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綺石のクラウン  作者: もももか
第十三章 『アメジスト』
136/145

VIII

夜。

アレキサンドライトは自室で資料を眺めていた。

ラズライトが独自で調査した全てだと、アイオライトから渡された。

『今更渡しても遅いのかもしれないが。敵の事を、少しでも知っておいた方がいい。例え、どんな内容でも……』

シャーマナイトで起きたモリオン一派のクーデターに関するものだった。

複雑な表情で渡されたその資料を読み進める。

内容は壮絶なものだった。

先々代のシャーマナイト王は、サンドライトとの和平協定が結ばれる間近に、王座を狙っていたモリオンに襲撃された。

その際に王は勿論、王妃、世継ぎの王子も殺された。

唯一生き残った王女・オニキス。

彼女もまた、襲撃された際に腹を貫かれ重症を負った。

傷は年を経て回復していったが、刺された際に子を妊れない体になった。

襲撃された際に居住していた城は火にかけられ証拠は一切残らなかった。

家族も城も、味方となってくれる存在も失った彼女が残された道は、モリオンの養女になる事だった。

彼女は数年の間、モリオンが統治するシャーマナイトで育てられた。

だが、世継ぎを産めない彼女は政治の道具として使えなかった。

肩身も狭く、屈辱的な事もあっただろう。

仇なす相手の養女でいる事、それがどんなに堪え難いものだっただろう。

オニキスが年頃になった頃、モリオンは何者かに襲撃された。

皮肉にも、シャーマナイト王を襲撃した時のように、居住していた城諸共、全てを焼かれた。

記述によると、現女王であるプラチナ一派のクーデターと書かれていた。

今の女王の体制に変わる際、プラチナは自分の邪魔な存在となる者は全て処刑した。

その際にオニキスも処刑され、歴代続いていたシャーマナイトの王の血は途絶えたと記されていた。

この辺りの真相は誰にも分からないが、資料を全て読み終えた頃、アレキサンドライトは言いようのない虚無感に駆られた。

そして、後悔もした。

あの時、幼い頃に遊んでいた時に、彼女をシャーマナイトに帰さず引き止めていたら、こんなことにはならなかったのだろうか。

何かあったら自分を呼んでと約束したのに。

結局助けてあげられず、今の現状を招いてしまった。

オニキスは、自分の言葉を覚えていたのだろうか。

襲われた時、自分の名を呼んでいたのだろうか。

『この世界は実に正直だ。強ければ生き、弱ければ死ぬ……我は弱者で死にたくない』

シャーマナイト城で自分に放った言葉。

もしプラチナがオニキスだったとしたら、彼女の生きてきた背景を知ると、今のシャーマナイトの徹底した軍事主義にも納得できた。

強い存在にならなければ、生き残れなかったのだ。

『生きていたら、ルーベのような美しい姫になっていたのかと思うと、他人事のように思えん』

いつか酒の席でアイオライトが語ってくれた事を思い出した。

彼女が可憐で美しい姫になる事は、許されなかった。

窓の外を見上げた。

連日雨が続いていたサンドライトは、今夜は偶然にも雲の合間から月が見えていた。

複雑で抱えきれない気持ちを引きずり、アレキサンドライトは部屋を出た。

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