカンケイあるのか?」

「有ります」

「タトエバ?」

「まずは蜂。蜂蜜です。あと、蚕。絹糸が取れます。うちは織物の神がいるので特にありがたいです。繁栄は色んな虫の巣が広がっていく様子からですね」

「……ウムウ……。ハンエイはわかった……。蜂蜜はかまわぬが、蚕は……」

「では、蚕以外で絹のような手触りの糸を出す虫を探しましょうか」

「……ウヌ。ワガハイ、ガンバる」

「えー次に、母性の神、メリーマムルさま」


 っていうか流石に二十もいると大変だな……。


「はいっ!」


 うっわー。ホントうれしそー……。信者取れそうになかったもんねー……。


「子供、妊婦、赤子の守護、あと子宝、それから、授乳、そして慈愛ですかね」


 慈愛は大事。俺のためにも大事。


「了解です!」


 あ、すんなり受け入れてくれた良かった。

 まあ、他に神がいないもんな。やりたい放題出来るもんな。なら。


「じゃあ、安産もつけましょうか」

「良いわね!」


 否定しないって事はやっぱり出来るのか。なら、女性の信徒は問題無く獲得できそうだな。なんせ、美の神が二柱いるも居るし、その他にも女性向けの神が多いんだもん、うち。ただ強力になりすぎるからなぁ……。信者、増えれば良いってもんでもないし……。安産のお守りとか作って販売くらいでいいかな。信者獲得しすぎて他の方々に睨まれるのも嫌だし。ラブ・アンド・ピースで行きましょうよ。


「じゃあ次、家事の神、ナベーナさま。そのまま家事の神でお願いします」

「はい」

「で、火の神、サラマさま」


 そこで何故か、ナベーナさまからもう終わり!? との声が……。いや、だって特に浮かばなかったんだもん。というか無理矢理ご利益を付けたいわけじゃ無いんだけどね……。


「そのまま火の神で、カマドの神もお願いします」

「かまわねっけどー……。カマドはナベーナがいいんっでね?」


 ちょっともの悲しそうなナベーナさまを見ながらサラマさまは言う。


「俺も一瞬そう思ったんですけど。火の神が居るのなら火の神が司るべきかと」

「ふーん。ま、いっけどー」

「あと、火災防止とか消火とかもできますか?」

「防止はオッケーだっね」

「では防止で」

「次は……」


 ……あかん、ナベーナさまの視線が痛い。


「あの、ナベーナさま」

「頑張るから! あたしほんとーに頑張るから!!」

「いや、期待してないからご利益を付けなかったわけじゃないんですよ。家庭料理とプロの料理ってのはやっぱり違うし、かといって料理一本にしぼられるよりは家事とか広い意味での方がありがたいし。…………あー、なら円満ってのはどうです? 家庭円満とか」

「それで!!」


 いいのか。……男の胃袋は料理で掴めって言うしなぁ……。女はどうなんだろう。甘み物か? ってことはやっぱり胃か? ……へたに浮気するよりは、奥さん大事にする方がましだよな。だって、美の女神二柱分の加護あるもんな……。……あれ? 武神二人もあるから、うちの信者、男ならかっこよくて、守ってくれて、家事も出来てでモテモテでじゃないか? 絶対育メンにもなれるぞ。うわーすげー。男も女も隙がねぇー。チートだチート。うちの信者はチートになれる。やっぱり信者取る時は気をつけよう……。っていうかこれ、俺が信者入れるかどうかよりも、神様方に決めて貰った方がよくね? よしそうしよう。


