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結局、謎のまま

 難しく考えずに頭を空っぽにして読んでください。なんたって玩具箱ですから(笑)

 今日は、天界側、シホーヌから与えられた雄一のチートの話をしよう。


 雄一が持つチートで、武の探究者、魔の一元突破は、シホーヌの正しい加護によって得たチートである。

 肉体強化と教育者は元々、シホーヌの相方に用意された毒が発生しない許容ギリギリのチートを転移と共に練り込まれていたもので、本来は、チートと呼べるスキルはこの2つだけだったはずであった。


 さすがにこれだけでは、と思った神々達がカミレット(シホーヌに着服された)やホルンの手により生活魔法入門といった後付けの道具という形で与えられた。


 ここで、おや?と思われた方はよく覚えてました、花マルな話。


 そう、異世界知識である。


 今回はアレは何なんだ?というお話を披露しましょう。




「痛いのですぅ。ホルン、何をするのですぅ!」


 シホーヌはアホ毛を摩るように涙目でホルンに非難の目を向ける。


 非難を受けるホルンの手には黄金の毛が握られている。


 ぶぅぶぅ、と騒ぐシホーヌに悪びれない顔でホルンは形だけの「ごめん、ごめん」と謝る。


「その自己主張の激しいのを抜いたらどうなるかと思って?」

「この毛はクセ毛で跳ねてるだけなのですぅ!」


 そう憤るシホーヌであるが、今日もアホ毛はシホーヌの感情を表すように激しく大きく揺らす。


 ホルンは、カミレットを操作すると手元にショートケーキが現れる。


 シホーヌはショートケーキに釘付けになりながら、「謝罪を要求するのですぅ!」とアホ毛をバッタンバッタンと打ちつけるようにするのを見て、ホルンはショートケーキをシホーヌの眼前に持って行くと強奪される。


「ごめんねぇ? 悪気はなかったのよ」

「しょうがないのですぅ、今回は許してあげるのですぅ」


 そう言うとアホ毛をゆっくりと旋回させながら、スキップするシホーヌはショートケーキと共に姿を消した。


 それを見送ったホルンはシホーヌのアホ毛をジッと見つめる。


「これの正体を見極めてやるわ」


 そう言うと少しマッドな香りがする笑みを浮かべたホルンもその場から姿を消した。




 ホルンは、神としての仕事以外にも色々な研究をする女神であった。その志を共にする者達との共同研究所にやってくると、「手に入れたかっ!」と男神が近寄ってくる。


 それにホルンは頷いてみせると男神は勿論、それ以外の神達も「ヨシッ!」と喜びを見せる。


 最初に声をかけた男神、サースは「すぐに始めよう」とみんなに楽しそうに伝えると研究所は慌ただしくなる。


「あの何の力もかかってないのに感情のままに動くアホ毛の秘密を探ろう!」


 その言葉を力強く頷く神々達。


 その顔に浮かぶのはマッドな人そのものであった。



 それからしばらく黙々と調べてたなかでホルンが声を上げる。


「みんな、アホ毛にプロテクトがかかってるわっ!」

「本当か? ホルンっ!」


 真っ先に反応したのはサースで、他の神々達も遅れてホルンの廻りに集まる。


 ホルンはアホ毛を少しだけ切って、机の中央に置くと手を翳す。


「今、プロテクトを解いてみるわっ!」


 そう言うと何やらブツブツと呟くと、アホ毛が軽い爆発音と煙を発生させる。その煙が晴れるとそこにいたのは……シホーヌであった。


 シホーヌと言っても本人ではなく、掌サイズのシホーヌで後ろ手を組んで、腰を横に折るようにしてホルンを見上げながら、「ですぅ?」とフニャと笑ってくる。


 それを見ていた者達の間で痛いほどの沈黙が降りる。


 その中でいち早く立ち直ったホルンは、再び、アホ毛を短く切ると同じようにプロテクトを解除する。


 すると爆発と煙と共にミニシホーヌが現れる。


「私がもう一人いるのですぅ~」

「どうして、どうしてですぅ?」


 と2人になったミニシホーヌはお互いを追いかけるようにして走り始める。


 プルプルと震えるホルンは、走っているミニシホーヌを1人を優しく掴むと豊かな胸にギュッと抱き締める。


 そして、何も言わずに研究所を出ていこうとするのをサースが呼び止める。


「ホルン、それをどうするつもりだっ!」

「何を言ってるの? こうなったら長期戦で生態観察するのが基本でしょう?」


 言ってる事はかなり真っ当であるが、頬を染めて、若干、息の荒いホルンを不安そうに見つめるサース。


 ホルンは突っ込みを受ける前に、「またねっ!」というと研究所から出ていく。


 サースは、ホルンの行動を溜息で流すと、後ろから、「ですぅ? ですぅ~」と複数の声がするのを聞いて慌てて振り向く。


 サース以外の若い神達が、ホルンのようにプロテクトを解いたミニシホーヌを抱き抱えながら良い笑顔を浮かべて口を揃えて言う。


「「「私達も生態観察をしておきますっ!」」」


 そういうと研究所から出ていく神達を見て、呆れた顔を向ける。


 振り返ると最初に解除したミニシホーヌが、よく事情が理解できてない顔してこちらを見ている。


「これをどうしろと?」


 対応に困ったといえ、処分するのは躊躇われた為、しばらくサースは面倒を見る事になる。


 そして、シホーヌが地上に行くという話が上がり、その相方に与えるチートでの会議で、サースはミニシホーヌの使い道に気付き提案する。


 ミニシホーヌにマイクを持たせて、サースが持つ知識が自動更新される本を手渡す事で、雄一に異世界知識というスキルをつける事に成功する。


 だが、ミニといえど、シホーヌである。よくサボるので、機能しない事もままあるが、サースはミニシホーヌをお払い箱に出来た事を喜んだそうである。



 サースにとっては、お荷物であったが、若い神々達に取っては癒しとして普及していった事は別の話である。

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