第0003撃「メタ氏、甲村も写真部へ引きずりこむ!!」の巻
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平成元年1989年、4月、中学1年の1学期。
小生と元橋ゆきみちゃんは、
幼稚園と小学校こそ別でしたが、
中学校で再会することになった、2歳からの古い幼なじみです。
ただ、芝中に入学してからというもの、
一度も顔を合わせていませんでしたので、
ある日思い立って、
マンション・フォーエバーの10階へ、エレベーターで向かいました。
目的は、ご挨拶です、
――と言えば聞こえはいいですが、
要するに、様子見というやつです。
ピンポンとチャイムを鳴らしますと、
「はーい?」と、聞き覚えのある声が返ってきました。
そうです、ゆきみちゃんの声でした。
ドアが開いた瞬間、
彼女は目を丸くしていました。
小生の突然の訪問に、驚いたのでしょう。
「どうしてるかなと思って」と言いますと、
家の奥から、女の子たちのにぎやかな声が聞こえてきました。
あ、これは女子会の最中だな、と察しまして、
「またにするわ」と告げるやいなや、
小生はエレベーターを使わず、
階段を勢いよく駆け降りました。
とはいえ、久しぶりにゆきみちゃんの顔を見られて、
内心ではかなり興奮していたのを隠せませんでした。
さて、小生が芝嶋中学に入学する前後のことです。
マンションの地下ショッピングセンターにある本屋で
『中一時代』と『中一コース』という、
分厚くて頼もしげな雑誌を見つけました。
それらは中学生向けのバイブルとでも言うべき存在で、
小生は夢中になって読み漁りました。
誌面には、学校生活を楽しんでいる生徒たちの、
漫画や記事がたくさん載っていました。
その影響でしょうか、
小生の中で「中学生活に部活は欠かせないものだ」
という強い思いが芽生えました。
「クラブ活動」という言い方ではなく、
あくまで「部活」です。
帰宅部という発想は、そもそも存在していませんでした。
小生は芝嶋中学、通称・芝中の写真部に入部し、
まずひとつ、生きがいのようなものを手に入れました。
その頃、校舎の隣にある体育館の二階で、
一年生の集会がありました。
皆が三角座りをしている中、
小生の隣には、多坂(仮名)が座っていました。
しばらくすると多坂が、
誰かとふざけ始め、
その誰かが、私の背中をつついてくるではありませんか。
「なんやねん?」と振り返ると、
「おお!」と明るい挨拶が飛んできました。
小生も反射的に「おお!」と返すと、
彼は「俺、甲村や」と名乗ってきました。
「夢野やで」と返すと、
「おう!」と、彼は笑って答えました。
甲村健一(仮名)は、色黒で細身、
眼鏡をかけた印象的な男子生徒でした。
集会が終わったあと、小生たちは体育館の外に出て、
花壇のへりに腰掛けて、三人でおしゃべりをしました。
小生も多坂も甲村も、クラスは違いましたが、
住んでいるマンションが同じフォーエバーで、
小生は二号館、甲村と多坂は三号館の住人でした。
そういえば、小学六年の頃、
フォーエバーの周囲を自転車でぐるぐる走り回っていたとき、
小生の仲間に、学年の違う「甲村」という子がいたのを思い出しました。
どうやら、彼の弟だったようです。
甲村は卓球部に仮入部していたそうですが、
まだ一度も活動に参加していないとのことでした。
そこで、小生と多坂は顔を見合わせ、
「じゃあ、一緒に写真部に入ろうぜ!」と勧誘しました。
放課後になると、小生たちは彼を部室へと連れて行きました。
部長の渡瀬さんは、実に気さくな方で、
小生たち三人に、いつものようにカップヌードル(カレー味)をご馳走してくれました。
そして、甲村にこう言ったのです。
「入るも入らんも自由やけど、
楽しい毎日が待ってるかもしれんで~」
そう言って満面に笑うその顔は、
「ぜひ入れ」と書いてあるような笑顔でした。
甲村も、その自由な空気に魅かれたのでしょう、
ほどなくして入部届を提出しました。
小生たちは顧問の出口先生の威厳に
少々おののいていたのですが、
先生が甲村くんに「しっかり励めよ」と声をかけてくれたときは、
どこかほっとした気持ちになりました。
こうして、小生たち三人は、
写真部という、ちょっぴり暗くて静かな場所で、
各々の青春をスタートさせたのでした――。
続くよ。果てしなく続く……。
(まだまだ続くよーっ!お楽しみに〜!)
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