第0040撃「快男児、DANクン!!」の巻
平成3年1991年、1月、中学2年の3学期。
小生がよくつるんでいた多坂(仮名)はよく、
家では聖書の研究で忙しいと言っていました。
「おれも日曜はキリスト教の教会に行ってるんやで」
小生がそう伝えると多坂は難しそうな顔をして、
「おれは家がエホバの証人てゆう宗教やってるんよ」と言いました。
「夢野も一度、会館に話を聴きに来うへんか?」
小生は多坂と放課後に会える楽しみから、
「おうー、行ってみるよ」と答えました。
会館で行われる集会に出席するには、
男性はみなスーツを着用して行かなくてはならないという。
小生はたまたま家に自分の背丈に合ったスーツが、
一着だけありました。
日曜日、小生は父のネクタイを一つ借り、
背広を羽織って出かける準備をしました。
着替えてるのを見た母が、
「あんた、そんなもん来てどこ行くんや?」と訊きました。
小生が正直にエホバの証人の集会へ行くんやと答えると、
「エホバ?そこはやめときなさい!そこは問題のあるところやから」
「ええねん、多坂と会うために覗くだけやから」
心配そうな顔をしている母を背に、
小生はマンションの一階で待っている多坂とおちあい、
自転車に乗って隣町の集会があるビルへ向かうことになりました。
「夢野!ちょ待って。空野(仮名)を誘って行くから」
空野の家は小生のマンション群から坂をくだって、
すぐ左側に曲がったところの一軒家がコの字型に8軒ほど並んでいるところで、
中華料理店「王来」の向かいで、
少女用の小物やグッズを売っている店に住んでいるのでした。
空野は目立つのをなるべく避ける内向的な性格でした。
小生たち3人は綺麗に行儀よく縦に並んで、
王国会館というのがあるビルへと自転車を走らせました。
到着するとものみの塔ともいわれる宗教の信者たちが、
ぞろぞろとお出迎えをしてくれました。
皆、互いのことを「◯◯兄弟〜」「◯◯姉妹〜」と声をかけています。
「目ざめよ!」というタイトルの冊子を、
バックナンバーを含め何冊かくれました。
まだアタマがからっぽの小生は、
集会で聴かされる内容を訳のわからぬまま、
スポンジが水を吸うように素直に吸収するのでした。
そして、来週の土曜に淀川河川敷でビーチバレーをするという。
おもしろそうだ!
当日、多坂や空野と淀川を北上したところの河川敷で、
エホバの証人の下は5、6歳、上は高校生くらいまでの兄弟姉妹たちが、
ビニール製の空気を吹きこんだビーチボールを追いかけて戯れました。
そこにはスターのように一際輝く背の高い中学生がいました。
皆から「だん君!」「だん君!」そう呼ばれているその中学生は、
小生たちと同じ芝嶋中学(仮名)の一学年上の3年生らしい。
夕方になる前にビーチバレーを終えると、
年長の大人の兄弟に誘われて、
皆でミスタードーナツ店へ行って、
それぞれ好きなドーナツをご馳走になったのでした。
翌週の月曜、多坂と校舎の廊下を歩いていると、
廊下の向こうからローラースケートででも滑っているかのように、
弾丸のような勢いで颯爽と突き進んでくる生徒がいます。
「だん君!」多坂が吼えました。
「オハヨー!!」と快男児は発して、
さらに加速してはるか後方へと見えなくなるのでした。
永井真理子 「ZUTTO」(1991年)
YouTubeで視聴する https://youtu.be/nU13_ZLO3TQ?si=_wz_Djn7k21Gz8Ol
懐かCMを観る1991年①1月
https://youtu.be/klBvgI_RUsE?si=weyA40QhKtXrFofL
続く。果てしなく続く……。
(まだまだ続くよーっ!お楽しみに〜!)




