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第一話

―――――ザァァァー

梅雨。

私は学校が終わると、寄り道をせずに真っ直ぐと目的地へ向かう。

濡れることも気にせずに。

すれ違う人が皆、私を見る。

そりゃそうだ。

こんなに雨が降っているのに、傘一つ差さずに一人で歩いてる女がいる。

これを可笑しく思わずに、何を可笑しく思う?

でも、私はそんなの気にしない。

もっと大切なことがあるから。

私はびしょ濡れになって、月黄泉総合病院つきよみそうごうびょういんに入った。

―――――ガラガラガラ

私は迷わずに、「302号室 早山百合」と書かれた部屋のドアを開ける。

中に入ると、いつも通りの人たちがいつも通りの笑顔で迎えてくれた。

「桜ちゃん、また来てくれたんだな。ありがとう」

「あらあら、どうしたの?そんなにびしょ濡れで…。風邪引いちゃうわ。こっちに来なさい」

百合のお父さんと、お母さんだ。

百合のお母さんは、私の手をぐいぐいと引っ張って、連れていく。

「えっ?あのっ!」

そう言った瞬間、私の頭に何か柔らかいものが被さる。

「ほらっ、乾かしてっ!」

―――――ゴシゴシゴシ

百合のお母さんが、強引に私の頭をタオルで乾かす。

「おい…そんなに強引にやったら、桜ちゃんだって痛いだろう」

百合のお父さんがそう言うと、百合のお母さんは口を尖らせた。

「だって…」

「大丈夫ですよ。寧ろ嬉しいです。ありがとうございます」

私は二人に笑顔を向けた。

「ほうらっ」

百合のお母さんは、お父さんにニッコリと笑顔を見せる。

百合のお父さんは、「はぁ…」と溜め息をつく。

「あの…いつも通り、後は私がついていますから、お二人は帰って休んでください」

私が言うと、二人は申し訳なさそうな顔をする。

「いつもすまないね…」

「本当に、ありがとう」

二人は私に微笑んでお礼を言った。

「それじゃあ、桜ちゃん」

「気をつけて帰るんだよ」

二人はそれだけ言い残すと、帰って行った。

私は二人を見送ると、百合の隣に座った。

私は、静かに眠っている百合の顔を見る。

「百合…ごめん。…ごめんね…」

私はそう呟きながら、一滴の涙を零した。

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