V
セラフィナイトに部屋中を確認してもらい、大丈夫ですよと声を貰ってから、アレキサンドライトはやっとの事で自室に足を踏み入れた。
自室に入れるのは今朝方の騒動で慌てて部屋を飛び出して以来だった。
目を通さねばならない資料や、提出予定の書類など全く手を付けれていない。
机の上に放置したままだったが、今朝の白猫がまだ部屋に忍んでいたらと思うと恐怖で近寄れなかった。
だが、日も落ち休む時間となってしまい、いつまでもそうしていられないと恥を忍んでセラフィナイトに頼んで部屋の中の確認をしてもらったのだった。
「……助かった、恩に着る」
「今日はお疲れでしたでしょう。ゆっくりお休みになってください」
「休めるわけがないだろう。まだ心臓がビクついているくらいなのに……」
そう半ば投げやり気味でベッドに体を投げた。
机に広げられていた書類を片しながら、セラフィナイトはふと疑問に思う。
「それにしても、今朝の猫は何故陛下の部屋に入ってきたのでしょうか?」
「こっちが聞きたいさ」
「光り物でも見つけたのでしょうか?」
そう言ったそばから、ある物が目に入る。
深緑の獅子の形をした駒。
きらりと光るそれに思わず手を伸ばした時だった。
寸の所でアレキサンドライトに先に取り上げられてしまう。
「何ですか?それは?」
見慣れないものに尋ねると、アレキサンドライトはぎこちない笑みで取り繕う。
ロイヤルゲームの参戦者の証である駒を彼に知られるわけにはいかなかった。
「こ、これは、前にクオンタムから貰ったんだ。ペーパーウエイトにって」
「クオンタム様からの物にしてはずいぶん洒落ていますね」
「褒めていたって伝えておくよ」
「贈り物を並べられるのはいいですが、少しは整理整頓を心がけてください。陛下の悪い癖です」
そう言い、今日提出予定だった書類を見つけるなりセラフィナイトは頭を下げて部屋を出て行った。
パタリと扉が閉まる音を聞き、アレキサンドライトは詰めていた息をゆっくりと吐き出した。
そんな部屋の様子を伺う、ベランダの外の高い木にギラリと光る二つの目の存在に、彼は気付いていなかった。




