表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
綺石のクラウン  作者: もももか
第一章 『アレキサンドライト』
7/145

VII

遠くで声がする。

仕切りに自分を呼ぶ声だった。

聞き慣れた声に重い瞼を押し上げると、間近にセラフィナイトの顔があった。

「陛下!陛下!!しっかりしてください!!」

夜が開け、白い朝の光を照らす教会。

慌ただしく掛ける足音。

周りには見慣れた数人の兵士と元老院の大老が自分を取り囲んでいた。

意識が戻ったのを確認すると、セラフィナイトは近くにいた兵士に早く主治医を呼ぶように声を張り上げた。

「セラフィ……ナイト……?」

「陛下、大丈夫ですか!?今主治医をお呼びしています。どこか痛む所は?」

自分があれから気を失ってしまったのだと理解したアレキサンドライトだったが、まだ夢の中にいるような、曖昧な記憶を辿る。

腕の痛みはない。

結晶化していた指先も、血が通った、見慣れた肌の色をしている。

感覚も不自然な点はなかった。

「私なら大丈夫だ。すまない、思いの外疲れが溜まってそのまま寝てしまったようだ」

「こんな所でですか?」

「月が、見たくてな。そのまま……」

咄嗟の言い訳に、セラフィナイトの顔の険しさは戻らない。

「倒れていたように見えましたが」

「本当に大丈夫だ。悪い夢でも見ていただけみたいだ」

アレキサンドライトは体のどこにも異常がないのを確認する。

主君の変わりない容態にやっと胸を撫で下ろしたセラフィナイトは、念の為主治医に見て貰いましょうとアレキサンドライトに手を差し伸べるが、一人で歩けると手を拒まれ、周りの兵士たちに通達を送る。

「陛下の寝室に主治医をお連れしろ。他の者は警護を怠るな」

まだ夢の中にいる感覚から醒めないアレキサンドライトだったが、ふと目に映ったのは親指の腹に一筋の真新しい切り傷。

そして、すぐそばに転がっていた一つのチェスピースのようなもの。

取り上げたそれは、獅子を模した深緑の石でできたピースだった。

その色に見覚えがあり、アレキサンドライトは左腕を捲る。

腕にあったはずの奇石きせきが消えていた。

振り返ったセラフィナイトに気付かれぬよう咄嗟にそれを隠し、平装を装う。

「陛下、本当に大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫だ。心配をかけてすまなかった」

「念の為、今日一日はご静養してください。戦の処理は出来る範囲で我々が行います」

アレキサンドライトは立ち上がると、誰にも気付かれぬようそのピースを懐に入れた。

同盟国ラズライトの王・ラピスラズリが重症を負い倒れたとの報を聞いたのはその数日後の事だった。

【ロイヤルゲームのルール:1】

『死神に選ばれし七国王ヘプタークがゲームに参戦できる』

王の血を継ぐ者は七国王ヘプターク

そうでない者は生贄サクリファイスとしてロイヤルゲームに参戦できる

代償として、己の奇石きせきを差し出し、ピースに変えなければならない

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