第0062撃「メタ氏、強制拉致さるる!!」の巻
平成3年1991年、10月、中学3年の2学期。
小生が文化祭の劇で主役を演じ、
校内が盛り上がってから(勘違いでなければ!)、
数日が経ちました。
小生はこの勢いのまま、
中学を卒業したらそのまま吉本新喜劇にでも入ってやろうかと、
本気で思ったのです。
桑原和男、チャーリー浜、池乃めだか、辻本茂雄、内場勝則、未知やすえ……
そのあたりの名だたる芸人たちに混じって、
大阪を、いや日本列島を笑いの渦に巻きこむ――
そんな未来を夢想しておりました。
⸻
ところが。
下校路を歩いていると、
背後から小生に聞こえるように、
妙な声が耳に入りました。
「アイツをサンドバッグにしたるねん」
声の主は財原(仮名)でありました。
どうやら、小生の演じた暴れ爺が皆に好評だったことで、
「調子に乗ってる」と、思われてしまったようです。
小生は不安に駆られ、一目散に逃げました。
が、逃げ切れたのも束の間。
数日後の放課後、
背後から急に肩をつかまれ、
「おまえ、ちょっとこっち来いや!」と声が飛びました。
財原でした。
小生は逃げ出すことも出来ず、
近くの十一階建ての市営住宅の四階へ、
強制的に連行されてしまいました。
そこは海野(仮名)という同級生の家でした。
「部屋、借りるで」
財原は台所の海野にそう言い残すと、
小生を部屋に押しこみ、襖をぴしゃりと閉めました。
次の瞬間、
「オラ! オラ! オラ! このクソが! おまえキモいんじゃ!」
殴る、蹴るの暴行が延々と続きました。
ここでも小生は反撃が出来ませんでした。
たとえ一矢報いようとしたとして、
財原の闘争心に火がつき、さらに激しい報復を受けるだろう――
そんな現実的な恐怖が、手足をすくませていたのかもしれません。
しかし、あとになってから思うのです。
もしあのとき、己が何かを諦めきれずに開き直っていたならば、
部屋の本棚や家具をすべてなぎ倒し、
そこらにあるものを片っ端からめちゃくちゃに叩きつけて壊し、
ベランダへ続くガラス戸をぶち破ってでも、
事態を大きくしてやれば、と。
そうすれば、部屋を貸した海野も、
「おれの部屋をめちゃくちゃにせんといてくれ! とんだとばっちりや!」と、
財原に部屋を貸したことを後悔するだろう。
そして、脱出した小生は近くの公衆電話から110番へ緊急通報し、
警官に保護されてパトカーで警察署へいき、
財原の罪状を洗いざらい話し、
彼を少年院送りにして、
将来の進路を潰し、社会から抹殺してやれれば、と。
⸻
気づけば、自分の頭髪を抜く強迫性障害が止まらなくなっていました。
ある日、愛犬ぺるの頬に、
中途半端に伸びたヒゲを見つけたときのことです。
それを抜いてみたい衝動に駆られました。
母の鏡台からピンセットを借りて、
そっと一本、つまんで強く引っぱってみると――
「ビッ」と、独特の手応え。
ぺるは妙な感触にびっくりして驚いて、
ピンセットの先のヒゲをべろべろと舐めました。
その毛根の太さが、妙に印象的で、
どこか裁縫の縫い針の糸を通す穴のあるほうを連想させました。
ぺるの顔のヒゲを、残らず抜いてしまいました。
⸻
その一方で、唾を吐くチック症状も酷くなっていて、
自室の灰色の絨毯に吐き落とした唾の
小さな丸いシミが無数に点々と残り、
祖母は「なおちゃんの部屋に入ると足がジュクジュクするよ」
そう言って苦い顔をしました。
唾の雨が大空襲の焼夷弾のように降り注ぎ、
かつて薄いグレーだった絨毯は、
いまや黒々とした戦後の瓦礫のような色になっていました。
⸻
夜。
22時前だったか、23時前だったか。
五分ほどの番組でした。
テレビでは、わたせせいぞうの『ハートカクテル』が流れておりました。
あの洒脱な短編アニメと、
やわらかなBGMに包まれていると、
一日の不安や苛立ちが、
ふっと遠のくようでした。
そしてテレビから、
Shaniceの「I Love Your Smile」が流れはじめました。
その明るいメロディーが、
浅く速かった小生の呼吸を、
少しだけ穏やかにしてくれました。
Shanice
「アイ・ラヴ・ユア・スマイル(I Love Your Smile)」(1991年)
YouTubeで視聴する https://youtu.be/ysYyCElzB0A?si=s6pv1UhmzkfPbC--
続く。果てしなく続く……。
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