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第0064撃「変身!!」の巻


平成3年1991年、11月、中学3年の2学期。


その頃、甲村(仮名)がうまい具合に緩衝材となってくれたおかげで、

絶縁状態がつづいていた多坂(仮名)とも、

どうにか関係が回復しつつありました。


土曜の放課後。

小生たち三人は写真部の部室を閉め、

裏庭のようなスペースで、

何をするでもなく、だらだらと時間を流していました。


「これ見ろよ」

甲村が、学ランのポケットから取り出したのは、

ガスコンロ料理で引火に使う『チャッカマン』でした。


「そんなもん持ち歩いてたんか!」

小生と多坂が唖然としていると、

「ええから、なんかに点けてみろや」

多坂がやけに乗り気で急かします。


そこで甲村は、足元に転がっていた

灰色のブロックのレンガに火を点けようとしました。

けれどもレンガは、セメントの顔色ひとつ変えず、

ただ黒ずむだけで、おもしろみも何もありませんでした。


小生たちがいたのは、校舎敷地の南西の角です。

そこには一本の『ヤシの木』が立っていました。

もっとも、それが実は『ソテツ』という別物であったことは、

後年知ることになるのですが。


「おい、そのヤシの木に点けてみろよ」

と、多坂が悪魔のささやきを発しました。

「おう」

甲村は歩み寄り、チャッカマンを幹に当て、

「カチッ」と火花を走らせました。


しかし何も起きません。


そこで彼は、もう一度スイッチを鳴らしました。

すると、瞬間、"ボウッ"と焔が立ち上がり、

ものの数秒で火は忽ち膨れ上がり、

木の上へ、上へ、と燃えひろがりだしたのでした。


「ヤバいッて!」

多坂が慌てふためいて叫びました。

焔はめらめらと嫌な音を立てています。

ヤシの木の向こうには塀を隔てて民家が並び、

もしその二階の窓が、今、シャッと開いたなら、

住民はどんな表情を浮かべるだろう。

まさか、小生たちが「やあ!」と声をかけたら、

住民も「やあ」と返してくれる――

はずもありません。


いよいよ万事休すか!

小生たちは、

急いで駆け足で逃げるか、

急いで職員室の教師に助けを求めに猛ダッシュするか、

二者択一に迫られました。


そのとき、甲村が選んだのは、思いもよらぬ第三の選択肢でした。


彼は学ランの上着をバッと脱ぎ捨て、

ばっさ、ばっさと焔を叩き潰しにかかったのです。

ところが焔は、おとなしく鎮まるどころか、

むしろ酸素を与えられたせいか、

二回りほど巨大化してしまいました。


とはいえ、甲村の姿は、

まるで江戸時代の「め組」の火消しそのもの。

その『必死さ』と『懸命さ』は、

ただただ見事と言うほかありませんでした。


すると、その瞬間、奇跡が起きました。

焔がみるみる縮みはじめ、

さっきまでの惨状が幻だったかのように、

自然に鎮火したのです。


たぶん、見かねた守護霊さんあたりが、

とうとう手を貸してくれたのでしょう。


小生たちは全身の力が抜けるほど安堵しました。

「もう、帰ろう」

火災事件は、

生徒にも教師にも近隣住人にも、

完全に気づかれることなく終息しました。

勇者・甲村の焼け焦げた学ランは、

自業自得ではあれど、

モンスターとの死闘を物語る勲章でもありました。


そして翌週の月曜。

「よう!」と現れた男がいました。


リーゼント。

長ラン。

一瞬、小生には誰だかわかりません。


「おま! まさか、甲村!?」


「へへ! どうや、この上着。

センイシティー(新大阪)で買ってん!」

彼は学ランをアップデートして登場したのです。


しかし、変身したのは上着だけではありませんでした。

それまで甲村は、

力のある生徒たちからちょっかいを受ける側でした。

ところが、事件後の彼は違いました。

彼らを一人ひとり呼び出しては、次々にタイマンを挑み、

ついには全員をシバき倒し、全勝したのです。


火災事件を境に、

胸の奥でくすぶっていた何かが吹き切れたのでしょう。

甲村は、確かに変身を遂げたのでした。


ZOO「Choo Choo TRAIN」(チュー チュー トレイン)(1991年)

YouTubeで視聴する https://youtu.be/RNFkBEg3jTo?si=okroIrgrUhiivNd_


続く。果てしなく続く……。



いつもお読みくださり、

無限の無限のありがとうございまする☆

ブックマーク(フォロー)していただけますと嬉しいです。

では、ご氣元よう‼️

( ⸝⸝•ᴗ•⸝⸝ )੭⁾⁾

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