第2話【便意を押し殺す生徒たち】
ある日のことである。その日の最後の授業が終わったときのことだった。大五郎は妙な異臭に気づいたのだ。そして大五郎は自分の右斜め前の男子生徒のコズミに『なんか臭くない?』と訊いた。しかしコズミはクールな表情で『そう?』といっただけだった。
それからみんなが席を立って下校し出したときのことである。大五郎はさっさと教室を出ていったコズミの座っていた席に目を落とすと、そこはかすかに茶色っぽく染まっていたのだ。その瞬間、『……どうやらさっきの異臭は、コズミがもらしたもののようだな』と大五郎は悟った。
学校のトイレでの大便━━これは、その学校内での【死】を意味していた。もしも学校のトイレで大便などしようものなら、その生徒は卒業するまでクラス中から後ろ指をさされてバカにされ続ける日々を確実に余儀なくされる。そのためすべての生徒たちはどれだけ便意に襲われようと、全授業が終わるまで必死に我慢するしか道がないのであった。
大五郎は学校という特殊な環境ゆえの緊張感からか便意に襲われた経験はないのだが、学校のトイレで大便をしたらクラス中からバカにされなければならない現状にかねてから疑問を抱いていた。
大便は小便と同じ自然現象である。人間誰しもおこなう行為だ。おこなわない者など地球上に存在しない。それをなぜ学校のトイレでしてはならないのか?そもそも学校のトイレで大便をした者を世界ではじめてからかい、あざけ笑った者はどこのどいつなのだろうか?
いくら考えてもいくら調べても答えは見つかりそうにない。それなら自分自身の手で現状を変えなくてはならない━━大五郎は拳をぎゅっと握りしめて決意をかためた。




