表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
綺石のクラウン  作者: もももか
第十章 『セラフィナイト』
95/145

IV

翌日。

サンドライト城の城門前で見た光景にセラフィナイトは頭を抱えた。

クオンタムから借りたと言う質素な服を着た主君がいたからだ。

「うん、背丈も似てるから丁度いいね」

服を貸してやったクオンタムは満足気にアレキサンドライトのコーディネートを眺める。

だが、堪えきれずに笑ってしまい、腹を抱えた。

「何故笑う?」

「だって……!アレクがそんな質素な服着てるの、可笑しいんだもん……!」

「そんなに変か?」

思わず不安になり、自分の姿を見る。

糊も効いていない、緩いシャツとボトム。

自分自身、民衆服を着るのは初めてだったため、今一感覚がわからないでいた。

「ううん、大丈夫。絶対バレないよ!」

「笑いながら言われても信用できないんだが……」

そこに、丁度支度の出来たルーベライトがやって来た。

「お待たせしました」

城のメイドから借りて来たと言うレースが付いたブラウスと、刺繍が入ったロングスカートをひらりと揺らした。

いつも見る薔薇色のドレスとは違うが、今の姿も親近感が湧いて素敵だとクオンタムは思わず頷いた。

「うわぁ!ルーベさん似合うね!そのスカート可愛い!」

「ありがとうございます」

ルーベライトも花柄の刺繍が入ったスカートが気に入ったのか、その場でくるりと一回りしていつもと違う服装に満足していた。

「これなら問題ないだろう?」

アレキサンドライトはセラフィナイトに言ってのけた。

変装した二人を交互に見つめ、セラフィナイトは再度頭を抱えた。

「あれ?陛下!?どうしたんですかその格好!?」

偶然通りかかった近衛兵四人組がアレキサンドライトの姿を見るなり声を上げた。

「サンドリアまでお買い物だって。ね?」

「美味しい紅茶を探してますの」

クオンタムとルーベライトが楽しそうに答えるものだから、四人組は物珍しさにアレキサンドライトに近寄る。

「陛下、本当にその格好で行くんですか?」

「俺長い間務めてますけど、陛下のそんな姿初めて見ました」

「何処行くんですか!?」

「それなら溶け込めますしバレませんね」

四人組から一斉に詰め寄られ、アレキサンドライトは段々恥ずかしくなったのか顔を赤くして逃げるように顔を背ける。

「ダメだよ君たち、アレクはこれからデートだから忙しいの。ほら、仕事に戻りなよ」

そう上から目線でクオンタムが言ったものだから、更に四人組はアレキサンドライトに詰め寄った。

「陛下、姫様とデートですか!?」

「俺そんなの聞いてません!」

「いいな〜俺も遊びに行きたい!」

「お忍びデートとか粋ですね!」

「うるさい!さっさと宿舎に戻れ!!」

余りに茶化すものだから、とうとうアレキサンドライトの声が飛んだ。

「陛下、本当に行かれるおつもりですか?」

「当たり前だ。何のためにこんな辱めも耐えていると思っている」

「辱めとは心外だな。それ僕の服なのに」

「そんな格好なさらずとも、やはり私が行きましょう」

「ルーベと約束した。街を簡単に案内して買い物したらすぐに戻る。だからいいだろう?」

「僕も途中まで一緒に行くから許してあげなよ」

しかしと食い下がるセラフィナイトに、ルーベライトが言う。

「欲しいものが買えましたらすぐに戻ります。ですから少しの間だけ許していただけませんか?」

お願いしますと両手を合わせ言われれば、セラフィナイトはますます首を横に振れなくなった。

「……仕方ありませんね」

やっと折れてくれた事にアレキサンドライトは安堵した。

「但し、危ない所には行かない事。夕暮れまでには戻る事。知らない者に声を掛けられても付いて行かない事。守れますね?」

「子ども扱いするな」

隣でクオンタムがまた笑っている。

「守れない場合は城に戻っていただきます」

ぐっと言葉を詰まらせるアレキサンドライトに、思わずルーベライトもクスクスと笑う。

「危ない所には行かない。夕暮れまでには戻る。知らない奴に声を掛けられても付いて行かない。これでいいだろう?」

「わかっていただけたら結構です」

良かったねとクオンタムが言うと、ルーベライトは満面の笑みを浮かべ頷いた。

「あ、ちょっと待ってアレク!これ忘れてる!」

そう言いながらクオンタムは鞄から折りたたまれた帽子を出した。

「君の髪色目立つからね。これで良し!」

長い赤髪を中に入れながら被せてやる。

「お似合いですわ」

そう笑顔でルーベライトから言われ、アレキサンドライトは顔を赤くした。

「じゃあ行ってきまーす!」

元気なクオンタムの声と共に、三人は城門をくぐり、街へと続く坂道を下る。

それに手を振って答える近衛兵四人組。

「陛下もとうとうデートする年頃になったか〜」

「今まで戦続きでそんな状況じゃなかったからな。息抜きくらい必要さ」

「あれ?なんで俺泣いてるんだろ?」

「小さい頃から見てきたからね、娘がお嫁に行っちゃうお父さんってこんな気持ちなんじゃない?」

散々笑い合った後、姿が見えなくなったのを見届け城に戻る。

「さ、陛下も行った事だしお仕事に戻りますか」

「仕事って言っても何もする事ないんだけどね」

揃って帰ろうとする四人組をセラフィナイトが引き止める。

「お前たち、何処に行くつもりだ?」

「え?宿舎ですけど?」

「仕事があるだろう。お前たちの任務は何だ?」

「そりゃあ陛下をお守りする事ですけど……え??」

セラフィナイトは何も言わず城門を指差した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