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神に選ばれた俺は  作者: 瀬田 冬夏
俺と神々
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神に選ばれた俺は。

本日は二回投稿しております。こっちは二回目です。



「泣いて喜べ! お前は選ばれた!!」


 第一声にガキンチョがそんな事を言ってきた。

 何言ってんだ? このガキ。

 まずそう思った。誰だって思うに決まってる。


「お前には異世界にて最強で、最凶も最狂でありながら、最興の最饗な! 力を授けよう!」


 最強、最強、うるせぇよ!


「もちろんタダではない。この俺様を崇め奉りさえすれば、お前に望みの力を授けよう!!」


 最強ねぇ。


「それは内政チートか? それとも勇者チートか? それとも商人チートか? はたまた生産チートか? まだまだ有るぞ! 召喚チートにイケメンチート、魔法チートもあるし、兵器チートなんてのもある! 情報だってチートになりえるし、仲間が超が付くほど一流で有能なやつばかりってのも十分にチートだ!!」

「え? え?」


 目を白黒させるガキンチョに俺はニヤリと笑う。


「俺を最強にしてくれるんだろ? これぐらいは出来なきゃ最強とは言えねぇぜ」


 一部ダブってるのもあっけどな!


「一柱でそれだけやれだなんて、どんだけ業突く張りなんだ?」

「一柱でやれないないならみんなで協力すればいいだろ」

「そんな事できるわけないだろ!」

「何でだよ。複数の神からの加護なんて、普通だろうが」

「そ、そうなのか!?」

「そうだよ。そんなの普通普通。こっちにも、七福神つって、七人の神様纏めたりな」


 あ、人じゃなくて、柱か。


「な、なんて事だ……」

「これぐらいで驚くなよ、さらに一柱足して八福神とか場所によっては十福神だってあるんだぜ!」


 正確に言うと、十福神巡りなんでちと違うかも知れないが。


「な、なんて、事だ……。しかし、十……」


 悩んでる悩んでる。


「というか、俺が望む様なチートなんて、無理だろ? じゃあ、この話はなかっ」

「待て! お前は本当に複数の神でも平気なのか?」

「多神教の日本人だから問題はない。むしろ、用途に合わせてお参りに行って何が悪い」


 なんせ、俺の母親は子供が出来ますようにと、何カ所も回ったらしいからなぁ。

 そのおかげか、俺が生まれたあとはトントンと妹も生まれた。


「分かった! お前に全てを任せよう!」


 そんな言葉と共に目の前が急に開けた。

 今までぼんやりと、霧の中とでもいうか、はっきりしていなかったのに、突如、どっかの教会の中に居た。

 っていうか、待て? これは……どういう事だ?

 いままで平然と話をしていたが、俺はここにきてやっと、おかしいって思い至った。


「音葉 桐生。俺様達はお前を教祖と認めよう!!」


 ガキンチョの後ろに大中小の人影があった。


「教祖?」

「うむ、そうだ! お前は俺様達新米神の教祖となったのだ」

「……」

「あ、あなたが言ったのよ! 奉る神が一つでなくてもいいって!」

「そうじゃ! 今更嫌だとは言わせんぞ!」


 俺が黙っていたせいか、ガキンチョの周りにいた幼女や恰幅のいいじいさんが言い募る。


「お前に拒否権は無いぞ! 皆の教祖って事でお前が望む力を与えたんだからな!」


 言われて気づく。確かに気づけば俺、チートキャラなってんじゃん!

 俺に力を貸してくれた神々の情報も力の使い方も分かっているっていう非常に便利な状況で。

 あれ? ここにいない神の力まで俺持ってないか?

