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12話 「この国の王族達は、皆いい人みたいだから」

遅くなりました!


急展開っと

兄様と再会し、色々あったけど私は今、いつも通り侍女の仕事に移っている。時間で言えば約2時間過ぎているのでもうあの格好は嫌だと服を脱いだ。いつもの侍女の姿に戻ってサリー様のお世話をしている。


「エルシアー茶ー」

「エルーお茶ー」


…訂正して、サリー様と兄様のお世話をしている。


「兄様。サリー様の前ではしたない言葉を使わないでください。真似したらどうするのですか」

「大丈夫だって。そこらへんはサリーちゃんもわかってるって。なぁ?」

「そうよエルー。私がそんな言葉を使うとネファリーから容赦なく説教を受けるのよ」


サリー様が怯えるような顔でそう言った。…ネファリス様、あなた何やってるんですか。私は小さく溜息をつき、お茶を用意する。因みにシタリス様とフレイアル殿下は兄様が壊した地面を魔法で直していて、ネファリス様は負傷した兵の手当。兄様はそれを手伝うことなくサリー様と雑談。ほんっとうに申し訳ありません…私は心の中で三人に謝ると、急いでお茶をコップに注いだ。


「…どうして増えているんですか」

「だって修理終わったんだもーん」

「…悪い」


私がお茶を持って二人の元へ向かうと、二名増えていた。どうやら私がお茶を入れている間に部屋に入ってきたようだった。私は苛立ちを隠してまた、お茶を淹れる。そして再び4人の元へ戻ると…


「エルシア、お茶お願いできる?」

「あ、エルシアさん、僕もお願いできます?」

「エルシアー俺おかわり」


私は一先ず、シタリス様とフレイアル殿下の前にお茶を置き、そして三人に言った。


「自分で淹れなさい」


相手が兄だったとか、相手が他国の王子だったとか、相手が自国の宰相だったとかこの際どうでもいい。ただ、往復するのが面倒だった。来るならいっぺんに来て欲しい。何で往復しなければいけないのか。三人は何を思ったのか無言で立って、自分でお茶を淹れに行った。


「エルー、あなたお腹空かない?」

「少しだけ。どうかしましたか?」


私がサリー様にそう聞くと、サリー様はニコリと笑って爆弾発言を落とした。


「一緒に食べましょう!」

「…はい?」


可愛らしくニコニコ笑うサリー様の口からありえない言葉が出てきましたよね今!?もしかして私の聞き間違い?


「だから、一緒に食べましょう!」


…どうやら聞き間違いではなかったようだわ。私は溜息をついてサリー様に言った。


「サリー様、それは駄目でございます」

「どうして?」

「私は庶民、サリー様は王族。庶民の私が王族のお方と食事をしてはならないと決まっているのです」


私が言うとサリー様は残念そうな顔をして言った。というか、王族と食事をするなんてとんでもない!絶対噂が回って貴族に目の敵にされるわ…そんなことを私が考えていると不意に隣から声が聞こえた。


「サリーちゃん大丈夫だって。どうせ行かないといけなくなるから」


私はその言葉に反応する。行かないといけなくなる?


「兄様、今なんて言いました?」

「だからどうせ行かないといけなくなるって」

「…どういう事か説明していただきましょう」


それからやや、表情が引き攣っている兄様はゆっくりと説明した。


「…つまり兄様が国王様に掛け合ったのですね?」

「ああ。そしたら超笑顔で受け入れてくれた」


私は、はぁと溜息をつく。どうして国王様や、この国の王族達はこうも変わっているのですか!普通、常識で庶民が王族と食事をするなどあってはならない事。なのになのに…


「兄様、分かっているのですか?いくらなんでも私は庶民なんです。いい加減その、どうにかなるって性格直して下さい」

「だって、ラーナとエミスが乗り気だったし」

「…どうして国王様と王妃様をお名前でお呼びになっているんですか!!」


ラーナシア・ジェーン様(王妃様)とエラミス・ジェーン様(国王様)の事を名前、しかも愛称で呼んでいる兄様に私は驚く。勿論、部屋にいる人は一人残らず驚いている。


「私達が承諾したのよ、エルーちゃん」


私がその声に振り向くとニコニコと微笑む国王様と王妃様が立っていた。…ヤバイ。嫌な予感が。


「あなたもいいのよ?愛称で呼んで」

「そんなご無礼出来ません!王妃様と国王様をお名前でお呼びするなど…」

「無礼になんかならないじゃない。だってエルーちゃんは私達を呼び捨てにして良い程の地位の持ち主でしょ?」


私はその言葉に目を見開く。何で…何でバレてるのよ!?バレていなかったはずよね!?だって厳重に管理している私の情報は漏れていないもの。魔法と、それ以外でしっかりとガードして誰にも探れないようにしているもの。じゃあなんで?まさか…私はバッと兄様の方に向き直った。するとそこにはニコニコ立っている兄様がいた。やっぱり…


