勢いで書いた、反省はしている、できればもう少し早く出すべきだった、でもまあ、そういうところあるから私
なんだってこう上手くいかないんだと嘆いてはみるけれど、自分自身が今の状況を、それほど悪くないものとして受け入れている自覚はあるから、多分これは一応の弁明なのだろう。誰に対してなのか、何に対してなのか、それは口にしている自分にも分からないけれど、それでも、これは言い訳なのだ。言ってしまえばただそれだけのこと。それだけのことなんだ。
クリスマス、公園で、二人きり。酔いを醒ますためのココアを飲みながら、ベンチで肩を寄せ合う二人。男と女。先輩と後輩。シチュエーションとしては及第点だし、距離感に関してはもうベストとしか言いようがないのではないかな。まあ、恋人同士じゃないんだけどね。
部分点をかき集めてなんとか再構築してはみたものの、それで状況がどうなるってことでもないのだなぁとしみじみ想う。なんってったってこれは本当に、ただ寒いから身を寄せ合っている、そんなあぶれた二人な私達でしかないわけだから。
市立大学公園。近くに大学がある、それ以外特に特徴のない、真新しい公園。繁華街、市立大学の両方のちょうど中間地点辺りにあることから、私達はよく利用している。くる時は大体いつも、今横にいるこいつと一緒。理由は簡単。私達だけがあぶれるから。
今日は、今日こそはカラオケで、徹夜して、あーもう若くないんだって、そんな遊びが出来ると思っていたのに、サークルの仲間達はことごとく一次会で解散。クリスマス寂しくないもん会っていう、この、なんだ、私企画にさ、付き合ってくれたことには感謝なんだけど、それでも一応、終わったらすぐに用があるって言っておいて欲しかったなぁ。
非電源ゲームサークルなんてのは、もう、そういうさ、集まりだと思って入るわけじゃないさ。実際そうだったんだけどさ、でもなんだかんだ、私と後輩以外の部員は、彼氏彼女が出来たらしいのよ、今年は。
それで、いつものごとく、二人きり。クリスマスだからって何にも変わんない。こういうのもいいかもしれないな、と思わないって言ったら嘘になるよね。
ここまではよかった。よかったのよ。何もなかったから。むしろこのままで終わればよかったかなって思ってるところもあるのよ、今でも。この後何があったかって?そんなもん、後輩がさ、告白してきたのよ、私を、好きだって。
そうか、私が好きか。そうか。うん。うん?その後こいつは、予定が無かったらでいいから、どこか、一緒に行きませんか、だってさ。純朴だね。真正面だね。なんとも正々堂々としているじゃないか。素面だったら笑いながらはぐらかしてたよ、きっと。
でもそのときの私は、しこたま酔っ払っていたし、クリスマス寂しくないもん会のことがあったからさ、もう、本当に、頭に来てさ、思いっきり怒鳴っていたんだ。
なんだって今更そんなことを言うのか。会の準備をしている最中、私が何度彼氏が欲しいと嘆いていたか。その嘆きが嘘じゃない事を知っていながら、今の今まで黙ってみていたのか。確かに何度か悪ふざけで、いっそ付き合ってしまおうかと、言ったさ。言ったよ。おちょくってたし、自虐ってたよ。でもね、でもさ、だったらさ、今じゃないじゃないか。クリスマス会が、始まる前にさ、言えたじゃないか、言えただろう。クリスマスさみしくないもん会が、ちゃんとさみしくない会になっていただろう。それを、君は、もう、本当に。
気づいた時には拳を握って、半ば振り上げていたよ。おびえながら、泣きながら、こっちを見る君を見て、我に返るまで、私は確かに修羅だった。クリスマスを憎む、修羅だった。
まあ、うん、でも、なんだ、一旦冷静になると、酒の勢いもあったし、怒りに任せて火照った体を沈める必要もあったから、うん、そう、ね。結論から言うと、付き合っちゃったよね、私達。関係性は、あんまり変わらなかったけど。今もなんか、先輩と後輩って感じだけど。それでもなぁ、なんかなぁ、ちょっとだけ、釈然としない。もうちょっといいクリスマスが、過ごせたんじゃないかって思うのさ。だから、来年のクリスマスは、二人で過ごすんだ。絶対に、一緒に、クリスマスを過ごすんだ。来年のクリスマスは、寂しくないもん。