XIV
自室のベッドの上。
トパーズは三角に足を折り、気力もなくただぼうっとしていた。
いつもは元気が有り余りすぎていたずらをしたり、勉強を抜け出したり、とにかく世話の焼けるトパーズ。
そんな彼がここ数ヶ月、ずっと落ち込んでいたのは周知にあった。
やっと元気が戻ってきたと思っていた矢先、この落ち込み様に家臣らもどうしたものかと様子を伺っていた。
今は自分たちが出て行くより、自然と落ち着くのを待とうと見守っていた扉を閉めた。
静かな部屋。
窓に何かが当たる音がして、目を向けた。
何もなかった。
ため息を吐いて視線を戻すと、また何かが当たる音がした。
小石が窓を叩く小さな音。
気になって窓を開け、ベランダの外を見る。
自分を呼ぶ小さな声が聞こえ、下を見た。
驚いた。
木に登ったシトリンがいた。
運動が得意でない彼に、自分が教えたやり方を使って。
「遊びに行こう」
久々のお誘いに、トパーズに笑顔が戻った。
知り尽くした街の中を走る。
大通りだと人が多いから、それを避けるように橋を渡って裏路地を行く。
楓の木々の間をすり抜ける。
「どこ行くんだ?」
「着いてからのお楽しみだよ!」
先を行くシトリンは楽しそうだった。
トパーズには気になる点があった。
それを口に出したくはなかったが、自分とシトリンが遊ぶのなら聞いておかなければならないと思い、意を決し尋ねた。
「なぁ、お前のお父さん……」
「大丈夫!」
聞かれるとわかっていたのか、先にシトリンが言った。
「父さん、今他所の街に行ってるから。しばらく街で誰も演説しないよ!」
トパーズは笑顔で頷いた。
着いたのはとある家だった。
「さ、入って!」
躊躇うトパーズだったが、背中を押されて無理やり家の中に入れられてしまった。
キッチンで知らない女性がいた。
シトリンの母親だ。
「あら、いらっしゃい。シトリンのお友達?」
「そうだよ」
「狭い家だけどゆっくりして行ってね」
座らされたテーブル。
甘い匂いと共に出されたのは自分の大好物だった。
「パンケーキだぁ!」
「母さんのパンケーキ、すっごく美味いんだ!トパーズも食べてみてよ!」
「あら?王子様と同じ名前なのね。トパーズ君、シロップ何がいい?」
「オレはちみつ!」
「じゃあボクメープル!」
たっぷりとシロップがかけられたパンケーキを、二人で頬張る。
「おいひー!」
「だろ?」
「沢山食べてね」
美味しい美味しいと二人が食べてくれるので、シトリンの母も笑いながらおかわりを焼く。
違うシロップの味も試したくて、皿を交換し、数口食べてからトパーズはシトリンに尋ねた。
「なぁ、シトリン」
「何?」
「お前さ、こぉ〜んなでっかいパンケーキに、こぉ〜んないっぱいシロップ掛けて食べてみたくない?」
「う〜ん……素敵だけど、ボクはいいや」
「なんで?」
「なんでって……そんなにいっぱい食べれないよ。ボクは今食べてるくらいで十分かな」
「そっか。それもそうだな」
「なんでそんな事聞くの?」
「内緒〜」
「ヘンなの」
二人で食べた小さなパンケーキは、何よりも美味しかった。
【ロイヤルゲームのルール:6】
『キャスリングは夜十二時を原則とする』
キャスリング後六時間以内に決闘場に現れない場合、戦意放棄とみなし該当の七国王の負けとなる




