7話 過去
あるところに、それはそれは、よく笑う可愛い女の子がおりました。
その女の子は、周りの子とは少し違っていました。
その女の子は、国で一番えらい女の子だったのです。
しかし、女の子はまだ幼くて、そんな事は分かっていませんでした。
女の子はすくすくと育ちました。
素直な性格、誰もが魅了される顔立ち、そして、悪を知らない純粋な心。
誰もが、そんな女の子を大好きでした。
女の子は、8歳の誕生日をむかえます。
しかしその誕生日は、悲しい日になってしまいます。
女の子の住んでいる国には、揉めている国がありました。
燐国です。
女の子の住んでいる国は、緑が豊かで、自然に恵まれていました。
燐国は、自ら領土にある自然を伐採してしまいました。
そして、燃料が少なくなって困った燐国は、女の子の国に攻め込み、我が物としよう。
そう考えました。
勿論、女の子の父である国王様は、何とか戦をしないように燐国と交渉しました。
しかし、燐国の王様は、それはそれは、欲張りな人間でした。
女の子のお父さんが出した条件を飲み込まず、ついには女の子の国に攻め込んできたのです。
それが女の子の誕生日。
しかし、悪夢はまだ終わりません。
街が火の海となっていく中、女の子のお父さんとお母さんは自分達の子供だけは逃がそう。
そう思いました。
女の子には3人の兄がいました。
一番目は18歳。二番目は14歳。三番目は12歳。
女の子は3人の兄達にとても懐いていました。
女の子の両親は、そんな兄達に女の子を任しました。
両親にとって女の子は、女の子の一族の唯一の希望だったからです。
女の子の兄達も、その事を分かっていました。
しかし、男の子といってもまだ子供。
そんな4人に燐国は容赦しませんした。
はじめは一番上の兄が。次は二番目の兄が燐国の兵に立ち向かっていきます。
最後に残ったのは、女の子と三番目の兄だけでした。
「大丈夫。大丈夫だよ…」
三番目の兄は、呪文のようにその言葉を呟きました。
何度も何度も。
しかし、神様は意地悪でした。
女の子の目の前に兵士が立ち塞がります。
三番目の兄は、女の子を守るように兵士に向かって剣を構えました。
そして、三番目の兄は女の子に向かって言います。
「エルシア!!!振り返らずに走れ!必ず、後で俺が探し出すから!」
兄はそう言うと女の子に一つ、ロケットペンダントを渡しました。
それは、女の子の誕生日プレゼントにと家族全員で女の子のために選んだ物でした。
女の子はそれを受け取ると走ります。
兄の言いつけ通り、暗闇の中、一度も振り返らず、一度も鳴き声を上げず、静かに泣きながら。
どれほど時間が経ったでしょう。
森を突き抜け、一つの村が見えてきた時、女の子は足の力が抜けていくのを感じます。
けれど、女の子は体中の力を足に集め、地面を蹴り、村の中へ駆け込みます。
村の中は賑やかで、楽しそうです。
女の子は村に入った途端、崩れ落ちました。
体力の限界でした。
最後の力を振り絞り、どうしたのかと聞いてくる村人に女の子は言います。
「助けてください」
と。
やがて女の子はその村の男女に引き取られました。
その男女はそれから数日後、少し離れた王国、ミフェス王国のファスに移り住みました。
女の子は一人で暮らせる年になるまでその男女に引き取られていましたが、自分が誰か。
どこから来たのかなど、一切話しませんでした。
そんな女の子に不安を抱きながらも育ててくれた男女。
女の子は大変感謝しました。
女の子が12歳になると、女の子は家を出ます。
しかし、男女はそんな女の子を温かい目で見送りました。
「また戻っておいで」
と言いながら。
やがて女の子は、少女へと成長し、人生で久しぶりの友人ができました。
アイサ・カルーラ。友人の名です。
明るくて、お姉さんぽい彼女に少女は兄達を重ねたのかもしれません。
8歳の時のことが原因で、少女は王族が嫌いです。
そしてなにより、面倒事を嫌うようになりました。
平和が一番。少女はそう言います。
少女の胸元には、それはそれは綺麗なロケットペンダントが光っています。
少女はそのロケットペンダントを肌身離さず持っています。
いつの日か兄が自分の事を見つけてくれると願い、その印を光らせているのです。
そのロケットペンダントの中には家族の写真が入っていて、開けたところにはこう書いてあります。
『エルシア誕生日おめでとう。あなたの傍にはいつでも私達がついています』
と。
こうしてエルシア・サマーニから、無邪気な笑顔が、純粋な心が、人を愛するという感情が、誰かに甘えるという感情がなくなりました。
それでも未だ彼女は、家族の帰りを待っているのです。
戦後、女の子の国の燐国の中にはある噂が流れました。
自然の国、エール国が滅んだ。しかし、エール国の生き残りがいる。
という噂が。
エルシアの過去が分かりました。
何か楽しくもないし、シリアスにもかけてない感じがする…
ま、まぁ過去がわかったということで!!
次回はまだ考えてないので…
頑張って考えます!!
読んでいただいてありがとうございました!!