第0005撃「Hey! Shy! 週刊少年ジャンプ」の巻
平成元年1989年、4月、中学1年の1学期。
おそらく中学校へ上がるまでの小生は、
『週刊少年ジャンプ』なるコミック誌を、
オトナの鑑賞に堪える高尚な読み物であり、
子どもが手を出してはならぬ御法度のたぐいと思っておりました。
実際、母もそう言っておりましたし、
小生もそれを疑うことなく受け入れておったわけです。
ところが、同じマンションフォーエバーに住んでいた、
王門院小学校の先輩・湖東くん(仮名)から、
「もう読んだからあげるわ」とジャンプの一冊を譲られたことがありました。
そこで初めて目にした「ドラゴンボール」が、実に面白い。
それまで親しんでいた『コロコロコミック』とは、
ひと味もふた味も違う、未知の世界がそこに広がっていたのです。
さて、話はやや遡りまして、
小生が幼少のみぎりから月に一度の散髪は、
フォーエバー地下のショッピングフロアの端っこ、
「イブ」にある床屋に通っておりました。
中学に上がったばかりのある日。
その床屋の若き店長が、なにやら卑猥な方向に饒舌でして、
「ぼく? 女の子のおっぱい、見たことあるか?」などと仰る。
小生、「ないです」と答えると、
「おっぱい、見てみたくないか?」と、さらに踏み込んでくる。
「ないですよ」
気恥ずかしさと警戒心から、そう応じたところ、
「そうかなあ? いま他に客いないし、そこ座ってこれ読んでみーよ」
と、待合席の棚にあったジャンプの一冊を手渡されたのです。
めくってみると、そこには女性の胸があらわな場面。
バスタード(BASTARD!!)という、
やけに尖ったタイトルの漫画だった気がします。
調子に乗ってページを繰っているうちに、
床屋にはふたたび客が入り始め、
店長がこう言いました。
「また来週おいで。そのジャンプ、プレゼントや。持って帰ってええで」
小生はまんまとその気になり、
ジャンプを手に、床屋を出てすぐの地上階段脇の斜面に寝転び、
続きを読んでおりました。
――アァ、小生は、よくない客である。
次の週、店長の言葉に甘え、
散髪もせぬままノコノコと店の扉を開けました。
「よう来た」
店長は4冊ほどのジャンプのバックナンバーを小生に渡し、
「今度、ちゃんと散髪に来たときには、またどっさり分けたるで」
と仰いました。
その足でまた階段脇の斜面へと戻り、
ジャンプを宙にかざしながら、巻頭ページを開いたそのとき――
「そこ、寝るとこちゃうぞ!」
巡回中の警備兵(推定年齢70代)が、容赦なく小生を叱責。
やむなくジャンプを抱え、トボトボと帰宅するはめになりました。
それからというもの、ジャンプの発売日が待ち遠しくなりまして、
フォーエバー内の書店へと足しげく通うようになります。
ある日、レジ台に平積みされたジャンプの「一番上」をそっと手に取り、
人気のない隅の棚の影へと移動。
隠れるように読みふけった末、指あとベタベタのジャンプを、
そっとレジの台へ返す。
愛想のいい書店店長に、バレているような、いないような。
小生、どうにも罪悪感を覚えながら、音を立てぬよう帰途についたのでした。
やがて小生、中学生としての矜持を胸に、
母に交渉(という名の懇願)をもちかけ、
ついにお小遣いの額面アップを勝ち取ります。
その日から、小生は堂々とレジに並び、
胸を張って小銭を支払い、
「上から二番目の、なるべく綺麗なやつ」を選び取って、
ジャンプを買う、立派な常連客となったのでありました。
続くよ。果てしなく続く……。
(まだまだ続くよーっ!お楽しみに〜!)
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では、ご氣元よう‼️
( ⸝⸝•ᴗ•⸝⸝ )੭⁾⁾