 そう思いつつ、ガキンチョに確認をとる。


「で、えーと、時空の神 トキアカでいいんだよな?」


 一部、新米じゃない神も居るようだが、周りにいるのは確かに新米ばかりだ。


「俺の仕事はあんたたちの信者を増やし、その信仰によってあんたたちの力を強化させ、そしてまた信者を増やすで間違いない?」

「ああ」

 トキアカは頷いた。



 さて、頭を整理しよう。

 この世界では普通に神が居る。それもたくさん居る。おかげで、神々の熾烈な陣地争いが行われている。

 で、同じのを司ってもすでにメジャーな神様の方が圧倒的に有利なわけ。信者が多い分、神様の力も強いわけだからな。

 で、今俺の目の前にいる神々は、新米神。

 新しい何かを司るか、それとも、すでに同じのを司ってる神がいるけど、どうしてもそれがやりたくてなった神だ。

 二番手、三番手ならともかく、もっと下位なせいで、信者を獲得するほどの力を獲得できず(神々も司る力をくじで決めるようだ)、そのせいで信者零みたいな神。

 新しいものを司った神々は、新しすぎて、理解されずに信者零みたいな。

 そして、新米じゃ無いけど、後からやってきた神に敗れて、信者一人になってしまった神となっている。



「状況は理解した。で、えーと……。教会が掲げる事になるみんなが司るものは俺が決めていいんだよな?」

「アタシ達の力と大きく違わなければいいわ」

「儂は酒に関われるのならそれでよい」


 うーん、なんか、みんな悲壮感漂ってないか?

 一部は、軽く一年信者ゼロだもんなぁ。

 俺は耳の後ろをかきながら考えて、もう一度基礎知識として入ってきた情報を整理する。そして意外な事に気づいた。異世界で、モンスターが居るのに、『アレ』が無いとは!!

 どうせ他の教会と同じ事をしても無意味だよなぁ。酒の神なんて山の様に居るし。だからみんなこんな話に乗ったんだろう。なら、やってみるかな。


「えーと、まずは酒の神、オルチさまに、質問です。酒に関われれば良いって事だったけど、果実酒とか、料理酒とかでもいいんすか?」


 流石に見た目恰幅の良いじーさんなので、思わずさま付けしたが……、本来ならきちんとさま付けして、敬語とか使わなきゃならないんだろうな。


「料理酒とやらは知らんが、酒なら問題ない」

「よしよし、では、音楽の神、ミュークさま、音楽以外はどうです? 演劇とか、踊りとか」


 こちらは幼女の神だ。ツルペタだ。俺の妹にもこんな……、くそ生意気な時期があったと思ったが今でも生意気だった……。止め止め、真面目にしよう真面目に。

 俺が真面目に話を聞き始めたからか、ミュークさまはさっきのように騒いだりはしていない。

 見た目と違って精神は割と大人なのかも知れない。


「演劇ってなに? よく分からないけど踊りは好きよ。楽しいのは皆好き。だから皆にも笑ってもらいたくて音楽の神になったのよ」


 よしよし、なるほどなるほど。


「で、美の女神、アリスティーさま、……は、なんで負けたんです?」


 ぶっちゃけ、負ける要素どこにあるんだよってくらい、顔綺麗! ナイスバディ! 気品もあって、美しい!!

 そして、神々しいので、流石に付き合いたいとかは恐れ多くて思えないが、負けるとか考えつかないんだけど。それとも、相手の神はこれ以上だというのかっ!


「……わたくしは、美しさは積み重ねだと思っているの。それ故に負けたのよ……」


 お声も綺麗だぁ!

 …………って、どういう意味?


「今の美の女神は『永遠の若さ』を歌ってるんだ。美の女神の加護を欲しがるのは上流階級の女共だからな。男共の好みが、若いのってなったら、行き遅れないためにも向こうに入るんだ」

「永遠の若さ?」

「だいたい、十四~十五くらいで成長が止まる」

「ロリコンじゃねぇか、ただの! ないわー」


 いや、まじないわー。せめて十六とかからじゃね? 一歳なんて変わらないって? 中学生と高校生じゃ全然違うっての!

 でもそうか。だいたいみんな一つの神の加護だもんな。美しさだけの加護なんて言われても、って普通は信者入りしないのか。玉の輿とか狙ったりしたりしないのかねぇって、いや、した結果がこれになってんのか?


