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神に選ばれた俺は  作者: 瀬田 冬夏
第1章 ギルド
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第3話 祭りの始まり_3


『大繁殖』または『トレイン』と呼ばれるモンスターの異常発生。

 それを絶好の狩りの時間として冒険者も狩人もダンジョンにやってきている。

 トレインの時間帯はどうやらダンジョン内は一切光源が無いようだ。

 ヒカリゴケとか色々あったはずなんだが、それらは今、一切の光を放っていない。

 前も後ろも分からない程の闇の中、地鳴りのような走る音が聞こえてくる。

 この暗闇の中をモンスター達は走ってくるのか。なるほど。マジックカードがやたらと売れるはずだ。

 通路の奥から、特に早い足音が近づいてくる。


「ブオォオオオオッッオブゥ!!」

 バチチチチチィチイチィチィ!!


 真っ黒なユニコーンっぽいのが、全速力でやってきて、その勢いのまま結界にぶつかって首の骨折って、ぶっ倒れた。

 哀れ。

「とどめ」

 と、ホワイトさんが槍を結界から突き刺して痙攣していた黒い馬モンスターにトドメをさして、中へと引っ張ってくる。

 同じような事があちこちで起こっているようで、ほぼみなさん何もせず一匹目を獲得したらしい。

「……何が起こってる?」

 何にも情報を聞いていなかった最後のパーティーだけが訳が分からないようだった。

「この膜から出るなよ。結界から出ちゃう事になるから危険な事になるよ」

 俺はそう教えてやる。

 素早いモンスターは他の群を抜いてきてしまったせいで、同じように結界にぶつかってはバチバチバチとずっと結界が迎撃モードになっている。

 ちなみに俺は、すっかりカウントするのを忘れていた階段の所はアフゥロゥの所が出張ってる。

 ランタン使ってるし、その分多く狩っても良いって事なのだろう。

 ふむ。どうやら本当に楽勝って感じっぽいな。向こうは攻撃出来ない。こっちは攻撃し放題、これじゃ、楽勝っていうか、惨殺? 大虐殺? だもんな。

 そりゃ、何時もより下で狩ろうってなるわけだ。

「よし! 十匹狩ったぞ。変われ!」

 そう言ってアフゥロゥのパーティーメンバーが階段から離れていく。

「キリュー、お前達が今度は使え」

「あれ? 使っていいの?」

「十匹毎交代」

「ふーん。ラック、ガンバ」

「はい」

 ラックは頷いて剣を出し、階段から飛び降りてくるモンスター達を剣で突いたり、斬ったりしている。

「おい、キリュー、一人だけサボるなよ?」

「失礼な事を言うな! 働いてるっての!」

 ブラッキーの言葉に俺は反論する。

「……真ん中に立ってぼーっとしてるように見えるが?」

 責めるわけでもなくただ不思議そうに聞いてくる。

「せっかくのトレインだぜ? ここに来て貰った方がいいだろ? だからおびき寄せてる」

 そう答えると、ブラッキー以外にも、戦っていたやつら以外全員が俺を凝視し、戦っているやつらだって、ちらりと目配せしてきた。

「……おびき寄せるって何やってるんだ?」

「明かりに対しておびき寄せられるみたいだから、フロアのあちこちに光玉を出現させて、おびき寄せてる」

「……なんで、見えてもいない所に魔法を出現させられるんだ?」

「え? 見えなくても俺の力の及ぶ範囲内なら問題ないし」

「お前の力の及ぶ範囲って……」

 俺はブラッキーに天井を示す。ランタンの結界のせいでわかりにくいが、結界の先にあるのは岩肌じゃない。

「……星空。マジか……。お前のこれって、ダンジョンでも効くのか?」

「え? 効くよ」

 実は大地の力も使ってたりするんだけど、同じ事を考えてフィールドに影響を与えようとする人がいるとそっちに負ける可能性もある。だから俺の本命は、虫と草花、苔等である。

 でも同じようにフィールドに影響与えようっていう人は今の所いないから上からの視界を主に使ってる。

「……突っ込むのが阿呆らしいぐらい常識知らずだな」

「いやいや、突っ込んでるよね、十分。っと、来るぞ足の遅い奴らが」

「十匹終わりました」

 ラックの言葉も重なったが、みんなきちんと聞こえていたらしい。通路の奥を眺めているようだった。

 階段は別のパーティーが引き継ぎ、そして、冒険者ではなく狩人のパーティーにはちょっと問題があった。

 魔石だけ取って、それ以外は放置で積み上げてるのよね~。これ、邪魔だー……。あと、血の臭いも凄くなるしさ。

 もっとも向こうはこっちを見てる余裕すらないけど。

 結界はあくまで害意があるやつにたいして弾くんだよ。だから、死骸は素通りさせちゃうんだ。だからそのタイミングで横で待機してたパーティーメンバーが死骸の一部を捕まえちゃえばアイテム袋に一瞬にして収納出来る。

 でも、狩人達はそうじゃない。死んだやつを端に寄せたり、その時に横にずれなきゃいけない。その分のロスが差になって、結果に出始めてる。そして他の通路はそうでもないのだが、こっちだけは押し寄せているモンスターが増えてく一方で、たぶん見た目的に結構なインパクトがあると思う。

