III
黒い騎馬にそれぞれ跨り、サンドライト城の門をくぐる。
途中、サンドライト兵の罵倒も聞こえたが、プラチナは気にする事なく馬を歩かせた。
「女王陛下。あの若造、本当に使えるのでしょうか?」
一人の黒騎士がプラチナに尋ねた。
「女王陛下に負ける軟弱者です。大した男だとは到底……」
「黙れ」
黒い瞳が鋭く射抜く。
同時に腰に装備された火打石銃に手をかける。
「我に異を唱えるか?」
「い、いえ!滅相もない!!」
出過ぎた真似をと謝り、直様後方へ下がる。
プラチナは気付いていた。
あの勝負の際、アレキサンドライトの剣が数秒早く自分の喉元に止まった事を。
それを知っていてアレキサンドライトが自分に素顔を見せた事も。
後方で大きな城門が閉められる、鈍く重い音が鳴る。
隊列の最後尾にいた騎士がその声を聞いたのは、城門が閉められる間際の事だった。
「待ってください!アメジスト!!」
忘れもしない声。
反射的に振り返る。
薔薇色のドレスをたくし上げ、必死にこちらに走ってくる人影。
金色の長くて綺麗な巻き髪、大理石のような白い肌、花のように色づく頬にふっくらとした唇。
何より美しい、薔薇色の瞳。
自分が愛した、最愛の姫君の姿だった。
「アメジスト!!」
自分を呼ぶ声に思わず手を伸ばした。
しかし、城門を閉めるサンドライト兵らによって、ルーベライトは取り押さえられてしまう。
「姫、危ないです!下がってください!」
「離してください!お願い、離して!!」
「挟まれたら死んじゃいますよ!」
何とか兵士の制止を振り切ろうとルーベライトはもがきながら叫び続ける。
「アメジスト!!」
彼女の声は無惨にも、閉められた城門によって届く事はなかった。
「何だ今の?」
「アメジスト、貴殿の知り合いか?」
閉ざされた城門の外側。
シャーマナイト兵は口々に黒騎士・アメジストに尋ねる。
「名を呼んでいたが?」
「……いや、初めて見る。人違いだ」
そう告げ、手綱を操り馬を歩かせる。
何事もなかったように繕うアメジストの姿。
プラチナの瞳が、鋭く細められた。
一方、城門の内側も騒然となっていた。
あれ程取乱し叫んでいたルーベライトが、城門が閉まるなり、ぴたりと動きを止めた。
崩れるように座り込む様子に、周りの兵士らが声をかける。
「姫、大丈夫ですか!?」
「どこかお怪我でも!?」
しかし、その声にもルーベライトは反応しなかった。
放心状態のルーベライトの姿を、アレキサンドライトは後方で見つめるしか出来なかった。




