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神に選ばれた俺は  作者: 瀬田 冬夏
第1章 ギルド
24/36

第14話 ここから始まる。

今日は久しぶりにちょっと長いかもです。



姉王女の愛称をメリーからメアに変えました。

 

 創世神ゴルドーガルゼフさまが連れてきた王室の子息子女は結局、三人がキリュー教に入る事となった。

 第五王子オールシャリストに、第六王女メリアーナ、第八王女エスティー。

 とりあえず、第五王子だけは長いので、オートと呼ぶか、リストと呼ぶか、オールと呼ぶか悩む。


「意表をついて、シャトーとかはどうだ?」

「……シャトー……。あれって、会社名?」


 案を出してきた千影の言葉に俺は首を傾げる。シャトーワインとか聞き覚えがあるんだが、会社名? 酒蔵? それとも地名?


「地名じゃなかったか?」

「なんで、城なんて呼ばれないといけないんですか」


 そこに本人のセリフが入って来て、なるほど、城なのかと俺と千影は自動翻訳に内心相づちを打つ。せっかくだからこの自動翻訳、日本でも活躍してくれないだろうかって本気で思う。

 しかし、よくツッコミを入れられたな。この王子。思ったよりも根性があるのかも。


 俺は改めて新しく入った、王子と王女、そして、前々から保留となっていた、千影や駿兄貴、本人の希望により長岡さんも含めた六人を見た。

 力を注いだ順番は、千影、兄貴、長岡さん、王子、姉王女、妹王女だ。

 千影は俺らと同じくぶっ倒れた。十五分ほど前に起きた所だ。

 兄貴達からは、ぶっ倒れなかったが、倒れた方が楽だったんじゃないかというくらい、ずっと青い顔をしている。むしろ土色っぽい……?

 六番目の信徒となる兄貴達からは十分に力が落ちている。……キリュー教的に言えば……。

 ただ他の教会からしたら、これやっぱ異常だよなぁ。


「で、なんて呼ばれたい?」

「普通に呼んで貰うのは駄目なんですか?」

「長いから却下。それに一応この国の王子なんだろ?」

「一応じゃありません。れっきとした王子です」

「ギルド利用者に余計な負担をかける気はないのよ俺。名前で身分がバレて余計な騒ぎも嫌だし」

「……では、リストで」

「あ、わたくしはメアです」

「エティです」


 俺の視線を受けて、王女二人も自分の愛称を教えてくれた。

 

「キリュー教の教え、及び、禁止・注意事項は無事インストールされてますか?」


 尋ねると六人は肯いてくれる。


「では、何か質問はありますか?」


 尋ねるとリストが手を上げた。


「あの、禁止事項に触れるとは思うのですが、今なら、質問してもいいと思ったから質問したいのですが、良いですか?」

「どうぞ」

「……異世界人というのは……本当ですか?」


 やっぱり予想通りの質問か。


「ええ、そうですよ。キリュー教の半分は異世界人ですね。興味があるのならいつかお連れしますよ」


 その言葉に三人は驚きと期待を表情に乗せた。


「ま、いつかなんてあっという間に来ると思いますけどね。なんせ、日本でもそれらしく宗教活動しなきゃなりませんし。…………ミュークさまに歌って貰いますか?」

「人手が足らんぞ」

「もちろんバイトを雇いますって」

「金がかかるだろうが。金の流れが明らかに異質なんだ。目を付けられるのは困る。正直今だって十分に危ないだろうが」


 青い顔したまま、駿兄貴が注意してくる。


「……動画は痛かったなぁ……」

 

 思わず唸る。あれのおかげでミュークさまを筆頭にみんなの力は格段に増えたけど、活動がしにくくなったな……。


「でも、知名度は上がったけど、知名度が上がっただけっぽいんですよね。神として信仰して貰えてないっていうよりも信じてないっていうのがたぶん一番の理由だと思うんですけど」