「…兄様が漏らしたのですね?」

「なんの事かな?」

「しらばっくれないでください!兄様以外に誰がいるんですか?」

「ほら、情報が漏れたんじゃ…」


何を今頃になって焦っているんですか兄様。もしかして、うっかり喋っちゃったとか?…ありえるわ。


「私の情報はそう簡単に漏れませんよ?正直に言いなさい。バラしましたね?」

「…バラして」

「バラしましたね?」

「…はい」


ショボンとする兄様を私は睨んでから国王様と王妃様に向き直った。


「…隠しても無駄なのですか?」

「無駄かどうかは分からないけど、少なくとも必要と思った人だけには話すわよ?」

「…はぁもう。何もかもが台無しだ」


私はそう言って近くの椅子に座った。多くの人数の人が私と王妃様達の話についていけていない。呆然としている。私は深呼吸をして静かに言った。


「お話します。私が誰なのかを」


そう言うと、ネファリス様、国王様、王妃様、兄様、サフィア様以外、驚いた顔をした。私はこれまで短い付き合いの中で絶対に自分の事を話さなかった。一言も。それは昔の事を思い出したくない、思い出すことを拒否していたからだ。ただ、この国の王に知られてしまった以上、ここにいる人達に隠す事は出来ない。なら今、自分の口で話してしまおう。面倒な事になる前に。


「私と兄様の生まれはこの国では御座いません。しかし、この国に近い国」


私は静かに語りだす。それを無言で見つめる人達。


「私と兄様の生まれた故郷、それは…自然の国、エール国」


私が自国の名を言った瞬間、空気が固まった。私の生まれ故郷は自然が豊かで有名だった。けど、それが原因で戦争に発展したんだどね。


「エール国の王族は処刑され、民は敗民となり酷い扱いを受けている。しかし、エール国は滅んでいないのです。私と兄様が生きていますから」


私が兄様の方をむいた時、兄様は少し辛そうな笑みを浮かべていた。多分、私も同じような笑みを浮かべているのだろう。


「私には兄様の他に二人の兄がいます。行方は分かっていません。母様も、父様も、処刑されたのか分かっていません。今の話からわかるように、私はエール国の生まれであり、エール国の王女でもあります」


未だに目を見開いている人達。流石のネファリス様も驚いたようね。


「燐国が私の国を攻めてきた時、私は当時8歳でした。いえ、8歳になったばかりだといった方が正しいかもしれません。母様と父様が真っ先に逃したのは私達子供でした」


私は一息置いてから続ける。


「それから、一番上の兄が追ってきた兵と戦って私達を逃しました。次は二番目の兄が。残った兄様と私はひたすら走りました。ですが、また何人かの兵に囲まれてしまいました。兄様は私を逃がし、一人で敵に立ち向かいました。剣一本で。私はただただ走るだけで、振り返る事をしませんでした。それは、子供なりに状況を理解していたのか、兄様の言いつけをただ守っていたのか。本人である私でも定かではないのです。どれくらい走ったか分からなくなった時、森が開け、村が見えました。そこは賑やかで、楽しそうな人がいて、沢山の人が笑っていました。私は最後の力を振り絞り、その村へ駆け込み助けを求めました」


誰も何も言うことなく、ただ私の話を聞いている。兄様は話している私に勇気を与えるかのように手を握ってくれている。泣きそうなのを我慢しているサリー様と王妃様は潤んだ瞳で私を見ている。自分の事でもないのに、苦しそうな表情をしているフレイアル殿下にシタリス様、それと国王様。


「そして、時は過ぎ、私は成長しました。8年も経てば人は色々変わるものです。友人を持ち、近所の人と仲良くし、笑って過ごす。ただ、私は8年前のあの日から心から笑った事はありません。笑えないのです。もしかしたら一生無理かもしれません。それ程、辛くて、悲しくて、思い出すのも嫌だったんです。成長した私に残ったのものは王族への恨み、憎しみ、面倒事に関わる事の拒否です。王族は大嫌いになったし、常に誰とも仲良くして自分に面倒な事が来ないようにしました」


私が王族が大嫌いっと言った瞬間、皆落ち込んだ。落ち込んでいないのはネファリス様だけ。そのネファス様も何かを考えているよう。


「じゃあ、どうして大嫌いな王族にこの話をしたんですか?」


ネファリス様の声が緊張しているようだった。


「話さなければいけない状況になったというのもあります」


私が言った瞬間、兄様が苦笑を顔に浮かべた。少しは悪い事をしたと思ってくれているんですね。


「でも、それだけではありません」


私が言うと、部屋の中にいる全員が首を傾げた。私は本物の(・・・)笑顔を見せていった。少し恥ずかしがって。


「この国の王族達は、皆いい人みたいだから」

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