I
「シャーマナイト……この数年でフローライトと並び、東国連合の主軸と成った大陸一の軍事国家……」
「武器、兵器共に実践投入する数は年々増えてきている。戦の度、我らの軍も苦戦を強いられている。そんな大国なのに降りてくる情報が少なすぎる。これでは対策しようにも意味をなさん」
「徹底した情報規制か。今の女王の体制になってからは、私もよく知らないな」
「以前は知っていたのか?」
「まだ父上が存命だった頃、一度だけ先々代のシャーマナイト王に会った事がある」
「よく謁見できたな」
「先々代の王は東西の和平を望まれていた。サンドライトと協定を結び、終戦に結びつけたかったんだろう。私が幼かった頃の話だし、今となってはその話を詳しく聞ける人はいなくなってしまったが……」
「その時に上手くいっていれば、大戦もここまで長引いていなかったかもしれんな」
「双方、惜しい人を亡くした」
「心の優しい人だったのかもな。でなければ権力闘争に負けていなかっただろう」
「志し半ばで、さぞ無念だったろうに」
「実際の所、王座を狙っていた弟・モリオン一派の仕業だそうだ。世継だった王子も、王妃も、居住していた城ごと燃やされ、証拠も残っていない。唯一生き残ったと言われていた王女も、今の女王の体制に切り替わる際に殺されたと聞く」
「王女も、か……」
「何だ?」
「いや、先々代のシャーマナイト王との謁見の際、偶然一人の女の子と知り合ったんだ。綺麗な黒髪と黒い瞳で、肌は雪のように色白で……シャーマナイト人だったが、名前を聞けなかった。もしかしたら、その子は王女だったのかと思って」
「可能性はあるな。名は確か……オニキス、だったか」
「オニキス……」
「幼くして醜い権力争いに巻き込まれるとは、敵国ながら可哀想な子だ」
「お前が誰かをそう思うなんて珍しいな」
「私とて人の子なのだよ。それに、ルーベと同い年だったらしい。生きていたら、ルーベのような美しい姫になっていたのかと思うと、他人事のように思えん。亡くなった王子も、きっと私と同じ気持ちだっただろう」
「彼女たちもまた、戦の犠牲者なんだな……」
「……早く、終わらせなければ」
「……あぁ」
夜の酒の席。
アレキサンドライトとアイオライトがグラスを傾け、そんな会話をしていたのは、ほんの数日前の事だった。