「……おい、桐生? なんでさっきから俺に対してもそんなしゃべり方してるんだ?」

「いや、一応キリュー教の教祖としてしゃべってるので」

「止めろ、気持ち悪い。ホント、気持ち悪いただでさえ気持ち悪いのに……」

「……兄貴ヒデェ」

「俺も同意見だな」

「……」


 千影。お前もか。


「はいはい、分かりましたよ。ったくもー。新人さんがいるからって気を遣ったのに!」

「なら最初から気を遣え。途中からだと変な感じ満載だし、それに、どうせずっと続かず、明日にはいつも通りなら最初っからいつも通りにしてろ。じゃないと後でその新人がびっくりするんだから」

「へいへい。いつも通りしますよ。でね、アニキィ。日本で宗教活動しないといつまでも法人化出来ないんですよぉ、それはそれで困るんですよぉ。何か良い案くださいよぉ、アニキ~」

「桐生」


 やべ、調子乗った。駿兄貴の目がめっさ冷たい!

いかにもな、下っ端風にやったらお気に召さなかったようだ。


「普段通りにしろといったが、誰も茶化せとは言ってない」

「はい、すみません。ごめんなさい」


 とりあえず、謝る。まずは謝る。コレ大事。


「じゃあ真面目にするとして。活動は日本でもします。これは決定事項。日本人のメンバーは日本で出来そうな活動を考えて。今度は宗教的な方で」

「先輩、イベントで四コマ漫画を売ろうって話、どうしましょう?」

「悪ぃ、いったん保留。千影もそっちで軌道修正よろしく」

「分かった」

「長岡さんは今まで通り、バーの方をメインでお願いします。で、リストは長岡さんから色々技術と知識、その他諸々教えて貰って。フトクリムでは君がバー担当者だから」

「え!?」

「俺と千影とナデコはバーは担当できないの。ラックは成人したばっかりだし、ティナは教会のとりまとめしなきゃならんし。下戸じゃないんだろ? 拒否権はないと思え」

「……あの、城でもいくつか担当している仕事があるんですが……」

「両立してくれ」


 俺達だって学生と両立してる。

 ゴルドーガルゼフさまは働き手として連れてきたのだから、働いて貰う。


「……はい」

「メアとエティはギルドの裏方から手伝い入って。教育係は……ラック頼む」

「僕がですか?」

「ナデコがいる時はナデコでもいいけどな」

「ああ、そうですね」


 平日は俺達はいない事を思い出して、ラックは肯た。

 王女二人もラックに目礼している。


「じゃあ、質問の続き、ある?」

「はい。あの教祖様」

「桐生。教祖とは呼ばないでくれ」

「あ、はい。失礼致しました。桐生様、あの住み込みでしょうか?」

「住み込みでも城に戻っても構わないかな。どのみち皆さんはすぐにこっちに移り住むってわけにはいかないでしょうし。仕事があるなら仕事してくれて構わないから。ただ、フトクリムでの活動は主に三人が主体になると思ってくれ。なので、こっちの仕事もなるべく早く覚えて欲しい」

