復興
志木原の社は、ゆっくりと、しかし確かに形を取り戻していった。
最初に立て直されたのは、本殿ではなかった。
人々が集まり、語り、祈れる――
屋根と柱だけの、ひらけた場だった。
瓦礫の中から拾われた石。焼け残った鈴。煤を落とした鏡。
それらが、順に元の場所へ戻されていく。
四季の神子は、志木原を拠点とした。
だが、留まることはなかった。
巡礼は続き、季の儀も各地で行われる。
それでも――
季節の節目には、必ず志木原へ戻った。
春、芽吹きの祈り。
夏、水と風の祓い。
秋、実りを分かつ祭。
冬、静かに守る、灯の儀。
催事のたび、人は集まった。
最初は、近隣の村人。
やがて、巡礼の途中で出会った氏子たち。
そのまた次には、遠方から噂を聞きつけた者たち。
人々は、志木原の有様を目にする。
焼け跡の中に、笑う子供がいること。
学び舎で、文字をなぞる手が増えていること。
祈りの場が、誰かの居場所になっていること。
「滅びたはずの地だと、聞いていたが……」
「思っていたよりも、人が生きているな」
そんな声が、自然と生まれた。
やがて、それは市井だけの話ではなくなる。
武家が、家臣を伴って参じる。
名のある寺社が、使いを寄越す。
貴族の屋敷にまで、四季の神子の名が届いた。
彼らが見ていたのは、神子そのものではない。
“人が戻りつつある土地”だった。
「志木原は、死んでいない」
「季が巡っている」
その事実が、
領地経営を考える者たちの目を引いた。
寄進は、形を変えて増えていく。
銭だけではない。
米、布、職人、書記、医師。
志木原は、少しずつ、息を吹き返した。
神子たちは、前に出すぎなかった。
ただ季の儀を行い、人が集う理由を、淡々と整えた。
いつしか、志木原は、
「四季の巡る地」と呼ばれるようになる。
誰かが、こう言った。
「神子がいるからではない。神子が、ここに戻ったからだ。」
噂が噂を呼び、また人が来る。
その循環は、誰にも止められなかった。




