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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

惨禍の魔女

『惨禍の魔女』と呼ばれた少女の綴る物語

作者: 汐乃 渚

好きなものを詰め込んでみました。

お楽しみいただけましたら嬉しいです!



あるところに、一人の少女がおりました。


少女は、大好きなお兄様と一緒に暮らしていました。

本当の兄妹ではありませんが、身寄りのない少女を引き取ってくれた、優しいお兄様です。



少女とお兄様が暮らすのは、見渡す限りの海に囲まれた孤島。

丘に建つ大きな屋敷と、それを囲む砂浜があるばかり。


けれど、少女は幸せでした。


綺麗な服を着て、美味しいものを食べて、おもちゃで遊ぶ。

カモメを追いかけて、浜辺でピクニックをすることもあります。

そんな満たされた生活に、不満などありません。


ただ、お兄様は仕事で島を離れることがあるので、その時だけは少女も寂しいと思っていました。

家のことをしてくれる人もいましたが、みんな耳が聞こえず、話し相手にはなってくれません。



少女の気持ちは、お兄様に伝わったようです。


ある日、島に戻ったお兄様は、少女に一人の少年を紹介しました。


「彼も、今日から一緒に暮らすので、仲良くしてあげるんだよ」


少女は飛び跳ねて喜びました。

これで、お兄様がいない日も寂しくありません。



少年は、家の仕事を手伝ってくれました。

重たいものを運んだり、少女の話し相手をしたり、そんな仕事です。


少女と少年は、少しずつ仲良くなっていきました。

少女がお兄様と同じくらい少年を大好きになるのに、そう時間はかかりませんでした。


お兄様は次第に、仕事で島を離れることが増えていきます。

しかし屋敷には少年がいてくれたので、少女は寂しくありませんでした。



屋敷は、次第に賑やかになっていきます。


少年の時と同じように、お兄様が時折、子供たちを連れて帰ってくれるからです。


賑やかで楽しい日々が続きました。



***



変わらぬ日々が過ぎるうち、少年は青年へ成長しました。


少女が見上げるほどに大きくなり、お兄様のように、少女の頭を撫でるようになりました。


けれど、少女は少女のまま。

食べるものが違うせいなのか、運動が少ないせいなのか、少女は不思議に思います。


お兄様は言いました。


「成長の早さは人によって違うから、仕方のないことなんだよ」


人によって違うのなら、少女にはどうしようもありません。



青年は成長すると、少女と過ごす時間が減ってしまいました。

青年は青年で、仕事が忙しくなったのです。


同じ屋敷で暮らしながら、少女と青年は別のところで過ごします。

すれ違えば嬉しそうに笑いかけてくれますが、これまでずっと一緒だったことを考えると、物足りない気持ちが膨らむばかり。


少女には他に話し相手がいましたが、それでも寂しく思いました。

それに、他の子供たちもどんどんと成長して、少女から離れていきました。



そして青年は、お兄様について仕事で島を離れることも増えていきます。


お兄様の仕事のお手伝いなら、少女は寂しくても文句は言えません。

青年が忙しいお兄様の助けになっているのだと思えば、誇らしくもありました。



余程仕事が忙しいのか、やがて青年は島に戻ってこなくなりました。

同じように島を出た、他の子供たちも戻りません。


お兄様も、少し疲れている様子です。


「あの子たちは、とてもよく頑張っているよ」


それでも少女は寂しくて、青年はいつ戻るのか尋ねますが、お兄様は困った顔をしています。

お兄様を困らせてしまったので、少女は悲しくなりました。



悲しいことは続きます。


お兄様もとても忙しくなってしまい、島に戻ってこなくなりました。

代わりの人は来てくれますが、青年たちだけでなくお兄様にまで会えなくなると、少女の寂しさは一層大きくなります。