 だからかな。冒険者達は体力的にも精神的にも余裕がある感じだけど、狩人達は余裕がない感じだ。

 狩人の魔法使いが火炎系魔法の大技を使い、モンスター達を焼いていく。

 中には毛皮の高く売れるモンスターとかがいたのだが、あれはもう値段下がるだろうねぇ。もったいない気分で俺は見ていた。

 ちょっとばっかり、向こうのモンスターを他の所に誘導した方がいいかなぁ。

 そんな事まで考え始めた。

「おい! この結界魔法、あとどれくらい持つんだ!?」

「約十一時間半もつよ」

 俺が答えたら、向こうのリーダーの男性ぽかんとした後、怒鳴りだした。

「嘘つけ!! んなわけあるかぁ!!」

「本当だって!」

 快適・快眠ランタンは完全なる使い捨て。ちょっとだけ使って残りは後日って事も無理。十二時間きっちり、結界を張り続ける。持ち運びは出来るし、その結界範囲を狭めることは出来る。だから無駄にするって事はないだろうとは思ってるんだけどね。

「それはそうと、おたくら、ソレどうすんの?」

 俺は魔石を抜いてほったらかしになっている死骸を指さす。

「あ? どうするって……」

 リーダーは言いかけて、気づいたらしい。死骸の山を積んでいるのは自分達だけで、他のパーティーは肉の欠片の一つも無い事を。そして、見た。大きなモンスターが小さな袋の中に一瞬にして消えて行くのを。

「……なんだ、ありゃ?」

「冒険者袋。最近じゃアイテム袋って言われてるね。名称は割とどうでもいいんだけど、見ての通りとても便利なものだよ。あれのおかげで荷物も随分と小さくなるしね。それで、その死骸、どうすんの? 捨てんの? 捨ててくんなら邪魔だし、こっちで買い取るけど?」

「買い取るだと? いったい幾ら出すって言うんだ?」

「めんどくさいから一体につき、五百ゴルドー」

「なっ! てめぇ! それは安すぎるだろ!!」

「どうせ捨てるんだろ? それに魔石は回収してるんだからいいでしょうが」

 モンスターの死骸で一番高く売れるのは基本的には魔石だ。下層に行けば下層に行くほどその価値は高くなる。

 もちろん皮などが高く売れる物もある。しかし、大繁殖の後は一時的に値が崩れてしまうため、冒険者ならともかく狩人達は無理に持って帰っても割に合わない事が多い。

「おい、他に誰か買おうって言うやつはいないのか!?」

 リーダーが周りに居る面々に話を振るが誰も応じない。

 それもそのはずだ。彼らが買ったとして、その売る相手は俺になるんだから。

 ここで邪魔しても彼らの利益になるかは怪しい。何よりも彼らが欲しいであろうポイントに影響が出る可能性はある。ケンカを売るような事はしないだろう。

「……チッ」

 ……ここの世界の人達って結構わりとあからさまに舌打ちするよな。

 そんな事を思いながら俺はそっちに近づく。

「えーっと、十六体か。八千ゴルドーだね」

 中金貨一枚と小銀貨三枚を差し出す。男は忌々しそうに見ていたが奪うようにお金を取る。俺も契約成立と死骸をポシェットに入れる。

 それからトイレキー十本セットを一つ差し出す。

「はい、これおまけ。とても便利な『トイレキー10本セット』を上げよう。使い方は取っても簡単、一つとって、『解錠』って言えば、とある場所にあるトイレに転移されるから。あとは普通に用を足して、扉を出れば、ここに戻ってこられるから」

「……何言ってるんだ? お前」

「使ってみれば分かるよ。ラック、定期的に買取お願い」

「はい」

 ……部下がいるっていいねぇ。スッゲー楽。

 さて。俺もそろそろ働こ……じゃなかった、体を動かそうかな。

「ブラッキー、変わって~」

「誘導はいいのか?」

「後はたぶん、流れでそのままこっちに来ると思う」

 言いつつ俺とブラッキーは位置を交換し、大・虐・殺! の仲間入りを果たす。

 いやあ、こっち来た当初は生き物を殺すどころかさばくのにも抵抗があったってのに、あの頃の俺が見たらびっくりだよな!

 初めはオリハルコンの剣で倒していたが、せっかくなので、色々試してみる事にした。

 オリハルコン繊維で縛ってみるかな。

 と、通路にちょっぴり張り巡らしたら、…………そのまま突っ込んできて、まるでバナナの輪切りのような惨状に……。

「…………」

「オイ」

 怒ったようなブラッキーの声に俺は笑顔で振り返る。

「やっちったv」

「気色悪い」

 そんな一言と共にローキック。痛くないけどびっくりする。

「だーもー、悪かったよ!」

「買い取り価格下がるだろうが!」

「ごめんなさい!」

「そうだぞ! その分アイテム枠開けてくれ!」

「いや、アンタは関係ないよね!」

 横から入って来たアフゥロゥの言葉に俺は首を横に振る。

「けちくさい事言うな」

「ここで甘やかしたら面倒な事になるのは分かりきってるでしょうが」

 誰も彼もが俺も俺もと言ってくるのは分かってる。あいつにやったんだから俺もいいだろうとイチャモンが増えるのは冗談ではない。

 輪切りになってしまったやつは蜘蛛の糸を出して、飛ばす。ぺちっとくっつけてこっちに引き寄せる。それからブラッキーに場所を交換し、気づく。

「あ、もう第二陣生まれてくるかも」

『え!?』

 ここから離れた場所の地面が盛り上がり、そこから新しいモンスター達が体を出してくる。もしくは壁か---あ。天井からも生まれ落ちるのか。一部の大地と空のリンクが切れて、穴だらけの領域になっちゃったな。

 遠くから聞こえてくる咆哮。そして、一時的に落ち着いていた地鳴りがまた激しくなってくる。

「じゃあ、また誘導始めまーす」

「マジかー!」

「流石下層! 生まれるのが早い!」

「これ、結界がなかったらやばいっすねぇ」

「結界がなかったらここでやってねぇけどな」

 そんな会話をしながら次に備えてみんな気持ちを引き締めた。

 こんなやりとりが約二時間半続いた。

 




いつもありがとうございます。

ブクマ等ありがとうございます。


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