2話 「迷子だ…」
早くも一週間が経った。…え?何かいけなかった?だってこの一週間って特になにもなかったのよ。ええそうね。アイサに恋人がいたということを除いては。まぁこの話は後にして…私は今、馬車の中にいる。なぜかって?家の前まで馬車が来たからよ…玄関の扉を開けたらそこには馬車がいました。ってなにそれ!?ものすごい迷惑よ!なにその気づかい!いらないわ!
「サマーニ様。到着いたしました」
執事らしき人が私に向かってニコリと微笑む。私もニコリと微笑みながらお礼を言う。本当は微笑みたくはないのだけれど。仕方ないよ。あんまり悪印象持たれると面倒な事になる。私はその人の後についていく。そして大きな扉を開くと、様々な女性が素晴らしく自分を着飾っておりました。
(わぁー香水くさーい…)
私は内心そう思いながら、顔には出さないようにしていた。私は香水はつけない。だって臭いじゃない。何を好んであれを大量につけるか、私には全く理解できないのよ。私はそう思いながら人が少ない窓際の一角に歩いて行った。まだ第一王子は来ていないみたい。どうりで、令嬢達の間に怖い雰囲気が漂っているわけよ。
「ここらへんかしら」
私はそう言って窓の近くに立った。どうやら私の平凡顔は特に目立たないようね。誰もこちらを見ようとしないもの。私としてはこっちの方が好都合。私はワクワクしながら第一王子の登場を待つ。一刻も早く第一王子に来ていただきたい。そしたらお食事が食べれるじゃない!私はワクワクしながら待っていたのだが…第一王子が時間になっても現れない。私は流石にイライラし始めたこの空気に耐え切れなくなり、部屋の外へ出た。
「はぁ~気持ちいぃー」
私は部屋を出た所で肩に入っていた力を抜いた。しかし、私は初めて目にする目の前の光景に目を見開く。
「花多いっ!」
別に花が嫌いだというわけじゃない。どっちかというと好きな方だ。うん。でも。
「ここお城だよね…?」
お城の中に、一面を覆い尽くす程のお花畑があるだろうか普通。私はその光景に少し疑問を持って後ろを振り向いてみる。そこには先程、出てきた部屋の扉が存在する。うん。ここはお城だ。決してお花畑ではない。
「と、取り敢えず、移動…」
私はそう言って右左をキョロキョロする。正直、そこに今すぐ帰る気はない。というか帰りたくもない。何を好んであんな居心地の悪い場所にいなければいけないのか。私はそう思いながら左に進んだ。左には何があるのか私は全く知らなかった。いや、庶民が知ってたらすごいです。それから私はだいぶ歩いたのだけれど…うん。正直に言います。
「迷子だ…」
私はそう言って頭を抱えた。というかこの年になって迷子になるとは思いませんでした。はい。私は周りをキョロキョロを見る。人の気配なし、来た道もわからない。絶望的だァ…そう思っていたその時。ある一つの部屋が開き、男性が出てきた。どこの誰だか知らないけど…ナイスです!!
「あのっ!」
私は必死にその男性に近づく。その男性は私の存在に気がつくと少し顔を歪めたような気もしたが私はその疑問を置いといてまず、自分の問題から解決していくことにした。
「失礼ながら、表門はどちらに御座いますでしょうか」
「表門、か?」
私が男性に問うと、その男性は意外そうに聞いてきた。他に別の事を問われるとでも思っていたのかな。その男性は意外そうな顔をしたまま私の後ろを指さした。
「この道を少し行った所に騎士が待っている。そこで再び聞くといい」
「そうですか。有難うございました」
私は男性にそう言って体を折り曲げる。私は男性にお辞儀をしてから男性の指した方、後ろへと振り向いて前に進もうとしたのだけどそれを先程の男性が遮る。
「あなたは何の用でこの城に?」
「私ですか?…妃を選ぶパーティーに招待されてしまいまして」
「されてしまいまして?」
「あ、いえ…していただいたのですが、急用が入ってしまいまして…どうしても外されない用事なのでパーティーは辞退させていただく事にしたのです」
私がそう言うと男は意外そうな顔をした。うん。そうよね。第妃選びのパーティーって誰でも喜ぶとか思っていうのでしょうね。そりゃー世の中の女性は喜ぶでしょう。ただ喜ばない女性もいるのです。私はニコリと微笑んで言った。
「お時間をお取りさせて申し訳ありませんでした。それでは失礼します」
そう言って私は一礼し、後ろを向く。そして私は二度と会うことのないだろう王子様を一目見て思った。
(綺麗なお顔ですね)
私は相手が第一王子、フレイアル・ジェーンだということに気づいていた。正しく言えば、話しかけた後で気づいた。本でこんな場面があれば、気づかないだろう。ここで別れて、ヒロインが会場に戻る気になってそこで偶然再会した王子様とヒロインは恋に落ちる。というのが王道なのだろうけど。私はヒロインでもなんでもないのでそんな恋には落ちない。王子様は綺麗な顔をしていました。…それで?私はやはり噂と事実というものは一致しないと思った。流れていた噂とは全く違う印象を受けた。