成長した他の子供たちも、どんどん島を離れました。



やがて、島には誰も戻ってこなくなりました。


綺麗な服も、美味しい食べ物も、おもちゃもあります。

少女より幼い子供たちもいたので、賑やかでもありました。


けれど、少女の寂しさと悲しみは消えてくれません。


そんな日々は、少女が思っていたよりも長く続きました。



***



ある日、島に迎えがやってきました。


お兄様や青年、島を離れた子供たちが戻ったのではなく、お客様でもありませんでした。

見知らぬ大人たちがたくさんやってきて、島にいた少女や子供たちを、船で別の場所へ連れて行きます。



冷たい部屋に入れられた少女に、見知らぬおじさんが言いました。


「君はあの島で、何をしていたんだね?」


少女は、屋敷での生活について話します。

綺麗な服を着て、美味しいものを食べて、おもちゃで遊ぶ、そんな生活のことを。



朝ごはんの前に、お兄様が少しだけ少女の血を抜きます。

ちょっぴりチクッとするけれど、終わるとお兄様は少女を優しく褒めて、甘いパンケーキやフレンチトーストを食べさせてくれます。



ご飯を食べたら、おもちゃで遊びます。


遊ぶのは、お兄様が少女のために、特別に用意してくれたおもちゃ部屋。


お兄様は島に戻るたびに、少女に新しいおもちゃを与えてくれます。

だからおもちゃ部屋は、いつもおもちゃに溢れていました。



おもちゃは、小さな赤い石で動きます。


少女の遊びは、ただおもちゃを動かすだけではありません。

動き方をよく見て、壊して、直します。


楽しい遊びは、まだまだたくさんあります。

もっとおもちゃを小さくしてみたり、一度にたくさんのおもちゃを動くようにしてみたり、動かすための赤い石を減らしてみたり。



満足いくまで遊んだら、おもちゃをお兄様に返します。

少女の遊んだおもちゃは、お兄様のお仕事に使うのだそうです。



少女がおもちゃで遊んでお部屋や服を汚しても、お兄様は優しく笑います。


たまに海に向かって、おもちゃで一緒に遊ぶこともあります。

大きなしぶきを上げた方の勝ちです。



一つのおもちゃを遊び終わっても、まだまだおもちゃはたくさんあります。


投げて遊ぶおもちゃ、スイッチを押せば玉の出るおもちゃ、振り回して遊ぶおもちゃ、身に付けて遊ぶおもちゃ。

中には、乗って遊べるおもちゃもありました。

似たようなおもちゃでも、長いものに短いもの、大きいもの小さいものと、いろんな形があります。

大きすぎるおもちゃは、少女が遊べるように小さくしてありました。



少女は、新しいおもちゃを考えることも大好きです。


少女が一番気に入っていたのは、遠く離れても遊ぶことのできるおもちゃです。

このおもちゃが水の中で動いたり、空を飛べば楽しいのにと思っていました。



見知らぬおじさんは言いました。


「そのおもちゃが、危険なものだということは知っていたのかね?」


少女は首を横に振ります。


おもちゃは危なくありません。

使い方を間違えなければ。


少女や子供たちにもできることです。

つまり、何も危なくなどないのです。


見知らぬおじさんは、大きな大きなため息を吐きました。



今度は少女が尋ねる番です。


「お兄様はどこですか?」


見知らぬおじさんの顔が歪みました。



お兄様は、牢屋に入れられてしまったそうです。

もうすぐ『処刑』が行われると、見知らぬおじさんは言いました。


お兄様はたくさん悪いことをして、たくさんの人を怒らせてしまったのだと言われ、少女は悲しくなりました。


たくさんの人たちを幸せにするのだと、お兄様は言っていたのに。

けれど見知らぬおじさんは、全ての原因は、お兄様がおもちゃをたくさんの人たちに使わせようとしたせいだと言いました。


お兄様の仕事を悪く言われたこと、少女とお兄様のおもちゃがたくさんの人に嫌われていることに、少女の胸は張り裂けてしまいそうです。



少女はもう一度尋ねます。


「青年はどこですか?」