「「「はい」」」


 三人は勢いよく返事をしてくれた。

 あとは現場を見て貰うって事でティナさんとナデコに引き渡して、動ける人間はすぐに仕事に戻り、もうしばらく安静にしてないとまずそうな人間はその場で放置となった。


 俺はマジクさまとアテムさまにアイテム袋と数日分の衣服、携帯電話、バリアネックレスとブレスレット、転移の指輪などを渡していく。

 あと、教会を回収し、将来的には研究施設にしようとそれっぽい建物を作った。


「桐生……凄い」

「……一瞬、凄い」

「ありがとうございます」


 お二方は新しくなった建物に興味津々だった。

 あとで、薬学系の機材買って設置せねば。


「ここ……。好きに使っていいのか……?」

「……本当に? ……嘘じゃない?」

「嘘じゃないですよ。上のフロアには薬草園も作ってありますから、好きに使ってください」

「薬草園……。桐生……。ボク達は足手まとい」

「……なのに、なんで? ……そんなによくしてくれる?」

「キリュー教にとっては、足手まといだなんて認識がないからですよ。そんなに卑屈にならなくても大丈夫ですから」


 そう告げるとお二方は俺を見て、それから本当に子供らしい笑顔をみせて大きく肯いた。


「それと、俺達しばらくは忙しいと思うので」

「うん……大丈夫」

「……出された課題、やってる」

「助かります」


 そう二人に感謝を述べて、俺達はギルドに戻る。

 ギルト内はわりと静かだ。

 トレインの前は忙しかったが、トレイン中となるとこんなものなんだろう。

 新人達には程よいかもな。

 各部署回って問題が無いか確認し、自室に戻る。


 そこで俺は電池が切れたかのようにソファーに倒れ込む。


 疲れた……。


 やることはいっぱいあるけど、駄目だ。

 っていうか、キツイ。

 信徒が増えて、神々の力が増して、俺にまで影響が出始めた……。

 思っていた以上にデカい。力、急激に増しすぎじゃないだろうか……。

 ああ、それにしても、明日はあちこち回って、教会作って、

                            ……頭痛い。

 現地の人雇って。

                   気持ち悪い。

 行商人の事聞いて、

                    キツイ。

 値段すりあわせして。

                        吐きそう……。


 考えをまとめようとしてもまとまらない。

 ホント、これだったらぶっ倒れる方が楽だ……。

 

 神々の多くは力が上がった……。でも、格が上がらない……。

 聞いた事無いパターンだって言ってた……。

 ああ、今度は獣人か妖獣を信徒にいれなくては……。

 明日は教会を作って……。

 冬にはツチノさまの力を……。

 駄目だ。

 自分が今何を考えているのか分からなくなってきた……。

 断片的な考えだけが回る。

 キツイ。痛い。気持ち悪い。


「桐生さん、大丈夫ですか?」


 労る声が聞こえて顔を向けるとティナさんがいた。

 いつの間に?

 なんで、ここに?


「……何か……問題が、起きましたか?」

「いえ、大丈夫です。自室でお仕事みたいだったので、お茶をと思いまして。用意してきたんです。何度かお声かけしても返事が無かったので……」

「……ああ……。何も、ないなら、良かった。気づかないですみません……」

「いえ。勝手に入ってすみません」

「いえ、大丈夫、問題ないです」


 回らない頭でツラツラと答える。

 条件反射だけで会話している気がする。

 気のない相づちみたいな?


「やはり、キツいんですね。力が一気に上がったはずだから、桐生さんにはその影響が出ているはずだと」


 ティナさんが俺の様子を見に来てくれた理由を口にする。

 俺の額に手を当てて、心配そうに覗き込んでくる。

 デジャブ。

 なんだっけ。こんな表情前にも見たことある……。

 ええと?


「……ティナさん」

「はい?」

「……膝、かしてください……」


 初めて会った時の事を思い出したら、なんとなくそんな事を言っていた。

 ティナさんは一瞬きょとんとしていたが、笑ってくれた。


「喜んで」


 そう言ってくれたので俺はのそのそと体を起こす。ティナさんが出来たスペースに座ったのを見て、俺はそこに倒れ込む。


 柔らかい。暖かい。良い匂い。


「少し休んでください。無理しすぎです」


 頭を撫でてくれる手が気持ちいい。

 その気持ち良さだけが頭を占める。

 やらなきゃいけない事も、考えなきゃいけない事も全部淡雪のように溶けていく。

 俺の意識もいつの間にか溶け落ちていた。



 その後、起き出した俺は頭もすっきりしていたし、気持ち悪さも消えていた。

 ティナさんにお礼を言って、用意してくれたお茶を一緒に飲んだ。

 ほんわかーっとしたムードも、俺がティナさんに力を譲ったら消えたけどな。

 でも、今度は俺が膝枕したぜ! 眠るティナさんにいたずらしたい気持ちを必死に抑えたけどな!

