XVI
「スギライト」
「何でございまし?」
「今夜は私と貴様が協力し合うタッグゲームでいいのだな?」
「はい。その通りでございまし」
「では……後ろにいるのは誰だ?」
青空が広がる決闘場。
先に足を踏み入れていたアイオライトは隣のスギライトに訪ねた。
視線を向けると、白くて長いローブで姿を隠している人物が一人。
近くに控える死神・サタンにお前の仲間かと訪ねたが首を降られた。
「ワタクシのオトモダチです。今夜のロイヤルゲームを聞いて応援に駆けつけてくださいました」
「部外者は決闘場に立ち入れないはずだろう。何者だ?」
「それはワタクシの口からは申し上げれません。あの方から口止めされていますので」
チラリと視線を向けると白いローブの人物は微動だにせず、その場に立ったままでいる。
アイオライトは辛抱できず、その人物に声をかける。
「貴様、何者だ?」
「………」
「ここは部外者以外立ち入れないはずだ。どうしてここにいる?」
「………」
「黙っていないで何とか言ったらどうだ?」
「………」
「貴様!好い加減にしろ!!」
何の返事も返さない白いローブの人物にアイオライトがとうとう声を荒げた。
その時、前方の扉が開かれた。
現れたのは七国王のプラチナ。生贄のアメジスト。死神のレヴィアタン。そして、黒い軍服に身を包んだアレキサンドライトだった。
白いローブの人物が微かに動いた。
「二対二でゲームをして欲しいと言った腰抜けはお前か?アイオライト」
足を踏み入れるなりプラチナは煽るように尋ねた。
アレキサンドライトもまさかの人物に驚いて目を見開いた。
「一人で戦うのが怖くて仲間を呼んだか。何処までも面倒な男だ」
「サンドライトは西国同盟になくてはならない存在だ。アレキサンドライトは意地でも返して貰う」
エストックを鞘からすらりと抜き、切っ先を向ける。
「アメジスト、私が相手だ」
かつて自分の部下だったアメジスト。まさかこんな形で再会するとは誰が思っただろう。
名を呼ばれ、数歩歩み寄るとアメジストは剣に手をかける。
ゆっくりと鞘から抜き、アイオライトと対峙する。
「……今でも私が憎いですか?殿下」
混血の身でありながらラズライト精鋭の聖十字軍に属して居た事。
妹のルーベライトと恋に落ちた事。
アイオライトにとって、自分の全てが許せなかったのだろう。
だからロイヤルゲームの駒として自分を選んだ。
アメジストは全てわかっていた。
「貴様の犠牲でラズライトは救われた。そのことには感謝している。だが、ラズライトに危害を加える存在を、私は見過ごすわけにはいかない。貴様をロイヤルゲームの駒にしたのは私だ。その貴様をここで止める……それが私に課せられた責任だ」
「なら、そこのスカした豚野郎の相手は我か」
カトラスをスラリと抜き、プラチナは切っ先をスギライトに向けた。
「我は今機嫌が悪い。そのイラつく顔、切り刻んで豚の餌にしてやろう」
「随分と物騒な方ですね。レディには優しく接するのが紳士の務めですが、これでは致し方ありませんね」
スギライトも腰のレイピアを抜き、お手柔らかにと構えた。
「……それでは、今からロイヤルゲームを執り行う」
ゆっくりと挙げられた死神・サタンの腕。
その腕が振り下ろされる前に、白いローブの人物が動いた。
「待ってください!」
両者の前に立つ。
聞き慣れた愛らしい声。
脱ぎ捨てられた白いローブから覗く姿。
金色の長くて綺麗な巻き髪、大理石のような白い肌、花のように色づく頬にふっくらとした唇。
何より美しい、薔薇色の瞳。
「……!ルーベ……!?」
見開かれたアレキサンドライトの瞳に写ったのは、剣を携え、着慣れない女性用の鎧を身に纏ったルーベライトだった。
同様に驚くアメジスト。
アイオライトもまさかの事態に驚いて声を上げた。
「そんな……!何故ルーベがここに!?」
「お兄様、黙っていて申し訳ありません。ですが、どうか許してください」
ルーベライトは慣れない手でもたつきながらも剣を抜き、プラチナに向けた。
「プラチナ陛下、私と戦ってください」
「何だと?」
「私が勝った暁にはアレクを、サンドライト王を返してください!」
まさかの発言にアレキサンドライトは言葉を失う。
皆が驚愕する中、一人スギライトが意味を含んだ笑みを浮かべる。
「貴様!どういう事だ!?何故ルーベがここにいる!?何故ルーベが戦わなければならんのだ!?」
すぐさまスギライトの胸ぐらを掴み、今にも噛みつきそうな勢いでアイオライトが吠える。
「マドモアゼルがそうしたいと仰っていたそうで。ワタクシはそれをお手伝いしただけでございまし」
全てが気に入らないのか、プラチナの表情はさらに怒りで歪んでいく。
「どうするの、プラチナ?貴方さえ許せばあの子と戦えるわよ」
レヴィアタンは楽しそうに言うと、プラチナの眉が微かに動いた。
そして弧を描く唇。
「……いいだろう。遊んでやろう」
指を曲げ挑発する姿。
顔に余裕の笑みがこぼれる。
「ですって、サタン」
「了承した」
死神のやり取りを聞き、アイオライトは狼狽する。
「待て!ゲームを申し込んだのは私だ!ルーベは関係ない!!」
「相手が了承している。代わりを立てれるのは一度だけだ。それを拒めば、其方の負けだ」
「そんなふざけたルール、認められるか!」
「それがロイヤルゲームだ」
そう死神・サタンが言うと、ロイヤルゲームを開始する合図である腕を振り下ろした。