見知らぬおじさんの顔が、真っ赤に歪みました。



青年はお兄様に頼まれて、おもちゃを使って人を傷つけたそうです。

そのせいで、たくさんの人たちを巻き込んだ争いになりました。


そして青年は、成長した他の子供たちと一緒に、更にたくさんのおもちゃを使って、更にたくさんの人を傷つけました。


争いが終わりそうになった時には、お兄様の制止も聞かず、争いを続けました。

他の子供たちも、青年についていったそうです。


しかしそれでは、争いが終わりません。

争い合っていた人たちは手を取り合って、たくさん傷つきながら青年たちを止めました。


少女は、そうして青年と子供たちが死んでしまったことを知らされたのでした。


もう青年たちがこの世にいないと知り、少女は嘆き悲しみ、とうとう泣き出してしまいました。



見知らぬおじさんは、泣きじゃくる少女に言いました。


「君のせいで、大勢が傷ついた。君も彼らと同じように、罰を受けなくてはならない」



***



少女は知りませんでしたが、少女の血は特別でした。


お兄様が少女に与えた、おもちゃを動かす小さな赤い石は、少女の血を固めたものだったのです。

その効果は、これまでおもちゃを動かしていた特殊な鉱石とは、比べ物にならないほどでした。


そんな特別な少女の血は、おもちゃを特別なものにしました。

そして少女がおもちゃで遊ぶことで、一層おもちゃが特別なものになりました。



少女の特別な血は、おもちゃを動かすこと以外にも使われました。


島にやってきた少年や子供たちは、少女の血を口にすることで、普通の人よりも早く、強く成長しました。

成長した青年と子供たちは、そのおかげで特別なおもちゃを、他の誰よりも使いこなすことができました。



そして特別な少女の血を使った、特別なおもちゃと特別な青年たちは、たくさんの人たちを傷つけました。


つまり、たくさんの人たちを傷つけたのは、少女の血と、少女のおもちゃ遊びによるものでした。

つまり、全ては、少女によって引き起こされたものだったのです。



少女は災いをもたらした『惨禍の魔女』として、『処刑』されることになりました。


少女より先に『処刑』されたお兄様は、たくさんの人たちの前で首を落とされました。



しかし、少女の血は特別なので、血を流させるわけにはいきません。


少女の特別な血を口にした青年たちは、息絶えるときに周りの人たちを巻き込んで、最後までたくさんの人たちを傷つけたといいます。


そうなると、少女の身体を残すわけにもいきません。



悩んだ人々は、とある装置を作り上げました。


それは少女を、ここではない『別の次元』へ送り込むというものです。



向こう側がどうなっているのか、誰にもわかりません。


しかし少女の特別な血を恐れた人々にとって、少女がここではないどこかに行ってくれれば、それで満足でした。

争いの爪あとは深く、人々は少女の『処刑』を急ぎます。



特別な血を持つ少女が、たくさんの人たちを傷つけてしまう前に。



お兄様に代わり、少女の特別な血を求める人もいました。


けれど、誰も少女の『処刑』を止めることはできませんでした。

少女自身も、それを望みませんでした。



いよいよ、少女の『処刑』の時間がやってきました。



***



――これが、今この瞬間までの私の物語です。



私は、今から『処刑』されます。


そのため、この物語を最後まで書くことはできません。


どうかこれを読んだら、この続きを書き足して、物語を完成させてください。




――資料No.888 少女の手記より



***



グリア歴53年――親善のためディエラ国へ赴いていた、カタリア国ジェレミア第三王子暗殺。


背の高い青年の目撃情報があったものの、捜査は難航し、犯人を捕らえることは敵わず。

王子暗殺により、人種、宗教観などの相違から既に険悪だった両国の関係は、修復不可能なほどに悪化した。



グリア歴54年――カタリア国よりディエラ国へ宣戦布告。

ルウェス地帯にて戦端が開かれた。