「貴方は本当にそう思っているの?」

「十四とか絶対無理!」


 アリスティーさまにハッキリと言ったら微笑まれた。


「そう。あとでティナを紹介するわ」


 ティナ? ああ、アリスティーさまの所に一人残った信者か。


「で、次が、武道派お二人と」


 一人は犬。完全に犬。擬人化とかされてるわけでも、人に耳や尻尾がついているわけでもない。完全に犬だ。デカいけど。

 狼とも思ったけど、犬が正しいんだよな。


「うむ。よしなに」


 で、もう一人が、ライオンの獣人。顔と尻尾はライオンなのに手は人間か。

 ……肉球…………。

 ちょっとばっかり悲しい思いをしたぜ。


「戦神はもはや満杯。かと言って軍を司るには居たらず。難しい立ち位置ですまぬ」


 こっち二人は腰が低そうだ。

 この二人、いや、二柱は、背負っているものがちと違う。

 この世界で今一番幅を効かせているのは人族。次に亜人ときて、獣人族と獣族はどっこいどっこいというところか。

 これはまんま、神様の姿の分布図にもなる。

 別に人間が格別に優れてるわけじゃないんだよ。個々の能力で言えばむしろ分が悪いんだよ。

 ただ、信徒たちに対しての扱いと、己の神への信仰の形が、なんというか、ものすっごく打算的っというか、商売上手というか。

 その辺がもろもろで差が出た。

 だからこの二柱は己が眷属のためにも頑張りたいわけだ。


「で、花の女神クリスフラワーさまと、樹木の神ジュリーンさま、と」

「花なんかイミナイヨー。って、イワナイでねー!」

「言いませんよー。むしろ、貴重な神様で嬉しいですよー」

「へ? ホントにー?」

「ホントですよー」


 ノリを合わせてやるのも辛いな。


「一応聞きますが、クリスフラワーさまの花って草系も大丈夫なんですよね?」

「うん、ダイジョウだよー」


 って、事は花っていうか草花? ……木以外だったらなんでもOK? っていうか、野菜もOKだよね?


「異世界の草花でも大丈夫なんすか? これはジュリーンさまにもお伺いしたいのですが」

「異世界のものは、他の場所で芽吹いたりしないよう管理していたら問題ない」


 種の管理に気をつければいいか。後は鳥とかが食べていかないように、だな。変な所でフンされて芽が出ると不味いし。


「ただ、種や苗は君が用意してくれると助かる。今のボクにはとても難しい事だから」

「分かりました」

「あと、分かってると思うけど、今のボクには果実を司る事はできない」

「はい。分かってます」


 唯一神ではなく、人気のある神になって下界に降りて来たりすると、神にも差を付けようと、色々縛りが出たりする。その煽りを喰らっているのがもう一柱。


「鉱物の神、キニオンさまもそうですよね?」


 確認を取ると、キニオンさまは頷いた。

 育てば大地を司る神になるし、今でも割と凄い有能な神様だが、人気が無い理由がある。


「はい、売ってすぐ金になるようなものは今のミーには扱えません」


 という縛りを受けちゃったのだ。

 神が溢れている分、色んな神が居る。鉱物の神だって、小石しか出せない神も居れば、オリハルコンのみ出せる神も居る。

 教祖は教会を運営しなきゃならない。色々出せるけど金にならない物しか出せない神と、オリハルコンのみではあるが、好きなだけ出せる神と、どっちが良いかっていったら、そりゃ、オリハルコンの神がいいよな~。


「あと、どんなに位が高くなっても硬貨は作れません。それをしていいのは創世神のみとなってます」


 貨幣を司る! 何よりも強いな。と思うのは俺だけでないはずだ。

 で、最後は、と。


「で、時空の神、トキアカさまっと」

「時空っつても、過去に戻るのは無理だ。やっちゃ駄目って言われてる。未来は見られるが、未来は不確かだ。未来視できたからといって絶対とはいえない」


 俺が質問するよりも先に、トキアカさまの方がすらすらっと答えてきた。もしかして、過去に質問された事あり、か?

