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第0005撃「Hey! Shy! 週刊少年ジャンプ」の巻

おそらく中学校へ上がるまでの小生は、

「週刊少年ジャンプ」というコミック誌を

オトナを満足させる読み物で、

子どもは決して手を出してはならぬ御法度であるシロモノ、

と思っていました。

実際、母からそう言われて育てられてきました。


小生と同じマンションフォーエバーに住む、

王門院小学校の先輩である湖東くん(仮名)が、

読み終えた一冊のジャンプをくれたことがありましたが、

「ドラゴンボール」はとても面白く、

それまで読んでいた「コロコロコミック」とは、

ひと味もふた味も違う世界が広がっていました。


幼いころから月に一度の散髪は、

フォーエバーの地下のショッピングフロアの

イブの端にある床屋へ通っていました。


中学校にあがりたてのことですが、

その床屋の若い店長は卑猥なことを話すのが好きらしく、

「ぼく?女の子のおっぱい見たことあるか?」

と訊いてきました。

「ないです」

「おっぱい見てみたくないか?」

「ないですよ」気恥ずかしくてそう答えると、

「そうかなあ?

いまお客さんいないから、

そこ座ってこれ読んでみーよ」

と待合席の棚に10冊ほど並んでいる、

週刊少年ジャンプの一冊を開いて見せてきました。

そのページには女性の胸が露わになっている描写がありました。

バスタード(BASTARD!!)というタイトルの漫画だった気がします。


しばらく読み進めていると、

床屋にお客さんが入り始めました。

「また来週おいで!

そのジャンプはプレゼントするから持って帰ってええで」

と店長は言いました。


小生はもらったジャンプを手に、

床屋を出たところの

地上へ上がる階段の横の斜面に寝そべって、

漫画の続きに目をやりました。


アァ、小生はよくない客だ。

次の週になると店長の呼びかけどおり、

散髪もしないのにノコノコと床屋へゆきドアを開けました。

「よう来た」

店長は4冊ほどのジャンプのバックナンバーを小生に手渡し、

「今度散髪に来たときには、

またどっさりとわけたるで」

と言いました。


小生はその足で早速、

階段の横の斜面に寝そべり、

ジャンプを宙に持って巻頭から読み始めました。

しばらくするとイブ内を巡回してる警備兵に見つかってしまいました。

「そこ寝るとこちゃうぞ!」

その高齢の警備兵に注意され、

やむなく小生はジャンプを傍に抱え自宅へ引き上げました。


そのうちジャンプの最新号が待ち遠しくなり、

発売日にイブ内の本屋へ行き、

レジの台に平積みになっている「一番上」のジャンプを手にとると、

本屋の人気のない隅へ場所を移し、

読み終えてベタベタと指あとのついたジャンプを、

にこにこ愛想のよい本屋の店長には、

申しわけのない罪悪感を感じながら、

そっとレジの台に返却して音を立てないようにして帰りました。


小生は中学校にあがったことで母に交渉して(懇願して)、

お小遣いの値段を上げてもらったので、

発売日に堂々と胸を張って本屋へ出向き、

小銭を払ってレジの台の「上から二番目の綺麗な」ジャンプを購入する、

よきお得意様となれたのでした。

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