この一連の流れには、ランド・ダンジェロが深く関係していたと考えられる。


反ディエラとして広く知られるダンジェロは、若くして父親から引き継いだ商会を巨大なものへと築き上げた実業家である。

彼には『死の商人』としての側面もあり、独自の兵器開発も行っていた。


近年、彼はどこからともなく引き取った一人の少女、ミラを養い子とし、所有する別邸にて共同生活を開始。

これにより彼は表舞台から退き、ミラを俗世から切り離した。


隠遁したダンジェロは、兵器開発へ専念した。


数年後、久々に表舞台へと戻った彼は、従来の兵器に使われる『魔鉱石』に代わるものとして『魔障石』を発表し、多大なる称賛と関心を集めることに成功する。


『魔障石』は動力源として優れているだけでなく、兵器本来の能力まで飛躍的に向上させた。

それにより、従来の魔鉱石を使用する兵器は『魔鉱兵器』、魔障石を使用する兵器は『魔障兵器』と区別されることとなる。


ダンジェロはその後新たな兵器を続々と公開し、カタリア軍は配備を進めた。


『魔障兵器』の流通を一手に担ったダンジェロは、元より有り余る財を更に積み上げ、議会への強大な発言力を有するまでとなる。

国内の好戦ムードに押されるようにしての宣戦布告によって、あとは憎きディエラを討つばかり。


そのような情勢を作り上げるため、和平派の代表だった王子暗殺にダンジェロが背後で暗躍していたとしても、不思議なことではない。

実際ダンジェロは停戦後、「全ての責は己にある」と、王子暗殺の指示や反ディエラ感情を煽るための工作支援などについて認めた。



戦線で活躍したのは、新型兵器ばかりではない。


ダンジェロは集めた浮浪児へ魔障石を与え、強化兵士を作り上げた。

そんな彼らは少数精鋭の部隊として戦場へ送られ、目覚ましい戦果を挙げることに成功。

特に一人目の強化兵士であるアルドの活躍は群を抜き、ディエラ軍のみならずカタリア軍内部からも恐れられた。



開戦当初、『魔障兵器』を導入したカタリア軍が優勢かと思われたが、ディエラ軍が同盟国の兵力を大量動員し、独自兵器を展開したことで、戦況は膠着状態へ陥り、血で血を洗う戦闘が続いた。



グリア歴57年――ディエラ国が停戦を宣言。


カタリア国も合意の意思を表明したものの、アルドを隊長とする強化兵士で構成された部隊が離反、独断にて戦闘行為を続行。

ダンジェロの停止命令も聞かず、大量の『魔障兵器』を持ち出し、遊撃を繰り返したことにより、被害は拡大。


これにより急遽カタリア・ディエラ連合軍が結成され、アルド隊の討伐が行われた。

数での圧倒を試みたが、彼らの戦意は凄まじく、死兵化したことによって一層手が付けられない事態へ悪化。


ようやく一人排除することに成功すると、彼らは死の間際に爆散し、高濃度魔力の瘴気による毒の霧を撒き散らすことが判明。

ダンジェロも関知外のことであり、これは彼らが自身の中にある『魔障石』の能力を使用したものと考えられる。

追い詰められれば追い詰められるほど、彼らは不思議な能力を発揮するようになっていった。


逆賊アルドを討ち取り、全てが終わるころには、焦土となった大地が広がり、両軍に甚大な被害をもたらしていた。



グリア歴58年――カタリア国とディエラ国は、ついに停戦協定を締結。



強化兵士たちの離反により責を問われることとなったダンジェロだが、彼らの離反の原因に関して『自分と同じくらい、反ディエラ感情の強い子供たちを選んだ』『そして、それを抑える術を教えなかった』と述べた。

平時は紳士的な振る舞いで覆い隠していたが、ダンジェロ自身が計り知れぬほどの憎悪の持ち主であったことはよく知られていた。

ダンジェロが商人として『魔障兵器』による利益のために行動したと考える者もいるが、実際に彼を目にした者の多くはその考えを否定している。


尋問の際に開戦のきっかけを作ったことまで認めたこともあるが、元よりダンジェロへ全ての責任を負わせるつもりでいた首脳陣は、民衆への生贄として彼と彼の養い子の『処刑』を決定した。