 まあ、普通、そうそう異世界の人間使おうっては思わないよなぁ。


「や、違くて。時空ってのは、移動手段には使えますかってのが、むしろ俺的には重要」

「使えるけど?」

「それって、どこからどこまで!?」


 思わず意気込む。


「俺様や、お前ならどこまでも、だけど?」

「それは知ってる! そうじゃなくて、一般の信徒達とか、信徒じゃない人達なら?」

「……俺様の力の及ぶ範囲内、この教会内ならどこでも問題無い」

「他の街や国に教会建てたら?」

「その教会までならすぐにでも飛べる」


 俺の熱意に圧倒されながらもトキアカさまは答えた。


「偉い!!」

「……なんで、上から目線なんだよお前……」

「すんませんって。おかげでやりたい方向が定まった」

「ふーん。俺様は寛大だから許してやる。で、最後の後一人、選んでくれ」

「は? 後一人?」

「お前が言ったんだろ? 十柱って。九まではこっちで選んだんだけどな。あと一柱は、どうにも微妙だからお前に選んで貰う事になったんだよ」

「微妙ってなによー!」

「そうよ! 真実の愛こそ正義じゃない! 多夫多妻なんて悪よ悪!」

「微妙でごめんなさい微妙でごめんなさい」


 トキアカさまの言葉に教会の入り口の所で神様だと思われる者達が喚いている。


「……別に十に拘ってねぇよ。このさいだ。入りたいってやつがいたら入れればいいじゃねぇか」

「きゃー!! 素敵ー!!」


 と、黄色い声援出してる人、男なのか女なのか謎なんだが。……いや、男じゃね? アレ……。


「マジで? いいの? お前すげぇな。便所の神もいるぜ?」

「……お前、一番蔑ろにしたらダメな方を蔑ろにしてんじゃねぇよ……」


 ジト目で見たらトキアカさまは驚いた顔になり、そして、とても嬉しそうに笑った。


「おーい! 桐生がみんなの教祖になるってよー!!」


 その声に歓声が上がる。ここまでくると、多少増えただけじゃ変わんないっての。

 と、思い神様達を眺めていたら、急に目の前が真っ白になって、俺はぶっ倒れた。

 残りの神様の力を受けたためらしい。



 グるんぐるん、グるんぐるん。

 洗濯機の中で回されているような感覚。気持ち悪いというよりも、体の中をいじくり回されているようなそんな力。神さま達の力が俺の中で縦横無尽に走っては、ほどよいところで、はまっていくような。そんな感覚。それと同時に入ってくる力と知識。教祖として力の与えられた俺はさらにチート化し、そして、やっぱりトイレの神様の力は凄かった。

 疫病と豊穣。

 生かすも殺すもこの神次第。

 こっわー……。

 そう心の中で呟き目をゆっくりと開けた。

 そこに女神が居た。

 金の糸のような髪。透けるようではあるが健康的な肌。淡い花のような色をした唇。緑色の瞳と相俟って、花のような可愛らしさかあった。

 ホンノリとした温かさと、甘く優しい匂い。


「大丈夫ですか?」


 柔らかい声が耳に心地良い。このまま眠ってしまいそうだ。

 ああ、でも、このまま眠るのは無理だろう。

 何故なら心音が非常に煩いからだ。俺の!


「あの? ……どうしました?」


 …………ところで、俺はこの美人なエルフさん(よく見たら耳が長かった)の膝枕を堪能しているようなのだが、どちら様でしょう?


「あ、アリスティー様、教祖様のご様子がおかしいのですが……」


 って、事は! アリスティーさまのトコの信者さんか!

 アリスティーさま! グッショブです!!

 目の前にあった顔に魅入っていた俺は密やかにアリスティーさまに親指をたてて感謝する。

 アリスティーさまの所に唯一残った信者さんは、美の女神に劣らず綺麗で、良い匂いして、柔らかいです。さっきも言ったが、俺、膝枕を堪能中です! 目の前のオッパーーイも立派な双子山。

 俺、教祖になって良かったー。

 と、至福に至りながらもうちょっと目を閉じて堪能しようかと思ったけど、アリスティーさまの強烈な視線を感じて身を起こす。ごほんっ。


「音葉 桐生です」

「ティナです。教祖様、宜しくお願いします」

「教祖様は止めてください。ぜひ、桐生と」

「ですが」

「ぜひ! 是非に!」


 こんな美人に名前を呼んでもらうチャンスを逃したくないんです! 俺は!!