 む、胸とか唇とか、触りたくなる気持ちを必死に抑えたんだ! 誰か褒めてくれっ。


 起きたティナさんに今度は俺がお茶を用意した。

 やっぱりキツイよねぇ。なんて話をしながら。

 楽しくて嬉しい息抜きをした。


 明日はラックとナデコがグロッキーになる番だろう。どうにもティナさんがギリぶっ倒れるくらいで、次からは倒れないみたいだから、今日の五人のようになると思われる。

 今日の六人はもうちょっとしてから、だなぁ。流石に昨日の今日では可哀想だし……。

 そんな事を考えながら俺は気持ちを切り替えて、残りの仕事を終わらせるために机へと向かった。




 今日は、冒険者ギルド、グランドオープンの日。

 ギルドとキリュー教の大々的な宣伝日だ。

 人の入りはやっぱりちょっと少ないが、チラシを配り、アドバルーンも上げたからか、いつもよりは断然多い。

 そもそも今日はギルド自体はそんなに多くなくてもいんだけどな。むしろ、一緒に入っている協賛店、教会がお披露目できればいいや、くらいな気分である。


「店の方はどうです?」

「悪くは無いぞ。むしろ良い方だな。ガラガラ回すんだって言って、みんなまとめてあちこちで大量買いだ。よくもまぁ、あんなギャンブル精神をくすぐる物を思いつくもんだ」

「あははは。値段を設定するの難しかったですよ。高すぎても駄目だし、安すぎても駄目だし」

「ポーション売ってるところは早くも品切れになりそうだって言ってたな」

「……早すぎですね」

「本当にな」


 そんなやりとりをあちこちの店番とする。

 見て回った感じは大きな問題は起きてないな。


「桐生」


 呼ばれて振り向くとオルチさまが居た。


「商人ギルドの方がそろそろ登録する人間で溢れかえりそうだぞ」

「あれ? わりと早かったですね」

「よく言う。客寄せにって屋台にリストを使ったんだろ?」

「俺じゃないですよ。俺はナデコだけに頼んだんです。リストが自ら志願したんですよ。どうも、料理をするのが楽しいみたいで」

「ああ……。今までの生活で触れる事はなかっただろうからなぁ……」

「でも、表にリストが出てるってだけで、商人がこんなすぐに並ぶとは思わなかったな」

「創世神の神殿があるからのぉ。あれが後押しになっているようだぞ。ここはデカいし、目立つ。その上で四階五階は出店舗募集中。王家にも創世神にも認められているのならこんな良い場所はない。今頃取り合いだろうなぁ」

「初めは全然興味ないって感じだったのに。現金だなあ」

「そんなもんじゃろ」


 オルチさまの言葉に俺は苦笑する。否定出来ないから。


「のう、桐生。お主の作りたかったギルドは作れそうか?」

「そうですね、なんとかなりそうな気はします」

「……たしか『異世界なのにギルドがないのが許せない』じゃったか?」

「ええ、まぁ」

「……じゃが、今は最初の頃よりもずっと無理をしているな。撫子の事があるからか?」

「…………」


 オルチさまの言葉に俺はすぐには答えられなかった。


「……そう……ですね。無いとは言えません。ナデコ……、撫子は完全に、俺のせいでこっちに来たようなもんですから」


 俺達が行き来しているせいで出来てしまった『穴』に落ちて、ナデコはこの世界にやってきた。

 買い出し中のティナさんが運良く見つけたから良かった。でもそうじゃなかった場合、ナデコはもしかしたら大きな『傷』を負ったかも知れないし、命も危うかったのかも知れない。

 そういう人間がこれからも増える可能性が高い。


「もし、次の人間が現れた時、偶然通りかかった者がキリュー教の身内だと思って、その人をギルドに連れてきてくれるかも知れない。そういう思いが少しでも働けば良いって思ってはいます」

「薄利多売の根本的な理由はそこか?」

「一応商品は限定はしてますよ?」

「別に儂らに言い訳などいらん。他の教会との軋轢なんて誰も気にしておらん、気にしているのは人間だけだ。好きにすればいい。キリュー教はお前の物だ。儂らは共にお前と歩み、旅立つ。馬鹿騒ぎをしながらな」


