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ある村

小さな川と、低い山に囲まれた、

どこにでもある集落だった。


春先。

田の畔で、年寄りが声を上げる。


「今年は、新しく来た者が三人いるな。」


若い男が頷く。


「春は、独りにしない、だったな。」


誰かが笑う。


「覚えてるもんだな」


「忘れるわけない。去年、俺がそうしてもらった」


夏。

水番を決める集まりで、一人の女が言った。


「今年は水が少ない。溜めないで回そう。」


別の者が応じる。


「夏は、滞らせぬ、だな。」


井戸の順番は細かく決められ、

喧嘩になりかけた声は、途中で止まった。


「……夏だ。」


その一言で、皆が引いた。


秋。

収穫の後、蔵の前で米俵を前に、村人たちは黙り込んでいた。


「今年は、よく獲れた。」


「……抱え込みすぎるな、だったか。」


誰かが俵をひとつ外へ出す。


「向こうの里、飢えてるらしい」


迷いはあった。

だが、誰も止めなかった。


冬。

雪の朝、年端もいかぬ子が泣いていた。


「おかあが……戻らない。」


男が綿入りの上着を脱いで、子を包む。


「冬は、先に守る。」


別の者が言う。


「減ることを、責めるな。おいで、腹が減っただろう。」


家は狭くなる。米は減る。


それでも、誰も文句を言わなかった。


その年の終わり。


村の長が、火の前でぽつりと呟く。


「……神子は、今年は来られなかったな。」


誰かが答える。


「来なくても大丈夫だろ。」


「もう、ある。」


その言葉に、皆が黙って頷いた。

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