「では、キリュウさま……」

「さんで!!」

「……キリュウさん」


 ちょっと恥ずかしそうだったけど、ティナさんは言ってくれた。

 ひゃっほーい!!

 トキアカさま。俺、今、本当にあなたに感謝してます!


「おーい、戻ってこーい」

「トキアカさま邪魔しないでくだいよ」


 間に入るな間に!


「お前が起きるって、みんな待ってたんだ。こっちを優先しろ」

「はいはい」


 仕方ないので、神さま方の所に行く。

 因みに新しく入った神様は微妙と言われるほど微妙ではなかった。

 確かに微妙な神様もいるっちゃーいるけど、救えない程でもないし。

 移動しながら俺は必死に情報を整理する。

 増えた神々はこんな感じだ。



 愛の女神、ローズベリー。

 ちなみに多夫多妻のこの世界で、一夫一妻を教えとしているため信徒が集まらない神。


 母性の女神、メリーマムル。

 子供の味方でありたいという神。需要がありそうでないのは、死産率がまだ高いため、生まれたその後よりもまず『生まれる』『生き残る』を優先したために、生命の神の方に女性は主にいっている。

 あと、大きな街とかならともかく。村や町じゃ創世神の教会か、生命の神の教会しかないってのも大きな理由だろうな。


 美の神、ビオルマン。

 同じ美の神のアリスティー様とは逆で服や化粧で綺麗になろうって感じだ。どっちも正しいのだが、この世界では、神様同士の主張のどれが正しいかってケンカになるから、敵対する事になる。だから、トキアカさまはアリスティーさまの方の美を取ったのだろう。本人の力もこっちが強いし。

 ま、今後は二人で徹底的にやって(研究して)もらえばいいんだ。女の美にたいする意識って、すげーし。


 織物の女神、ヒコヒメナ。

 その職についてる人なら需要があるんじゃないかと思うのだが、女の人の仕事なんだよね。織物って。なわけで、さっきも言ったが、生命の神に人取られちゃってて、そろそろ、ヤバげな人。

 二百年以内に信徒十人は作らなきゃ、天界に戻って、見習いから再スタート。今まで信徒は二、三人はいたけどそれ以上は無く、今は零で、神様になって百四十六年目になった……。

 一発逆転狙いなのだろう。


 工芸の神、ラデン。

 鍛冶の神なら俺に頼らなくてもやってけたとは思うんだけどなぁ。

 この世界、普通にモンスターいるし。男は主に武神とか、軍神とか戦闘系か、さっきも言った鍛冶とかの方が人気あるんだよなぁ。

 あと、さらに致命的というべきか……。魔道具神ってのが別ジャンルにいるせいで、さらに落ち目に。

 魔道具を家電と考えれば、普及率というか、人気の差が分かってもらえるだろうか……。


 炎の女神、サラマ。

 炎とか土とかついてる神様は信徒達にその司る(この場合は炎)力を授けたりするんだけど、こちらもいっぱい居る神様なので、新米神は与えられても、攻撃魔法という意味では初級より弱いくらいの魔法になる。しかし、こちらも使いようなんだけどな俺からすると。


 水の女神、アキュア。

 属性の神なんでやっぱり神多数のため、力はそう多くあげられない。攻撃魔法は無理でただの水(飲料水)のみの水魔法となっている。


 星空の女神、オーロリア。

 育てば天の神になって、気候を操れる神様なんだけど。晴れとか雨とかならともかく、よりにもよって星空をひいちゃった運の無い女神様だ。ご本人のみだと絶対に無理だっただろうな、って思う。俺としては育てられる自信があるのでかなりありがたい。そして、『空』を司るからなのか、下位神であっても、『空気』を作れ、操れる神様だった。無酸素とかは出来なかったけど、水中に空気を作るのは全然可能だった。それだけで食ってけるんじゃね? って思ったのは俺だけなのだろうか……。


 虫の神 アレキトンダー。

 ……予想外過ぎるよ! まさか虫の神様がいるなんて!!