 ニカッと笑うオルチさまに俺も小さく笑う。


「同じ旅路なら、楽しい方がいいですもんね」

「そうじゃそうじゃ。教会の一室に閉じ込められるよりも、飲んで騒いで馬鹿騒ぎしている方がええ」


 とても楽しそうに言ったあと、急に真顔になって俺を見上げてくる。


「ただ、もぉちょっと、我が儘を加減して貰えるとありがたいんじゃがなぁ」

「それについてはまぁ、なんと言いますか、一応気をつけます?」

「改める気無しじゃな、コイツ。まぁ、ええわい。頑張った分だけ酒に合うつまみをナベーナが用意してくれると思えば」

「あー……。ナベーナさま、すっごく楽しそうでしたもんね。分霊≪わけみたま≫できるようになったら料理の神として頑張って貰おうかな」

「そういやミュークはどうした? あれ、ネットのおかげで、分霊出来るくらになったのだろ? 分霊の方は音楽の神に戻すのか?」

「いや、それしちゃうと出回ってる物にすら、さらに影響が出るんじゃないかって話で今、そのままなんですよ」


 そんな会話をしながら俺はもう一度外を眺めた。

 残念ながら、みんなではないが、それでも多くの人は楽しそうに笑っている。

 うらやましいって思った。


「オルチさま」

「ん?」

「五年」

「ん? 五年?」

「五年でオルチさま達を大神にしてみせますから」

「言い切りおったな」

「ええ。ですので、これからも色々よろしくお願いします」

「…………十年でもええぞ、桐生」

「いえいえ、遠慮なさらず」

「遠慮じゃないが……。……ええか。何かしら意志を固めたようじゃしの」

「ええ。固めました。五年でケリを付けます。そして、後任に任せて、俺はティナさんとデートする!!」


 握り拳を作り宣言する。

デートスポット作っても俺行く時間ないし! ティナさんも行く時間ないし! デートしたい! イチャイチャしたい! 遊びたい! むっちゃ遊びたい!!

 下でデートしてたカップルがむっちゃうらやましい!!


「く、カカカカッ。そうじゃのう、それまでにアリスティーをどうにかしとかんと、監視の目が厳しそうだもののぉ」

「別に厄介払いをしたいわけじゃないですよ。諸手を挙げて遊ぶにはそこまでしなきゃならないからそう言ってるんです」

「…………言われてみたら、おぬしらデートらしいデートもしとらんのか……?」

「ええ、お互いに時間が全然取れないので。今の俺達に出来るのってせいぜい、仕事の合間に一緒にお茶を飲むくらいですかね?」


 それも互いに時間が合わない事も多いんだけど。

 俺はギルドのことで、ティナさんは神々の事で手が一杯である。


「だから、五年! 五年で全て終わらせてぱーっと遊びに行きたいです。世界一周ってのもいいかも!」


 ゲートを使っての移動は味気ないよな。

 かといって馬車ってのも……。乗り心地あんまり良くないって聞くし。

 やっぱりここは鉄道とか電車か。キャンピングカーとか……は、流石に無理か。

 あ、でも待てよ。俺がティナさんをお姫様だっこして空を飛び移動っていうのは有りか!?

 有りかもしれない! 日本じゃ無しだけど、ここでだったら有りかもしれない!

 夢膨らむなぁ~。


 なんてちょっとトリップしかけてたら、オルチさまに肩を叩かれた。

 いかんいかん。


「桐生、もうちょっと……」

「もうちょっと?」


 言いかけてた何かをオルチさまは言うのを止めて、それから突然俺の背中を叩いた。


「もうちょっとティナと時間を取れるようにしてやるから、今日は頑張れ。ほれ、商人ギルドの受付を手伝ってきたらどうじゃ?」

「ああ、俺今日はこれからフトクリムに行かなきゃならないんです。教会の場所決めの抽選会が今日あるっぽいので。新規じゃないので、教会地区じゃ場所貰えないかなって思ってたんですけど、ウチは立地の良い場所よりも広い土地の方がいいんだろって事で、参加して良いって話になりまして」

「そ、そうか」

「ええ! 時間的にはまだちょっと早いんですけど、受付の手伝が出来る程の暇はないので……。それならば向こうで協力してくれそうな神々に当たりを付けとくのも有りかなっと」

「そうか。頑張れよ」

「ええ、では行ってきます」

「おう、気をつけて行ってこい」


 オルチさまの見送りを得て、俺は一度、空へと跳んだ。


 少し離れた上空から首都とギルドを眺める。


 冒険者ギルドは形になった。

 商人ギルドはもう少しといった所か。それでも何も無かった頃よりは全然良い。

 五年。五年でどこまで行けるかは分からないが、やってやる。やり遂げてみせる。絶対に! 

 そして、俺もティナさんとデートするのだ!!



ブクマ・評価・感想などありがとうございます。

これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。

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