「他には? 他にない!?」


 なんでそんな一生懸命なんだろ……? 他にって言われてもな。


「じゃあ、発明とか発想、発想の転換ってのはどうです?」

「……それ、家事と関係ある?」

「俺、ナベーナさまには料理とかに関しては色々新しい料理を作って貰いたいんですよ。で、良い案とか発想とかって、会議とかよりも、家で浮かぶことが多いとも聞くんで」


 会議室で会議二時間やるよりは、風呂入ったりトイレ入ったり、いっそ布団の中で考えた方がよっぽど良い案が浮かぶ! って駿兄貴言ってたし。


「うーん。発明は無理かも。発想や発想の転換っていうのは大丈夫かな?」

「じゃあ、それで。でも、その二つは大丈夫なのに、発明は無理なんですか?」


 それはちょっと意外。


「発明はどちらかというと、魔道具系寄りっぽいかな。家で思いつくのって、日常のものがほとんどでしょ? それを思いついたとしても実際に作るのは家じゃなくて、作業場とか工場とか」

「ああ、なるほど」


 お母さん達が作るアイディアグッズはそれこそ身の回りにあるものを工作してだけど、車とかテレビとかでかい物ほど、専用の道具が必要になってきて、って感じで神様の感覚的にはずれるんだろうな。それはもう家ではなくて、職場だろう、と。


「じゃあ、発想と発想の転換もお願いします」

「ええ!」


 ホッとしたような感じ。

 そんな神様に俺、ちょっと違和感。なんで?


「で、次は水の女神、アキュアさま。そのまま水を司って貰えればそれでいいです」

「それで終わり!?」

「え? ええ、まあ」

「他には無いの!?」


 いや、なんでそんなに必死なんですか!?


「いや、特には……」

「そ、そんな! 見捨てないで!!」

 ひしっと俺の服を捕まえて泣く少女。

「は?」

「頑張るから! 本当に頑張るから!!」


 えっと……。


「もしかして、何か勘違いしてません?」

「だって、あたしサラマよりもさらに力弱いし! ただの水しか出せないし! 攻撃魔法にもなんないし」


 わっと泣き出した。


「……ただの水で大丈夫ですよ」

「うそだー!!」

「本当ですって。アキュアさまの水は飲み水になるほどの綺麗でしょ?」

「それぐらいしか出来ないの!」

「オルチさま、酒造りには綺麗な水がいっぱい必要ですよね?」

「必要じゃな」

「お産にだって清潔な水は必要よ~」


 俺の言葉にオルチさまは即答して、メリーマムルさまが俺の意図を理解してすぐにそう言ってくれた。


「そうですよ! わたしよりも全然いいじゃないですか!!」


 と声を荒げたのは、星空の女神オーロリア。


「わたしなんて、わたしなんて、星空しか出せないんですよ~!!」


 と、こっちも泣き出した。

 ……なんか神様方との熱の差を感じるのだが……。


「どうせみんなわたしを置いてさっさといっちゃうんですー!!」

「あ! そういう事!」


 ナベーナさまが必死だったのもそれか。


「俺、『大神になったから抜ける』っていうのは基本許しませんよ?」


 そう言うとアキュアさまもオーロリアさまも驚いて俺を見上げた。


「あれ? みんなそんな考えなんすか? それはダメすっよ。全員一蓮托生です。基本、全員が上位神になるまで、互いに面倒見合うのがルールです。あと、創世神となって抜けたいのであれば、後輩の神が育っている事が出て行く条件です」

「後輩の神?」


 トキアカさまが不思議そうに聞き返した。


「そうです。そもそもこの神育成プロジェクト、一柱だけじゃ絶対創世神にならないと思います」

「どうして!?」


 アキュアさまが本気で驚いていた。もしかして創世神になりたいのだろうか?


「アリスティーさま、お尋ねします。中位神から上位神になるのはわりと早かったと思いますが、上位神から大神になるのにはそうとう苦労しますよね?」

「……大神になれなかったわたくしに聞くの? 酷い男ね」


 少し疲れたようにため息をついて、顔を少しだけ下げた。


「ええ、そうよ。中位神になったあとはわりと順調だったわ。でもそこから先はまるで……見えない壁に遮られるように進めなくなったわ」

「それだけ大神になるというのは難しいのかぁ……」

「トキアカさま、それは違います。これ以上信者が増えないように教祖がコントロールしてたんですよ」


 その言葉にアリスティーさまが顔を上げて、俺をまじまじと見た。


「何故!?」

「アリスティーさまが大神になり、この世界から去って行ったら、アリスティー教はどうなります?」

「…………っ!!」

「もしかしたら、そのまま加護が生きているのかもしれませんが、失う可能性の方が高そうです。そんな危険、冒せませんよ。この世界に残っている多くの神が今、その状態なんじゃないんですか? だからこんなにも同じ神が溢れている」

