V
走ったために息が上がり、庭園の影に座り込むトパーズ。
胸に抱かれたベルフェゴールは優しく声をかけた。
「坊ちゃんは間違っていませんよ。中立国の王子として、自分の置かれた立場がわかっていらっしゃる賢君です」
「……オレは、シトリンと離れたくない」
トパーズはベルフェゴールを抱き締め言う。
「アラゴナイトは昔から戦をせずに西と東、どっちにも良い顔をして逃れて来たんだ。だけどもうそれもできなくなってきてる。西と東、どっちに付くか迫られてる。父さんに笑って近付いて、戦に協力しろって言ってくるのなんてしょっちゅうだ。父さんはずっと悩んでる。どうしたらみんな丸く収まるかって。そんな父さんのやり方が気に入らないって思ってる人たちがいるんだ」
「彼のお父さんですね」
こくりと頷く。
「毎日武器を取って立ち上がろうって皆に話してる。危ないからって街でも遊べなくなった。もし皆が武器を取って戦おうってなったら、オレはシトリンと会えなくなる。同じ国にいるのに敵同志になる。そんなのは嫌だ……オレは、シトリンと一緒にいたい」
ぎゅっとベルフェゴールを抱く力が篭る。
「西も東も、オレが七国王を倒して言うこと聞かせれば、誰も戦わないで済む。シトリンの父さんだって武器を取らなくて済むだろ?」
「グッドアイデアです!坊ちゃん」
「だからまずはあの赤毛を倒す!言うこと聞かせて、戦をやめさせるんだ!」
「その意気です!坊ちゃん」
「そうと決まればまずは偵察だな!もうすぐ式が始まる、行こう!」
トパーズの足取りはどこか軽かった。
光を宿し、前しか見えていなかった。
「そう言えばベルフェゴール、ロイヤルゲームってどんなゲームなんだ?」
「どんなゲームとは?」
「実はオレ、あんまりよく知らないんだ。本に書いてるのってヘンテコな字で読めなくてさ。ゲームって言うくらいだから、ボードゲームか何かなのかな?」
「……そうですね。簡単に言えばチェスみたいなものですかね?」
「そっか。チェスか、絶対負けないぞ!」
「……坊ちゃんのそこまでして叶えたい願いとは何なんですか?」
「へへ、聞いて驚け?こぉ〜んなでっかいパンケーキに、こぉ〜んないっぱいシロップを掛けてシトリンと食べること!本人には内緒だからな!」