 いや、他の神々から考えると有りなんだけどね。

 苦手なのも多いからちと怖いぜ。

 モンスターに属する虫、魔虫も司っている。たぶん、誰もそんな事知らない……。

 知ってたらもっと需要有ったはずだ。


 家事の女神 ナベーナ。

 ホントは料理の神になりたかったらしい。でもそうすると、人が集まらないかもしれないと、家事の神になったらしい。悲しい事にそのせいで女性向けだと思われたらしい。俺的にもお得な神である。


 便所の神、トエル。

 疫病と豊穣を司る。知ってる奴少ないけど。人は皆無。神ですら極小少数。

 ついでにいうと、代わりにやりたいって神もいないから、特例で信者がいなくてもずっとトイレの神やってる。ちなみに、最初の信者なんで、ほぼ同じくらいの凄いのを振るえる……。

 自分自身がちょっと怖い……。


 ああ、ついでだから、第一信者として貰える力の説明をしておこうか。

 時空の神、トイレの神、虫の神、家事の女神、愛の女神、母性の女神、花の女神の七柱は唯一の神だ。それ故、第一信者、教祖となる俺は神と同じ力が使える。威力はもちろん落ちるが。種類に関しては問題無い。威力だって、神々が本来使える力の半分は普通に使えると思ってくれていい。ま・さ・に! チート!

 神々の力が本来は世界中に影響が出る物なら、俺の力は世界の半分に影響が出るって事だ。つまり、俺はこの瞬間、世界の半分に疫病を蔓延させる事も出来る。怖いね。恐ろしいね。良かったよ、俺が狂気に満ちたやつじゃなくて。

 母性の女神のおかげもあって、力に溺れるっていう事もないだろうし。

 その点はあの女神さまはかなりありがたい。


 簡単に言えば、神の数が増えれば増えるだけ、割った分の力が、この下界でスタート時、新米神が使える力、種類となる。

 数が増えすぎた神は、……先ほど上げた神々で分かるだろう。

 第一信徒が授かる力は二パターン。一つは唯一神だった場合、先ほども言ったが、神の力の半分が加護として授かる。

 それ以外の神々は基本神と同じだけの能力が与えられると言ってもいい。

 とにかくだ、新しいものを司った神々はある意味要チェックである。

 使えないと思っていた神が実は使える奴だったってなると、五柱くらいなら下界の者にとっては争奪戦になるらしい。これに入ったのが、果樹の神だ。

 大は小を兼ねる。大地の神はまさにそれだった。

 大地神は草花や樹木にも影響を与えるので、細分化する必要性を考えている神はいなかった。しかしそこに果樹を司る神が出た。

 その神は果樹なら何でも出せた。大地の神のように種や苗から成長させるのではなく、果実を果実として出すことができた。教祖はその果実を売り、酒を造る教団にすぐにいくらでも納品する事が出来た。一気にその神は信徒を増やし、教会はでっかくなった。

 そこから先は損得勘定の話になる。


 大地の神では廃れてしまう! と今から下界に降りてくる大地の神候補が果樹の神になり、一攫千金を狙った人たちがそんな神を目指して世界中を駆け回った。なんて伝説もあるくらいだ。……すんません。伝説じゃ無いです、史実です。

 だから新しい教えの神は考え方によってはものすっごく儲かる可能性もあるのだ。

 宗教って儲かるね! って言葉は、この世界では世知辛いが皮肉でもなんでもなく、そのまんまの意味になる。


 そこまでして神々はこの下界で信者を集めて何をするかというと、まずは位を上げていくこと。

 下位神から中位神。そして上位神になったあとは大神になる。大神になり、創世神になる。創世神になると、この下界から出て、新しい世界を作り生き物を生み出す事も出来る。または大神どまりで、創世神になれなくても、仲の良かった創世神の世で神として存在する事も出来る。