「……そう……。そうかも知れないわね……」


 アリスティーさまは苦笑を一つして、みんなを見て、俺を見た。


「確かに、上位神になったあとは、まるで自由を失ったかのようだったわ。何か有っては大変だと言われて……」


 シンと空気が重くなる。


「と、いうわけで、不安にならなくても大丈夫です。みんな置いてったりしませんよ。後輩の神様についても、今すぐじゃ無いので」


 こくりとみんな頷いてくれた。まあ、自分が生き残れるかどうかも難しいので、そんな事言われてもって気分なのだろう。


「アキュアさまも心配せず、水を司ってくださいね。何か他に司って欲しい時が来たらお願いにいきますんで。っていうかまとめて二十柱も考える事になったんで、俺は俺でいっぱいいっぱいなんですよ!」

「だって、桐生はそんな風にみえないんだものぉー!」

「オーロリアさまもです。俺は今はそのまま星空を司ってもらうつもりです。でも心配しないでください」

「は、はい~!」

「では、お二方は終えたという事で、次は機織りの女神ヒコヒメナさま」


 長いな。俺自身で思うが長いな! いつまで説明せねばならんのか! ……しまった紙か何かにかいて渡せば良かったのかもしれない……。

 いや、やっぱりそれはそれで面倒だな。


「機織りと糸、染色、縫製などを司ってください」

「うーん…………縫製かぁ。染色もちょっと……」

「あれ? 出来ません」

「力が強くなれば大丈夫だと思うけど……」

「あー……俺の前が居た分、難しいんですね」

「ごめんなさい」

「いえ、問題はないです」

「あたし、縫製出来るよ~」

「止めてよ! 奪わないで!!」


 ナベーナさまの言葉にヒコヒメナさまが本気で声を上げた。


「ケンカするの止めてくださーい、俺、すでにもう十分疲れてきましたからね~」


 二人は同時に口を閉ざした。ありがとうございます。


「鉱物の神、キニオンさま。そのまま鉱物で」

「わかりました。……ミーはそれだけですか?」

「今の所」

「そうですか」

「工芸の神、ラデンさま。同じく工芸を司ってください」

「了解だ」

「次に、美の神、ビオルマンさま」

「ねぇ? だんだん投げやりになってきていない?」


 自分の番になってビオルマンさまは不服そうに言ってきた。


「気のせいですよ。すぐに思い浮かばなかった方のほうが多いんです。とにかく今日中に宗教名も決めて、教会も新しくしなきゃいけないんですから。それにちょっとぐらい後日に追加してもいいでしょ?」

「……分かったわよ。そんなに怒るんじゃないわよ」

「不機嫌になっているだけで怒ってはいません」

「一緒よ」

「全然違いますよ。とにかく話を進めます。ビオルマンさまは、芸術と、美的感覚と、変身、着飾るを司ってもらいたいと」

「待ちなさい」


 来たー!!

 予想してたけど、アリスティーさまからのちょっと待ったコール!


「やっだー! アタシが美的感覚と芸術~。オホホホホ。アリスティーに勝ったわー!」


 ソコ! 煽るな!!


「どういうこと! 一度落ちぶれた者は美を司る資格が無いというの!?」

「全然違います!」


 うわぁぁアリスティーさま、涙目なってんじゃーん!

 っていうか、きちんと俺、アリスティーさまに「美」を司るっていったじゃーん!


