王子様の心情
今回は宣言していたとおり、フレイアル殿下視点。
サブタイを「王子様の心情」にしています。
…いい名前が思いつかなかったんですよ(つд⊂)
とりあえずどうぞ!
俺、フレイアル・ジェーンは正直、女が嫌いだ。
正確には俺に媚びてくる女が嫌いだ。そんなの誰でも嫌いと思うが、俺の場合は第一王子という立場上、そういう女しかいない。しかし、俺はこの16年生きてきた中で初めて自分に媚びを売らなかった女に出会った。エルシア・サマーニ。彼女の名だ。彼女と初めて会ったのはパーティーの時。妃を選ぶパーティー。俺はその時、仕事を抱え込み、少しパーティーに遅れていた。
ようやく仕事が終わり、俺が執務室を出た瞬間、一人の女が俺に近づいてきた。
「あのっ!」
俺は声をかけられ一瞬、顔を歪めるが、直ぐに元の顔に戻す。相手も気にしていないようだった。女からいつも聞かされている吐き気がするほどの言葉が出てくると思いきや、彼女が言った言葉は意外なものだった。
「失礼ながら、表門はどちらに御座いますでしょうか」
「表門、か?」
正直、予想していなかった言葉に目を見開く。そのまま、彼女の後ろを指さした。そしていう。
「この道を少し行った所に騎士が待っている。そこで再び聞くといい」
「そうですか。有難うございました」
彼女はそう言って、丁寧にお辞儀をした。しかし、そのお辞儀は綺麗ではあるものの今まで見てきた令嬢達とは異なっているものだった。そして、俺の答えを聞いて直ぐに帰ろうとした彼女を、俺はなぜか止めてしまう。彼女が不思議そうにしているのを見て俺は問いかけた。
「あなたは何の用でこの城に?」
実際、そんな事を聞こうと思って引き止めた訳ではなかった。反射的に止めたから、俺は直ぐさま質問を作った。
「私ですか?…妃を選ぶパーティーに招待されてしまいまして」
その時俺は、僅かながら喜びを感じた。それがなぜだか、未だに分かっていないが、とにかく喜びを感じた。しかし、俺はふと疑問に思った事を口に出す。
「されてしまいまして?」
文が明らかに嫌そうだった。その時感じた。自分の目の前にいる女は、そこらへんの令嬢とは違う。服装から見て庶民だろうが、どうしてそんなに嫌そうに話すのか。俺が疑問に思っていると彼女は何かに気づいたように言い直した。
「あ、いえ…していただいたのですが、急用が入ってしまいまして…どうしても外されない用事なのでパーティーは辞退させていただく事にしたのです」
明らか、嘘だろう。完璧な笑顔、完璧な口調だが、何かに気づいた顔をした時点でバレている。しかし、その切り替えの速さに俺は驚いたと同時に、意外だった。女の中にはこんなにも頭の回転が速い者がいたのか、と。
「お時間をお取りさせて申し訳ありませんでした。それでは失礼します」
そう言って彼女は丁寧にお辞儀をしてくるりと俺に背をみせ、歩いていく。俺はその彼女の背中を見ながら思った。あの女は絶対、俺の正体に気づいている、と。根拠はない。しかし、そう断言できた。
彼女が去ってから俺はパーティー会場へと出向いたわけだが、令嬢との会話が一切記憶に残っていない。あの、不思議な女の事で頭がいっぱいだった。パーティーが終わり、俺は再び執務室に来ていた。ネファリーに会うためだ。あの、パーティーを一から行なったあいつならわかるだろうと思ったからだ。彼女の名前が。
「はい?」
「いや、だから。今日、庶民の女来てただろ?そいつの名前教えろよ」
俺がそう言うとネファリーはキョトンとした。ネファリーとは幼い頃からの知り合いで、色々と心を許せる存在なのだ。そのネファリーが俺を変なものを見る眼で見ている。
「…なんだよ」
俺が不機嫌気味で問うと、ネファリーは言った。
「頭がおかしくなった?」
「お前がネファリーじゃなかったら死刑確定だな」
「僕じゃないと言わないって。てか、言えないって」
ネファリーがそういうのでそれもそうかと思う。第一王子にそんな口自体きかないだろう。…こいつは別だが。
「で、何でそんな事言ったんだよ」
「だって、あのフレアが、女の子に、しかも庶民に興味を持ったんだよ?驚かない方が無理だって」
「…」
言い返せなかった。俺自身でもそう思うからだ。自分が、あの女に興味を持ったことに自体、驚いているんだから。
「で、どんな女の子?」
「確か、髪が蒲公英みたいな色で目が金色だ。ドレスは若草色」
「……ゴメン。僕、会場で若草色のドレスなんて見てないよ?」
「…あ、忘れてた。確か、俺が行く前に帰ったと思うぞ」
「ええ!?」
驚くのも無理ない。俺だってあの女から帰るって言われてびっくりしたんだから。ネファリーがパーティーに出席した女達の名前を確認していく。ネファリーの目が止まった。見つけたのだろう。あの女の名前を。ネファリーは少し、困った顔をして言った。
「フレアが言ってる子の名前は多分、エルシア・サマーニ」
「…珍しいな」
俺は自信がないようにいうネファリーを不思議に思った。ネファリーはおそらくこの国一番の情報を持っている。宰相だから当然、と思うかもしれないが国民に分かって城の人間にわからないことは多い。しかしこの男は自分が不安にならないようにとことん調べる。だから、こいつの情報は信用できる。けど、そのネファリーが自信のない顔をしている。ネファリーは苦笑いして俺に話し始めた。
「うん。この子の情報は、分からない事が多過ぎる。家族構成、当人がどういう人物なのか、どこで生まれたのか、どこで育ったのか。意図的に探られないようとしていた。わかるのは名前と年齢だけ」
「…結構やばいんじゃないか?」
そういう人間がこの国に存在するのはヤバイんじゃないか。俺はそう思った。そいつが他国の奴として、何もわからないとなると色々と面倒な事が起きる可能性がある。政治的にも、個人的にも。しかし、ここで俺の中ではある疑問が浮かんだ。
「そんな人物を、何で候補に入れたんだ?」
可笑しい。何故、危険性が高い人物を妃候補に入れたのか。そんな人物、はじめから外していればいいだけだ。
「これは僕の予想だけどね。多分この子はそんなに危険じゃないと思うんだ」
「は?」
「だってもし他国の奴だったらもっとしっかりとした個人情報を作り上げると思わない?」
確かにそうだな。俺はネファリーの言葉に頷く。そして少し、考えてみた。俺だった場合はそうする。じゃあ何故この女の情報はわからないのか。
「…わからないな」
「だよね。けど、謎が解けたよ」
「何の?」
「フレアがパーティーに集中していなかった謎が」
俺はその言葉を聞いて、顔が引き攣った。俺はそれほどわかりやすかったのか。ネファリーの顔をみる限り、かなりわかりやすかったのだろう。ネファリーがニヤニヤしてるのを見てそう思った。ネファリーはその顔のまま言った。
「取り敢えず、その女の子と話をしないとね」
「話す意味がわからない」
相変わらずニコニコしているネファリーを見て抵抗するのを諦めた。それから三日後、俺は再び彼女と対面することになる。
やっぱ、異性の感情は書くのが難しい。
後、口調とか?
私が書いていて思ったことは、エルシア視点で書いていたキャラのイメージが変わった。
ってことですかね。
ネファリーはなんか口調が滑らか?だから思ってたのとだいぶ違うし。
フレイアル殿下もイメージがだいぶ変わりましたw
では、読んでくださってありがとうございます!!