 つまり、ぶっちゃければ、ここは神様育成の世界ってわけだ。

 巻き込まれる方は大変だが、まあ、夢と希望には溢れているのかもしれないな。


 最後にアリスティーさまとヒコヒメナさまに関してだが。

 二柱の本来の第一信徒は、ご本人達と同等の力が使えたのだろうが、俺は教祖にはなるが第一信徒ではないので、さらにその半分以下の力となる。ん、だが……。

 ヒコヒメナさまはそれでも、唯一神なので、半分の半分っていってもわりとでかい。

 アリスティーさまは一度は、美の女神としてこの国では頂点に立った方。その内包した力は凄まじく、半分以下でも俺への影響がかなり出ていると思われる。ティナさんは、アリスティーさまがこの国で頂点に立っていた頃、信徒だったご両親から生まれたので、こんな絶世、超絶な美女となっている。なのでティナさんの外見はある意味当然なのだが、俺への影響を考えると、信徒の数イコール神の力ではないと思える。信仰と信徒は別なのだろう。そりゃ、あこがれるよな。女の人なら。こんな風に美人になりたいって。

 そして、そこを、俺たちは突くべきなのだ。



 そんな事を考えていたがふと気づく。


「あれ? ティナさんが居るのに、なんで俺がアリスティーさまの教祖に?」

 教祖って事は今から新しい宗教を興すって事だよな? 信徒がいたら俺は教祖になれないはずでは?

「トキアカ様からのお誘いを受け、再起をかけて新しく興し直すというので、一度脱退いたしました」

「ということは、ティナさんは今、無所属?」

「はい」

 これはいかん! 勘違いした馬鹿共が勧誘に来てしまう!

 早くきちんとした形で立ち上げなくては。

 一階に降りるとすでにみんな居た。


 さて、これから絶対にしなきゃいけない事は二つ。神様方のご利益。本来であれば神が好きなように決めてそれを信者達が広めていくのだが、ここでは違う。俺が決めてそれよりに司る力を変化させて貰う。じゃないと、俺のやりたい事出来ないし、周りと同じのを司ってても意味ないだろう。

 それともう一つは宗教の名前だ。

 これが今一番頭を悩ましている。七柱だったらまんま、七福神教とでもつけたが、今二十柱居るのだ。そして、これから増え続けるであろうから、下手に数字がつくのも不味い。

 あ、あと、決まり事も決めなきゃいけんな。結局二つじゃなくて、三つか。

 …………アリスティーさま、怒んないと良いなー……。今から司るものを発表するのが、ちょっと怖くなってきた。

 しかし、やらないわけにもいかないし、シャレで言ったチート能力貰ったし。やらねぇつったら、俺が神々に殺されかねないし。なんでこんな事になったかなー。

 夢だと思わなければちっとは変わってたのだろうか……。

 ……いやー、無理だ。だって、休みだって、ゴロゴロしてたんだぜ。居眠りの一つや二つするって、絶対夢だって思うって。

 俺はそんな事を思いながら神々の前に立った。





少しでも楽しんで貰えるよう頑張りたいです。

ブクマありがとうございます。


神々の名前が一気に増えたので、私が覚えた時の語呂合わせ。

時空神 トキアカ (時トキ空ア間カ)

酒の神 オルチ  (八岐大蛇から)

音楽の女神 ミューク(ミュージックから)

美の女神 アリスティー(金髪~、覚えやすい名前ーで、不思議の国のアリスを連想・アリスのお茶会より)

武神 ベロス(ケルベロスより)

武神 レオソルン(獅子のレオから適当に)

花の神 クリスフラワー(水晶の花。綺麗かな、と)

樹木の神 ジュリーン(樹林より)

鉱物の神 キニオン(グランドキャニオンから、「ャ」を取った)

愛の女神 ローズベリー(愛といえばバラ? から)

美の神 ビオルマン(美男ロマンをもじってルマン)

母性の女神 メリーマムル(子守歌を歌うイメージでつけた。メリーさんの羊、と母っていう意味でマム)

星空の女神 オーロリア(オーロラから)

水の女神 アキュア (アクアから)

火の女神 サラマ (サラマンダーから)

便所の神 トエル (トイレのイレに下と横に棒を一本足した感じ)

織物の女神 ヒコヒメナ (彦星織姫から)

工芸の神 ラデン (工芸の螺鈿より)

家事の女神 ナベーナ (鍋から)

虫の神 アレキトンダー (カブトムシのでかいの!確かアレキサンダー!! とつけた。正しくはヘラクレス)

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