「そうよ! 美を司る資格がないということよ! オホホホホホホホホ!」

「違うってイッテマスヨネ?」


 ちょっと黙っててくれませんかねぇ。そこのオネェ。


「……桐生チャン、目が怖いワ」


 目をそらして言うぐらいなら初めから黙って欲しいんすけどね、本当に。


「アリスティーさまが司りたいのは内面の美しさ。ビオルマンさまが司りたいのは外面なんですよ」

「ちょっと、言い方!」


 本当の事でしょうが。


「美的感覚とかは外付けとでもいいますか、流行があるわけで…………だからビオルマンさまの方が向いていて………………すみません。泣かれても無理です……」


 むっちゃ泣きそうなんだけど、ここは、ごめんなさい。

 頭を下げるとアリスティーさまは、大変美しい涙を一筋流して、顔をそむけてしまいました。

 心が痛い。そして、ティナさんに嫌われたらどうしよう……。


「お前、心強いなー」


 トキアカさま、感心しない。むしろ、俺だって泣きそうですよ。


「トイレの神、トエルさま。今まで通りでお願いします」


 俺がそうお願いするとかの老神はゆっくりと笑顔で頷いてくれた。

 とりあえず、終わった。長かった!


「では次に、新しい宗教の名前ですが、皆様の名前を使うわけにはいかないので、何かあります?」


 ……あれ? なんでみんなそんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔して俺を見てるの?


「え? だって、桐生教でしょ?」

「はぁ!? 嫌ですよ、そんなこっぱずかしいもの!」

「いや、だって、お前俺達の司るもん、どんどん決めてったじゃん」

「それはそうですが……って、それってそんな重要な事なんですか?」

「俺達が自分の名前を使って宗教名を決めるのは、司るのを自分で決めてるからだ。で、俺達のものをお前が決めただろ? だから、桐生教になるんだ」

「……音葉教にはなりませんか?」

「ダメね」


 アリスティーさまがばっさりと拒否なされた。仕返しなのだろうか……。


「じゃあ、キリュウではなく、キリュー教では?」


 ほんのちょっとした違いだけど、それでも心の安定のために。


「それなら良いんじゃないかの。名前を使っておるし」


 あ、音葉がダメだったのは名字だったからなのか。


「じゃあ、キリュー教で……」


 なんだろう。自意識過剰っぽくってやだなぁ。自分の名前の宗教団体は……。


「とりあえず、さっきもいいましたが、基本は一蓮托生です。出て行くのなら後輩を育ててからにしてくださいね。あと、神様同士は仲良くお願いします。後輩を連れてくるにしても、先輩を敬うような方でお願いします。あと、布教活動は禁止です。布教は俺達がします。別に大神になるのを防ぐためじゃありません。ただ、神様っぽくないので止めてくださいってだけです。俺はあなた方を籠に押し込める気はありません。信者の人と仲良くする事も止めません。信者以外の人と仲良くするのも止めません。他の信者の方だって全然構いません。贔屓も構いません。ただ冷遇はダメです。神として人々の傍に寄り添っている。そんな感じでお願いします」


 俺の言葉にみんなは少し意外そうだった。


「俺はキリュー教を支援系宗教にしていくつもりです。その活動の一つとして、俺は冒険者ギルドを作りたいんです」


 この世界、神様とか魔法とか魔法道具店とかはあるけど、冒険者ギルドは無いんだよね。戦闘系の教団が狩ってきたモンスター素材とかを、魔法道具店とか、鍛冶教団とかに売ってはいるんだけど、そういう横繋がりって中位以上になんないと無いんだ。まあ彼らからすると、下位の頃にそういうパイプを作れって事なんだろうけど。

 それこそ、くじ引きで変なのが当たった神様のトコは無理がある。そんなトコと仲良くするぐらいなら別の所と仲良くするってなるからな。

 俺はとりあえず、冒険者ギルドとしてやりたい事を伝えた。

 皆不可解そうだったけど。そんな事するよりも、信者を集めるのが先じゃないかっていう風にも見えたけど。


「とりあえず、教会を一つにするので、区画ゲートの所まで退避おねがいしまーす」


 促され、みんなは大人しく教会から出て行く。俺も教会を出ると、教会そのものを異空間に収納し、区画の端から全部収納していく。

 建物を建物のまんま収納出来るんだ。すげぇよな~。引っ越しとか超楽じゃね? あ、新しい家が良いってなるとなんともならないけど。

 ここ、第5区画には二十の教会があった。その分、更地にしたら凄い広さだ。教会一つの大きさはそうだな、運動場、体育館、プールの全施設が、別の建物になっている小学校並みの広さって考えて貰えたらいいんじゃないかな。

