VI
ルーべライトは人目に付かない場所で先程の黒い紙をアレキサンドライトに見せる。
「見えますか?」
アレキサンドライトは書かれた文字を辿り、それを読み上げる。
「……今宵、時を刻む針が十二を示す時、キャスリングされたし……」
「ロイヤルゲームの知らせですわ」
この字は以前にも読んだ事がある。
黒い紙に白いインクで綴られた文字。
先日死神ルシファーから渡された黒い手紙と同じだった。
黒い手紙の最後には『強欲の駒を所持する者』と綴られている。
「『強欲』の駒……?」
「ネフライトの事です」
再戦告知ですとルーべライトは続ける。
「死神からの手紙は契約している人間にしか読めません。現に先程クオンタム様には見えなかったようです。貴方を倒すため、再度ロイヤルゲームをする気なんでしょう」
「そんな……!でも彼奴は怪我を」
「ネフライトの生贄は私以外もいるそうです。きっとその方がお相手でしょう」
「……また私は、戦わなくてはならないのか?」
あの命のやり取りをまたする気でいるのか。負傷しているのも関わらず、どうしてそこまで。
「きっとネフライトは貴方に勝つまで申し込んでくるでしょう。貴方に勝てばサンドライトは彼の手中になりますもの。『ロイヤルクラウン』を狙っているのなら、尚更……」
自然と手紙を持つ指先に力が篭る。
「私も共に参ります」
「……その必要はない。私一人で行く」
「生贄を所有する者は共に参戦するのがルールです。でなければ、扉は開きません」
覚悟をしてくださいと、力んだアレキサンドライトの手を握る。
「これが、ロイヤルゲームに身を投じた者の宿命です」
彼女の決意は、揺るぎなく、強い瞳が見て取れた。
そんな彼女に、アレキサンドライトは心に決意する。
「……わかった。今宵、終わらせよう」
血で血を洗う、この戦いを。