その5
結局。病院からひたすら三時間歩き続け、二人は錬の部屋にまで帰って来た。時刻は既に午後八時を回っており、加えての歩きっ放しで腹の虫も号泣し始めていた。なので、錬としては一刻も早く飯にありつきたかったのだが、ハルは、
「まず先に掃除をします」
と言って聞かなかった。錬の部屋の散らかり具合はハルの想像に相応するレベルを相当に超えており、彼女曰く『こんな部屋で食事は出来ません』と思える、思わされるほどの惨状であるらしかった。確かに、ゴミ屋敷とまではいかないものの、駄目人間の典型的な散らかり様、汚れ様であることは、錬自身否定できない事実であった。
「よくもまあここまで……。静香が心配になるのも分かりますよ。あの掃除機はオブジェかなにかですか?」
「いや、機能美溢れた実用品だけど」
「前に使ったのはいつですか?」
「さあ? 僕が来る前からあったことは知ってるんだが」
「つまりアナタがこの部屋に入ってからは一度も使っていないと? 掃除機をかけていないと言うのですか!? あまりにも不衛生です! いえ、ここまでくるともはや不摂生です!」
ハルは怒っていた。錬は怒られていた。
「さあ、掃除しますよ! 勿論、レンさん……いいえ、レンも手伝うのです!」
「え? いやまあ、一緒に掃除するというのは全然構わないんだけど。この部屋の惨状は僕をさん付けしたくなくなるほどに酷いのか?」
「酷いです」
即答であった。




