VIII
女性陣が食後のデザートを楽しむ隣、トパーズの持ってきたチェスボードで突発のチェス大会は始まった。
ゲームを始める前、ルーベライトとセレスタイトから加減をしてあげてくださいと言われていたので、アイオライトは適当に駒を動かしていた。
しかし、それもターンが回るにつれ感付かれてしまったのか、トパーズは声を大にして怒った。
「お前!やる気あるのか!?」
「お前とは何だ!小僧のくせに生意気な!」
「誰が小僧だ!これからでっかくなるんだ!!」
並べていた駒をなぎ倒し、トパーズは言う。
「オレは本気の勝負がしたいんだ!!」
目に余る行動にとうとう王からも怒りの言葉が飛んできた。
「トパーズ!好い加減にしないか!」
しかし、一連の流れを見ていたアレキサンドライトは散らばった駒を拾いながら声をかけた。
「そうだな。手加減するなんて失礼だったな。悪かった」
アイオライトと席を代わり、駒を定位置に並べ直す。
「次は私が相手だ。加減はしないから本気でやろう」
「……本当だな?」
「こう見えて幼少から城の腕利きに仕込まれてきた。私は強いぞ?」
袖のカフスを外し、腕を捲る。
笑いながら言うと、トパーズは渋々席に座り直す。
隣には黒いクマのぬいぐるみも一緒に座っている。
「いいだろう。やってやる」
「それは良かった」
「そこのお前!お前とは後でやり直しだ!そこで黙って見てろ!」
「なっ!?誰に向かって口をきいている!?」
憤怒するアイオライトを宥め、言われた通り自分の隣に座らせた。
「始めようか」
先攻はトパーズだった。
しばらくは自分のペースでゲームを進められていたのか機嫌が良かったが、中盤からアレキサンドライトの巻き返しが凄かった。
隣に座っていたアイオライトもこんなやり方があるのかと度々頷いてアレキサンドライトの手を眺めている。
ルールがよくわからないルーベライトとセレスタイトも、彼のゲームメイクに感心して一緒になってチェスボードを見つめていた。
「チェック」
アレキサンドライトの言葉にトパーズは目を見開く。
何時の間にかキングの駒の逃げ道がなくなっている。
自分の駒をどう動かしても逃げれない。
「……オレの負けだ」
悔しくも潔く認めたトパーズの頭をポンポンと撫でてやる。
「私が君くらいの年だった頃、君ほど強くなかったよ。大したものだ。回数を重ねればすぐ私を追い抜くよ」
そう言いながらチェスボードを片している時だった。
「もう一回!」
「え?」
「まだだ!もう一回する!」
「トパーズ、陛下が困るでしょう?」
王妃の言葉に嫌だ嫌だと駄々をこねるトパーズ。
明日は予備日として一日アラゴナイトに滞在する予定だった。
明日仕切り直してもいいが、それだと彼の気が治まらないだろうとアレキサンドライトは考えた。
「いいだろう。今日は好きなだけ付き合うよ」
「アレク、いいのですか?」
ルーベライトの心配に笑って答える。
「先にセレスタイトと戻っていてくれ。朝までには戻る」
もう一度駒を並べ直し、トパーズに向き直る。
「さ、始めようか」