 あいまいだって? 東京ドーム何個分とか言われても俺わっかんないし。ヘクタールとか言われてもわかんねーもん。とにかく庭付きでそんだけ広いって思っててくれらばそれでいいんだよ。そんなのが道を挟んで二十個有ると考えれば、それなりの広さだって分かるだろ?



 更地になった第5区画。

 俺も入り口の所に戻り(テレポート超楽!)ただっぴろい敷地面積を見つめる。

 どんなのを作ろうかな。って思いながら道に使われていた質の悪いレンガを風化させ、その下にあった土と混ぜていく。木や花も植えるから土は良い土にしたいよなぁ。

 ジュリーンさまとトキアカさまの力を使えば腐葉土だっていくらでも作れちゃうし。そもそもトルクさまの力を使えば堆肥だっていくらでも出せる。

 腐葉土ってさ、臭いもんだと思ってたんだけど、それって安物だったかららしい。

 きちんと醗酵した土って臭くないんだなぁ。堆肥もそうなんだけどさ。

 というわけで、外壁に平行に、街路樹作って、その周りに椅子置いてもいいかもなぁ。あ、花見の時期には花見もしたい。

 やりたい事がどんどん浮かんでくる。

 前後左右に出入り口つけたりして……。冒険者ギルトと教会の受付はやっぱ中央か? いや、でもそうすると奥の店が困る訳か? いや、奥は公園にして、子供達が遊べるようにしたいから……、奥は親子連れやカップルが喜びそうな店をいれるというのも手、か。

 とりあえず、こんな感じ、か?

 みんなの力を使い、作り上げたのは三階建てのビルだ。屋上にはみんなの像が建っていて、ゆっくりと回る仕組みになっている。順番で優劣の話になっても困るし。

 建物の前後はスペースを空けてある。上を見上げて貰うためだ。もっとも後ろの方に関しては花の綺麗な木を植えたので、神像を見るというよりも、花見だろうな。そして最終的には団子になるはずだ。

 街路樹の周りにはベンチを置き、等間隔に神像を配置。その周りには季節の花が咲くようにしてあり、神像は、神々の名前と、簡易の司るものが書いてある。家事の神とか美の神とか。ちなみに、人が歩く場所は、一つ目は芝生。そしてもう一つ目は大理石である! 高い物かと思ったら安い物扱いだった。なんかこの世界、武器とか防具とかに使う鉱石とかは無茶苦茶高いけど、それ以外はわりと安物扱いだ。魔力が通る通らない、もしくは魔力に耐性があるとかだとそれもむちゃくちゃ高いんだけどな。

 そして三階建てのビルはガラスを贅沢に使っております。ちなみに強化ガラスです。ビルの壁もただの壁じゃありません。美しい模様や彫刻があるのです。

 一歩間違えれば成金趣味になりかねないけど! 気品ある!!

 ありがとうアリスティーさま!!

 心の中でそう叫ぶ。ビオルマンさまではないことは確かだろう。

 夜になっても目立つよう、そして夜も問題無く歩けるよう、あちこちにかがり火が置いてあったり、おしゃれな石燈(洋風)だってある。冒険者ギルドは軌道に乗ったら二十四時間営業だろうし。

 俺は出来上がりを見上げて、ぽつりと呟く。


「……建築の神欲しいなぁ……」





一つ前の後書きに、神々の名前はこんな感じで決めましたというのを加筆しました。誰が何を司ってるのかわかりにくい! って、人にもちょっとだけ分かりやすくなったかも?


ブクマありがとうございます


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