XV
ゆっくりと目を見開く。
埃が充満する暗い物置部屋。
視線の先にある絵画。
記憶の中の少女がそこに描かれていた。
「……オニ……キス……」
自然と呟いた名は、暗く淀んだ空気に溶けていった。
ガチャリと扉が開かれる音がした。
いきなり入ってきた光が眩しくて目を瞑る。
鉄足が床を擦れる足音が一歩、また一歩近付いて、自分の顔の前で止まる。
眩しさにゆっくりと目を開けて見上げる。
アメジストだった。
アメジストは自分の背で縛られていた手の縄を切り、足枷を外した。
「……陛下がお呼びだ」
力の入らない体でなんとか立ち上がり、アメジストの後に続いた。
見慣れない城の中を連れられ、行き着いた先はこの城に初めて足を踏み入れた時の扉の前だった。
死神のレヴィアタンと、プラチナが待っていた。
「こんばんは。調子はどう?」
レヴィアタンはアレキサンドライトに訪ねた。
死神が扉の前にいる理由、それを理解し顔を険しくさせる。
「次は誰と戦うつもりだ」
「勘違いするな。ゲームを申し込んできたのは相手の方だ」
プラチナは凛とした声で言う。
「我に勝った暁には貴様が欲しいらしい。ゲームの景品はキャスリングしなければいけない決まりだそうだ」
レヴィアタンを見ると本当のことなのか、ごめんなさいねと何時もの調子だった。
「さっさと開けろ。つまらぬ茶番に付き合ってられん」
「せっかちさんね。はいはい、只今」
プラチナの方も面倒だと思っているのか、それが態度と言動からも伝わって来た。
レヴィアタンが鍵を差し込み、扉を開けると、何時もの見慣れた螺旋階段が見えた。
先にプラチナが進み、その後をアメジストが続く。
レヴィアタンに言われ、アレキサンドライトもその後をゆっくり進む。
階段を下りると、大きな扉が見えた。
ロイヤルゲームの決闘場。そこに続く最後の扉。
何時もは自分が戦うために開いて来たその扉に、プラチナとアメジストの駒が嵌められる。
ガチャリと鍵が開く音がした。
プラチナが扉を開けようとした時、突然レヴィアタンが声を上げた。
「忘れてた!今日は特別ルールなの!」
「特別ルール?」
「なんでも向こうが二対二でゲームをして欲しいんですって。特に問題もないから勝手に返事しちゃった」
「我も戦えということか?」
「そう言う事ね」
「何故早く言わない?」
「忘れちゃってたの。ごめんなさい」
悪びれもなく笑いながら言うレヴィアタンにプラチナは舌打ちする。
「……陛下」
「貴様が二人分戦えば良い話だ。とどめは我が刺す」
相当機嫌が悪いのが見て取れた。
アメジストはそれ以上何も言わず、プラチナは再度扉に手をかけた。




