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片割れを置いて

作者: 坂井ユキ

『片割れの嫁入り』の別視点でのお話です。

先に『片割れの嫁入り』を読んで頂く方がたのしめると思います。


https://ncode.syosetu.com/n2627ki/ #narou #narouN2627KI

「姉様、もう行くの?」


貴女は今日もその瞳に深い悲しみを宿している。


「ええ」


いくら悪辣な笑みを浮かべていようとも、その瞳が貴女の感情を全て物語っている。


「そう」


「久しぶりね、アザリアが声を掛けてくれたのは」


貴女から掛けられる言葉なら、それがどんな物であろうとも私は嬉しかった。

言葉にはせずとも、そこにある貴女の本心がいつでも感じられたから。


「まぁ、もう二度と会うことはないだろうし?

最後くらいはね」


だから、そんなに申し訳なさそうな顔をしなくていい。

私にはきちんとわかっているから。


「そうね……」


「なんたってあの悪魔大公ですものね。

果たして何年生きていられるかしら?」


自分自身を傷付けるだけの刃を言の葉に乗せる貴女の姿を見ているのは本当に辛かったから。


「噂だけで人のことをそんな風にいうものではないわ」


だから、貴女が繋いでくれたこの縁は決して無駄にはしないから。


「ふふっ。カラスみたいな姉様には悪魔みたいな旦那様がお似合いよ。良かったわね」


「アザリアのプラチナブロンドは今日も美しいわね。

私の黒髪とは大違いだわ」


その美しい髪が眩しい太陽の光を浴びて堂々と輝く日がきっと来るから。


「当然よ。私は全ての人に愛されているのだから」


「うん、そうね……」


本当の貴女はまさしく全ての人から愛されるべき存在だ。

今はまだ知られていなくても、世の中全ての人に貴女の本当の姿を知ってもらえる日は必ずやって来るから。

私がそうしてみせるから。


「それじゃあ、私はそろそろ……」


だから、もう少しだけ待っていてね。


「シエンナ!いつまでそんなところにいるの!?

お前はアザリアに近付くんじゃないって何度言えばわかるの!!」


本当の悪魔は、大公閣下ではなくこの人達だ。

私の大切な片割れを、愛しているように見せ掛けて、誰よりも傷付け続けて来た本当の悪魔。


「申し訳ありません、お母様……」


しかも、それに気が付いてすらいないのだから許せるはずがない。


「わかったのなら、さっさと行きなさい!

そして、二度と戻って来るんじゃないわよ!」


「じゃあ、アザリア。元気でね」


「ええ、姉様も」


貴女が一瞬だけ見せてくれたほっとした様な表情。

でも、それはすぐに消えて、表情を取り繕った貴女の瞳に浮かんでいるのは何もかも諦めているかのような色。


「アザリア、あんな子に返事なんてする必要ないのよ?」


「お母様、もう会うこともないんだし最後くらい良いじゃありませんか」


「アザリアは本当に優しい子ねぇ。あんな子にまで気を遣うなんて」



アザリアが優しい子だということにだけは心から同意出来る。




不甲斐ない姉である私を、自分が悪名を被ることで守り続けて来てくれた大切な存在。

それこそ、私自身よりもずっとずっと大切な愛する妹。



あと少しだけでいいから。

ここで待っていてね。



何をしてでも、誰を利用してでも。

必ず貴女のこともここから助け出すから。


アザリアを不幸になんて絶対にさせない。

だって、私達は二人で一人。


必ず、二人一緒に幸せになるんだ。

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