『魔障石』の供給源であるミラは、『魔障兵器』開発の要でもあった。


それらを理由に助命の嘆願も行われたが、そのようなことを口にした者は一様に処罰の対象となった。

アルドをはじめとした強化兵士たちの恐ろしさが人々の脳裏に焼き付いていたことで、『魔障兵器』は忌避され、『魔障石』共々既に禁忌となっていた。


ミラは、『魔障石』そのものである。

更に数多の『魔障兵器』を開発した実績から、その知能は計り知れない。


ミラは、人の形をした災厄に他ならなかった。


そうしたことから、彼女を『惨禍の魔女』と呼ぶ者まで現れた。

それは現在でも変わらない。



ミラの『処刑』方法の策定は、難航を極めた。


斬首、絞首、銃殺、薬殺、火あぶり――従来の方法で彼女を『処刑』すれば、何が起こるかわからない。


強化兵士たちの中には、殺してもしばらく死ななかった者すらいたのだ。

死の間際、ミラが全く別の存在へ変貌する可能性は十分考えられた。


ショックを受けた際に多少取り乱すことはあったが、彼女が大人しく捕らわれていたことは幸運以外の何物でもない。

深い憎悪を抱いた人間たちに長年囲まれていたにもかかわらず、彼らがその感情を彼女に悟らせなかったことが、最悪の事態を免れた大きな要因と言えるのかもしれない。



迅速さが求められる中、研究者たちは最終的に、ミラを『処刑』するための装置を作り出すことに成功する。


それが『次元転送装置』である。


たった一人の少女を『処刑』するため、禁忌の力を使い作り上げた、英知の結晶。

装置は『魔障石』に反応し、ここではないどこか別の次元へと対象を送り出す。


研究目的ではなかったためそれ以上の詳細は不明のまま、完成後間もなく『処刑』は実行へ移される。



グリア歴59年――『惨禍の魔女』、『処刑』。


『処刑』はダンジェロの時と同じく、中央広場にて行われた。

大勢の人間が集まったが、皆一様に口を噤み、装置の立てる低い振動音が響き渡るほど、辺りは不気味な静けさで満ちていた。


ディエラ国の者も見守る中、ミラは足を止めることなく、黒くうねる境界を映す装置の前に立った。


そして、あっけないほど簡単に、ミラは装置の先へ消えた。


後に残されたのは、動きを止めた装置のみ。

『魔障石』の痕跡ごと、ミラはこの世から消え去った。



彼女がどこへ送られたのか。


それは誰にも、知る由はない。




――とある書記官のメモ



***



少女は『処刑』のため、装置の前へ案内されました。


たくさんの人がジッとこちらを見ていましたが、罵声をぶつけられることはなく、少女は少し安心しました。



『処刑』は何も難しいことはなく、ただ装置に入れば良いそうです。


装置の向こう側に、黒くゆっくりと動く渦が見えます。

けれど、少女は怖くありませんでした。


黒い渦を見ていると、懐かしさと安心感が込み上げてくるのです。



少女はこの世界に、未練などありませんでした。


ここには綺麗な服も、美味しい食べ物も、遊ぶためのおもちゃもありません。

大好きなお兄様も、大好きな青年も、大好きな子供たちもいません。



黒い境界がゆっくりと渦を巻き、少女を招きます。



少女は笑顔を浮かべました。

この先に、みんなが待っているから。


『ここではないどこか』は、少女の願うところです。

少女にはそれがわかりました。



悲しいことなど忘れて、また幸せに暮らしましょう。


大好きな人たちに再び会うため、少女は黒い渦へ足を踏み出しました。




――そしてまた、物語が始まるのです。




というわけで、能力化け物な少女が繰り返す物語でした!

拙いですが、好きなものを詰め込みました。


ここまでお読みいただきありがとうございました!

こーゆーのも嫌いじゃない……という方、評価ボタンやいいねボタンもポチポチっとしていただけますと嬉しいです。


本編はループが続く雰囲気ですが、(多分)ハッピーエンドなIFルート『いつか少女が綴るかもしれない物語』もありますので、そちらもよろしければ是非♪

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