第三話
誰…?
あれ…でも、あの人が着ている服…月黄泉高校の制服…?を
藍色の髪に、黒い瞳。
それに、綺麗な顔…。
でも、その表情は、喜怒哀楽どの文字も合わない。
無表情。
私が見とれていると、その人は男1をそこらへんに捨ててこちらへ歩いてくる。
「おい」
男2・3『な、なななな何だよ!』
その男の人が話しかけると、残った二人はかなり動揺しながら返事をする。
「手を…」
男2・3『はぁ!?』
「手を離せ…今すぐにその手を離し、その男を連れてどこかに失せろ。力の差は…わかるだろう」
その男の人がそう言って睨み付けると、男2・3は「ひぃっ」という悲鳴を上げ、私の腕を解放すると、男1を抱えて逃げて行った。
私がその後を呆然と見ていると、頭上から声が降ってきた。
「大丈夫か?」
その声は、先ほどとは違い、とても優しい声だった。
私はそちらを向くと、深く頭を下げた。
「助けていただいて、ありがとうございました。おかげ様で、怪我一つありません」
私が頭を上げると、男の人はフッと笑った。
「そうか…、なら良かった」
どうして助けてくれたんだろう…。
でも、今はそんなことよりもちゃんとしたお礼がしたい。
「あの…私は、月黄泉高校一年A組の、花村桜と言います。桜と呼んでください。失礼ですが、あなたのお名前は…?」
「…俺は、あんたと同じ月黄泉高校の生徒だ。二年A組、仙崎祐一」
二年A組…、仙崎祐一…。
お兄ちゃんと同じクラスだ。
「仙崎先輩…と、呼んでも良いですか?」
私が訊ねると、仙崎先輩は「ああ」と言って頷いた。
「今日はありがとうございました。同じ学校なので、また会えるかもしれませんね。それでは、また」
私は踵を返して帰ろうとした。
でも…
―――――ガシッ
仙崎先輩が私の腕を掴んだ。
私は驚いて振り返る。
「待て、一人で帰るつもりか?」
「?…はい」
私が怪訝そうに返事を返すと、仙崎先輩は真っ直ぐな瞳で私を見詰める。
「送る」
「…………え?」