最後で最初のギフト
「冬の童話祭2026」参加作品
900字足らずのお話です。
真っ暗の黒と雪明かりの白の間にポツンとあるお家。優しそうな男女と幼い姉妹が、オレンジ色の暖炉の前で箱を囲んで賑やかに笑っている。
「パパは雪の結晶を入れよう」
「ママはパパから貰った指輪を入れるわ」
「わたしはこの宝石みたいなキャンディ」
「あたちはリボンにする!」
南の島の浜辺。濃紺の空に煌めく星を眺めながら、愛を囁く男女が手に小さな箱を持っている。
「私はあなたに初めて貰った手紙を入れるわ」
「僕は君に初めて貰ったキスを」
男性は胸に箱を抱いて、愛おしそうに彼女にキスをした。
漆黒の空に星も見えないほどネオンが喧しいビル街。誰もいなくなった静かなオフィスで、一人残った壮年の男性が小さな箱を手にしている。男性は疲れた顔に寂し気な笑顔を浮かべて、もう十年以上顔を見ていない妻と子どもの写真を入れた。
最新の設備が整う深夜の病院の青白い特別室。酸素マスクをした老人は、秘書に準備させた莫大な数字が書かれた小切手を不自由になった手で何とか箱に納めて目を閉じた。
見届けた秘書の男性は、三十年前、老人に初めて貰った万年筆を箱に入れた。
狼は狩ったばかりの獲物を丁寧に土に埋め、リスはいつもより少し大きなマテバシイを地面に埋めた。
星の最期の時。
人々は今まで命を紡いでくれた感謝を込めて、大切なものを最初で最後のギフトとして捧げた。
心穏やかに何の憂いもなく、むしろ笑顔さえ浮かべて迎えたその時。
光は儚く散り音は消え、時間が閉じてなくなった。
そして…...
空があった場所にきらきらと、無数の小さな光が生まれて瞬き出す。ひとつ、またひとつ。
箱に詰められた贈り物は空に昇り、星のように光り、呼吸をするかのように明度を変えて輝き続けた。
そして雪のように、辺り一面に舞い降りた。
まるで、新しい命が誕生したように。
いつまでも、いつまでも。
きらきらと、きらきらと。




