III
「駄目です」
その日の夕食時。駄目元でセラフィナイトに聞いてみたが、やはり思った通りの返事が返ってきた。
「姫も陛下も、ご自分の置かれた立場を自覚してください。何かあればどうするのですか」
「サンドリアは他の街と比べて治安も安定している。今までも数回出向いたが何もなかっただろう」
「その油断が命取りです。命を狙う輩はその時を狙って来るのですから」
もっともな意見を述べるセラフィナイトに、アレキサンドライトは返す言葉がなかった。
空になったグラスに水を注ぎ、それを渡してやりながらセラフィナイトは続ける。
「それに今、遊んでいられる状況ではない事くらい、陛下も重々ご存知のはずです。欲しいもがありましたら私が買ってきましょう」
「彼女は自分の目で街を見て歩き回りたいんだ。サンドライトにいるのに、ずっと城の中でも退屈だろう」
「いくら陛下のご相談でも駄目なものは駄目です。諦めてください」
アレキサンドライトは傍に置いてあった書類に目をやる。
この連日、寝ずに対応してきた軍議がやっと一段落し、明日は一日静養にと公休をもらっていた。
いつもの公休は読みかけの本を読んだり、愛馬のカメオと乗馬を楽しんだり、体を休めるために使っていた。
だが、自由が効く数少ない日だというのと、彼女の喜んでいた顔を思い出し再度セラフィナイトに問いかけた。
「この数日寝ずに切り詰めていたんだ。私の小さな我儘くらい聞いてくれないのか?」
「公休は体を休めるためにあります。これ以上お疲れになっては体に負担がかかります」
「じゃあ疲れずに安全に回れたら問題はないな」
「……何をお考えですか?」
アレキサンドライトは、自分の閃いた案に賭ける事にした。




